山崎樹範「木南さんは一緒にいてストレスがないんです」
11月18日(金)公開の、陣内孝則が9年ぶりにメガホンを取った映画「幸福のアリバイ~Picture~」に出演する、山崎樹範にインタビューを行った。
同作は、人生における数々の節目を舞台に、日常の悲喜こもごもを“写真”というキーワードを通して5つのエピソードで描くヒューマンコメディー。
山崎は本作の中で「見合い」と「結婚」という2つのリンクするエピソードにて、自他共に認める“駄目男”を演じている。
【山崎樹範、“幸福のアリバイ”は「男子を背負ってやっています!」 より続く】
――もし人生リセットして、どちらかになれるとしたら、今回演じた役と渡辺大さんが演じた役では、どちらになりたいですか?
あっちに行ってみたいという憧れはありますけど、こっちの良さも知っているので…。こっちも意外と居心地がいいんですよ。だからこっちでもいいかなって思っちゃいますよね~。愚かって、いいなあって思っちゃって。
だらしないやつも好きだし、完璧にできる男性とかはつまらなそう。みんなと一緒にへまをしたいんですよ。それが楽しいんで。
――確かにスーパースターにはできないですよね。
大なり小なりへまをしているんでしょうけど、こっちからするとそんなのは大したことじゃないんですよ。「こないださ~」って嬉々としてするエピソードがそんなに面白くなくて、全然笑えないよ!っていう。われわれはもっとえげつないヘマをするので…。
――なるほど。そういうエゲつなさが一部には絶大な支持を集めるわけですね?
はい。深夜ラジオを延々と聴いているような人たちとは仲良くなれます(笑)。そういう人の方が人として面白いなって思えるんですよね。理想を言えば、そういうやつらとも仲がいい、エースで4番の人がいいですよね~。
――なるほど。なかなかぜいたくですね!
えっ、だって今、ぜいたくな話をしていい時間でしょ?(笑) 理想を喋っていい時間ですよね?
――そうですね(笑)。すみません、舞い上がっちゃって。
ビックリした~。あれ? 今日取材じゃなくてオーディションだったっけ?って思っちゃいましたよ(笑)。
――いやいや(笑)。では、全編通して一緒だった木南晴夏さんの印象はいかがですか?
本当にフラットな方なので、木南さんは嫌がるでしょうけど、そのまま同居できるくらい居心地が良かったです。一緒にいてストレスがないんですよ! だから待ち時間とかに、待機部屋に2人きりになった瞬間もあったんですけど、ただお互い本を読んだりしているんですよ。
何を喋るでもなく、次のシーンどうしようかなとかもないし、普通にお互いが空気のようになっていて、スタッフさんに呼ばれたらそのままの空気感でやるんです。そういう人が相手だといいですよね。
――空気感って大事ですよね。
1年だって365日もあって、それが一緒にいて10年とか20年とか、長くいるって考えたら、そういう時間がまず当たり前で、なきゃ駄目じゃないですか。それがベースとしてできないと一緒にいられないと思うんで、そういう意味では、木南さんとはとてもいい空気感でした。
――職業柄、相手に面白いことを求められたりすると思うんですけど、それは平気ですか?
でも、お付き合いした人にはこの人面白くないんだなってすぐばれるので。何か言われたら答えますけど、家にいる間も一切喋らないですから。20代の若かりし頃ですけど、彼女と一緒に家にいて、何も喋らずにいたら「おまえは植物か!」って言われて振られたことはあります(笑)。
――それは名言ですね。どうお答えになったんですか?
「へっ?」って気の抜けた返事をしました(笑)。それくらい僕は本当に、動かないし、喋らないんです!
――映画の話に戻って、陣内監督の演出はどうでしたか?
ずっと役者をやられてきた陣内さんですから、役者の気持ちを分かってくださる監督さんでした。迷っているときは明確な指示を出してくれるし、多少疲れて気が抜けてしまった瞬間は「おまえちょっと集中欠いているな!」って、ちゃんと注意してもらえるし。
そうなるとその後は、陣内さんが見ていると思うからシャキッと集中できるんです。役者同士だから、ここはごまかせないというのが分かるので、変なストレスではなく、いい意味での緊張感の中で撮影ができました。
――印象に残ったやりとりは?
監督の「よーいスタート!」の声がやたらデカイんですよ!「舞台のラストシーンか!」ってくらい、本当にマックスのボリュームで「よ~い!スタート!」ってやるんです(笑)。それも毎カット! 声は大丈夫なのかなって思うくらい。
そういう人って今はあまりいないので、それも新鮮でした。何度も聞いているとそれがまた心地いいんですよね。
――それは監督にお伝えしました?
