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<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「時代が変わった日」【短期集中連載/第6回】

2020/09/28 18:30

映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第6回
映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第6回


芸人、絵本作家ほか、ジャンルの垣根を飛び越えて活躍する西野亮廣。2016年に発表し48万部を超えるベストセラーとなっている絵本『えんとつ町のプペル』だが、実は映画化を前提として設計された一大プロジェクトだった。構想から約8年、今年12月の映画公開を目前に、制作の舞台裏と作品に込めた“想い”を語りつくします。第6回目は、絵本『えんとつ町のプペル』の制作を分業制に踏み切った際に、資金調達の手段に使った「クラウドファンディング」についてです。未知のサービスゆえに、声を大にしてその存在を発信しても届かなかったことへの憤りと痛みを打ち明けます。

【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。製作は佳境に入り、ルビッチ(画像)ほか主要キャラクターの声優陣もまもなく発表予定
【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。製作は佳境に入り、ルビッチ(画像)ほか主要キャラクターの声優陣もまもなく発表予定


誤解され続けているクラウドファンディング


絵本『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングは、「絵本の制作費を集める企画」と「発売記念イベント(個展)の開催費用を集める企画」で、二度実施しました。

分業制で作る絵本のビジュアルが明らかになったタイミングで仕掛けた二度目の挑戦は特に注目を集め、二度のクラウドファンディングの合計支援者数は9550人。合計支援額は5650万円。これまでほとんど相手にされてこなかった僕の絵本プロジェクトは、ここにきて、そろそろ事件が起きそうな気配を漂わせ始めました。

2016年、絵本『えんとつ町のプペル』の個展開催のために行ったクラウドファンディングの画像。6000を超える人たちがこのプロジェクトを支援した
2016年、絵本『えんとつ町のプペル』の個展開催のために行ったクラウドファンディングの画像。6000を超える人たちがこのプロジェクトを支援した


ところで、クラウドファンディングは今も尚、誤解されています。よくあるクラウドファンディング批判の決まり文句に、「自分の金でやれよ」がありますが、あれは間違いです。

一般的なクラウドファンディングは、「購入型」です。たしかに「支援」という言葉は使われているのですが、購入型のクラウドファンディングには「3000円ご支援いただければ、絵本『えんとつ町のプペル』にサインを入れてお送りします」といったリターン(返礼品)が必ず存在します。つまるところ、「予約販売」です。アーティストがチケットを先行販売して、前もっていただいたお金でライブを運営するように、“予約販売で発生したお金を元手に商品を制作&お届けしている”ので、「自分の金でやれよも何も……」というのがクラウドファンディングを知る人の本音です。ちなみに、「先にお金を振り込んでいただいてから商品を届けるのがアウト」というのであれば「メルカリ」もアウトです。

皮肉にも新型コロナウイルスが時代を前に進めてくれたおかげで、今はクラウドファンディングに対する理解が随分進みましたが、当時は、このような「知識不足からくる誹謗中傷」がたくさんありました。それによって中止に追い込まれた挑戦もたくさんありました。悔しかっただろうな。無知な善人の正義感はいつも始末が悪く、時代を遅らせる。

クラウドファンディングから学んだことは本当にたくさんあります。中でも、クラウドファンディングというものが「資金調達の手段」ではなくて、「共犯者作りの手段」ということを知れたことは、後の活動に大きな影響をもたらしました。

先ほども申し上げましたが、購入型のクラウドファンディングには「リターン(返礼品)」が存在します。「3000円ご支援いただければ、絵本『えんとつ町のプペル』にサインを入れてお送りします」というものです。「絵本をお送りします」とサクッと言っちゃっていますが、どっこい、支援者様にお送りする絵本には当然「原価」が発生します。そこに「配送費」がかかってきて、場合によっては配送を手伝ってくれるスタッフを雇わなければなりませんし、クラウドファンディングの「手数料」も支払わなければなりません。となると、残るお金は雀の涙ほど。下手すりゃ収支がマイナスになることも。

「クラウドファンディングをしておいて、収支がマイナスになるとは何事か?」と思われるかもしれませんが、これがクラウドファンディングです。それでもやるメリットがあるからやっているのですが、それを知るには、「支援総額」ではなくて、「支援者数」に目を向ける必要があります。

たとえば。僕と貴方と2人で力を合わせて絵本を作れば、その絵本は最低でも2冊売れます。自分の作品を手元に残しておきたい僕と貴方が一冊ずつ買うからです(笑)。2人で作った絵本が二冊売れるのであれば、10人で作れば十冊、100人で作れば百冊、1000人で作れば千冊が売れるハズ。

要するに、「お客さん」を増やすのではなくて、「作り手」を増やしてしまえばいい。「作り手」はそのまま「お客さん」になってくれるからです。クラウドファンディングの最大の魅力は、商品・サービスを世間にリリースする前から「結果的にお客さんになる作り手(共犯者)」が作れる点にあります。このことに気がついた日から、大きな大きな時代の変化がチラチラと目に入ってくるようになりました。

下に続きます
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◼︎『映画 えんとつ町のプぺル』特報【12月25日公開】

PROFILE●1980年、兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年、梶原雄太と「キングコング」を結成。2001年に深夜番組『はねるのトびら』のレギュラー出演決定と同時に東京進出を果たす。同番組がゴールデン枠に移行した2005年に「テレビ番組出演をメインにしたタレント活動」に疑問を持ち、「自分の生きる場所」を模索。2009年に『Dr.インクの星空キネマ』で絵本デビューを果たす。2016年、完全分業制による第4作絵本『えんとつ町のプペル』を刊行し、累計発行部数48万部を超えるベストセラーに。2020年12月公開予定の『映画 えんとつ町のプペル』では脚本・制作総指揮を務める。クラウドファンディングでの合計調達額は3億8000万円を突破。現在、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰。会員数は7万人を突破し、国内最大となっている。芸能活動の枠を越え、さまざまなビジネス、表現活動を展開中。

◼︎オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」
https://salon.jp/nishino
西野が考えるエンタメの未来や、現在とりかかっているプロジェクトを先んじて知れたり、場合によってはクリエイターとして強引に参加させられたりする国内最大の会員制のコミュニケーションサロン。コワーキングスペース「ZIP」の利用やサロンメンバーだけでの特典も多数。

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  • 映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第6回
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  • 「お金を払ってでも製作に参加したい」セカンドクリエイターたちと共に2019年に開催した、エッフェル塔での個展の様子

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