映画「鬼ガール!!」原作者・中村航さんインタビュー「いま輝けることを見つけることが、将来の輝きにつながっていく」
井頭愛海主演で現在公開中の映画「鬼ガール!!」。原作は、ベストセラー「100回泣くこと」や映画化された「デビクロくんの恋と魔法」などの著者・中村航さんの児童小説「鬼ガール!! ツノは出るけど女優めざしますっ!」(角川つばさ文庫)だ。
中村さんが今“鬼”をテーマに児童小説を手掛けた理由は? 鬼の末裔・ももかというキャラクターに込められた思いとは? 中村さんに作品の背景を聞いた。
「ももかに“鬼”というコンプレックスを乗り越えてもらいたかった」
――「鬼ガール!!」は、鬼と人間のハーフであることを隠しながら生活する女子高生・鬼瓦ももかが、部活動に打ち込みながら成長していく姿を描いた物語です。「鬼」を主人公にするというアイデアはどうやって出てきたんですか?
中村「具体的に考え始めたのは、2009年に『オニロック』という絵本を作ったあとです。この絵本の主人公も、鬼の男の子なんですが、「鬼」という題材と、絵本の相性がとてもよくて。次に作るとしたら、児童小説ならその世界観をうまく表現できるかもしれないと思っていました」
――ももかは鬼ですが、ごく普通の女子高生として暮らしています。
中村「ももかは、自分にツノがあったり鬼であることに対して、とてもコンプレックスを抱いている女の子です。鬼は昔から、人間とは違う造形で、違う場所に棲んで……と、差別意識を含んだ形で怖れられてきた存在だと思うんです。それを現代風のコンプレックスや自信のなさに変えて、主人公にそれを乗り越えてもらいたかった。だから、僕たちが普段持っているさまざまなコンプレックスや自信のなさを、鬼という形でももかに背負わせて、乗り越えてもらいたかった。それに、そもそも鬼に興味がない人なんていないでしょ? 僕も子どもの頃から興味がありましたし。児童文学の『泣いた赤鬼』や、小学校の合宿で歌わされた『鬼のパンツ』なんかで鬼を認識し始めたのかなぁ。でも、『うる星やつら』のラムちゃんとかね、あんまり怖いイメージはなかった」
――鬼を登場させるにあたり、どんなことを意識されましたか?
中村「とにかくキュートに描くように心がけました。犬や猿が苦手という、桃太郎を連想させるようなことを入れてみたり。あとは、登場人物の友情・恋愛・家族愛など、さまざまな関係や思いを丁寧に追うことで、生き生きと描いたつもりです」
映画「鬼ガール!!」
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公開中
監督/瀧川元気
出演/井頭愛海 板垣瑞生 上村海成 桜田ひより 吉田美月喜 曽野舜太 山口智充ほか
【著者プロフィール】
中村航(なかむら こう)●小説家。2002年、デビュー作『リレキショ』で第39回文藝賞を受賞。続く『夏やすみ』『ぐるぐるまわるすべり台』が芥川賞候補に。ベストセラー『100回泣くこと』のほか『デビクロくんの恋と魔法』『トリガール!』など映像化作品も多数。
【原作情報】
「鬼ガール!! ツノは出るけど女優めざしますっ!」(角川つばさ文庫)
中村航・作 榊アヤミ・絵