いや、言えないですよ(笑)。「陣内さん声デカいっすね~!」って? そんなこと言えるわけないでしょう。
――そうですよね(笑)。ではタイトルにちなんで、人生において「アリバイ」を必要とされた時間ってありますか?
それ、絶対話しちゃいけないやつじゃないですか!(笑) そのためのアリバイでしょ? 実はあの時アリバイなかったんです…とか言えないでしょ!
――もちろんやばいやつじゃないですよ?(笑) 言える範囲で。
分かっていますよ!(笑) 言える範囲だったら過去の浮気の話を言うかな?とか思ったんですか?
――そうですね。そろそろ時効なのあるかな~って(笑)。
え? このご時世、浮気に時効ってありますか?(笑) まあ、ライトなのを言えば、仕事の人と飲みに行くって言って、彼女に女性といたことがバレちゃったことはありましたよ。「今日は女の子といたんでしょ?」みたいな感じで詰められて、何その勘の鋭さ…って(笑)。
まあそれは、ただ携帯が見られていたってだけなんですけど、向こうの“捜査能力”の方が上回っていたんです。
――なるほど(笑)。それは仕方ないですね。
ある日気付いたんですよ。女の子ってこんなに勘が良過ぎるものかな?って。それで、(携帯チェック)やってるな!って思ったんです。当時は彼女と一緒に住んでいたので、僕がシャワーを浴びている時間にやっているんだな!と。
普段シャワーを浴びていて止めてから拭いて出てくるまでに時間があるので、そこで証拠隠滅されるんでしょうけど、ある日、シャワーを出しっ放しにして、こっそり体を拭いて、バーン!って勢いよく出てきたら、案の定彼女が携帯を見ていました。
「おい、今見てるな?」って現行犯逮捕したんです。「それは人としてやっちゃいけないことだろ!」って怒ったら向こうは平謝りで、「本当にごめんなさい、私は最低なことをしました」って言ってきたんで「分かった、今回は許す」と。
「じゃあこの件は大丈夫ですか? 今後見ないということで?」となって、「OK!」と水に流したんです。問題はその後で、「ありがとうございます。じゃあ、お聞きしますけど、これって…」と、その後その携帯の中身について全部詰められてしまって。こっちは許すって言ってしまった手前、もう武器がないんですよ(笑)。
携帯見るなよ!ってのは絶対に言えないから、ノーガードでボコボコにされました(笑)。その後、僕がさっきの100倍謝り倒すっていう時間がありました。自分が悪いのに下手に反撃しちゃいけないんですよね(笑)。
――そんな修羅場も経験されたんですね!
はい…って、よく考えると同じじゃねえかよ! 映画の役どころと。おっかしいなあ(笑)。
――では、最後にこの記事を読んでくれる方が幸せになるようなメッセージをお願いします。
はい。そうですね…え、幸せになるメッセージ? サラッと難しいことを言いますね!(笑)
さっき、僕が話したアリバイは本当によくないアリバイですけど、「今幸福なんです」って自分で言うのは結構恥ずかしかったりするじゃないですか。でも、誰かがその時撮ってくれた幸せそうな写真があることによって、言いづらいこととかも、この時楽しかったよねとか、言えると思うんです。
だから、写真ってすごいアリバイになるなと思うんですよね。そういう写真があればあるほど、人生って絶対に幸せだと思うので、たとえその瞬間が幸福じゃなかったとしても、そういう写真を撮っておいたり、今の時間を切り取っておくだけで、後々意味が変わってくると思うんです。
この先の人生で、皆さんの身に起こるかもしれないことが映画の中のエピソードにはあると思うんですけど、それも悪くないなと思えるような映画だと思います。日本人って「私なんて…」と謙遜しがちですし、先の事を悲観的に考えている方ももしかするといるかもしれないですけど、幸せになることにマイナスなことはないんです。
恥ずかしかったら何かを言い訳にして、アリバイにして、幸せを共有してもらえたらなと。そういうことを感じさせる映画だと思うので、ぜひ映画館に足を運んでいただきたいなと思います。
――やはり、最後にはきっちり締めてくださるんですね(笑)。
そうですね。前もそうでしたよね(笑)。映画と一緒で、ちゃんと帳尻合わせるんです!
※山崎さん。ご結婚おめでとうございます!
11月18日(金)から全国公開
出演=中井貴一、柳葉敏郎、大地康雄、山崎樹範、浅利陽介、木南晴夏、渡辺大、佐藤二朗、木村多江ほか
原案・監督=陣内孝則
脚本=喜安浩平
配給=東映
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