ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

(C)TBS

TOKYO MER〜走る緊急救命室〜

命やそばにいる人の大切さが改めて伝わったのではないか(武藤淳P)

まずは、作品賞を受賞された気持ちと、作品に込めた思いをお聞かせください。

率直にうれしいです。特にこのような時期にいただけて励みにもなりました。今作は、現在も危険と隣り合わせの中でお仕事をされている医療従事者の皆さまにエールを送るという気持ちを込めて作りました。
ですから、その方々に失礼があってはいけませんので、医療従事者の方がご覧になっても不自然に感じないくらいきちんと作りたいと思い、医療監修の皆さまには台本制作の段階からたくさんの方に監修に入っていただき、現場にも必ず立ち会っていただきました。そうしたら、つい最近、医療関係者の方に「日曜日は『TOKYO MER』を見るために急いで帰っていた」と言っていただけて、とてもうれしかったです。「よくぞ、あそこまで調べてやってくれた」という声もいただき、胸をなで下ろしました。


多くの方から支持された理由はどこにあると思われますか?

放送中に予想を超える新型コロナウイルスの感染者が出て、大げさではなく未曽有の状態になりました。一度「落ち着きかけたかな?」と思ったら、オリンピックと同時に数字が跳ね上がったので、本当にどうなってしまうのかと多くの方が思われたと思います。否応なしに命と向き合うことになったところに、自分のことより人の命を優先する喜多見先生という人が現れたので、改めて命やそばにいる人の大切さなどが、ドラマという形を通して多くの方に伝わったのではないかと思います。私たちは真摯(しんし)に命との向き合い方を描いていたので、思いが伝わったのかなと思うとうれしいです。


社会的に大変な状況ということは、撮影も大変だったと思います。プロデューサーとして、一番意識されていたことは?

大げさではなく命懸けの状況でキャストやスタッフのみんなに働いていただいていたので、「本当にいいのだろうか?」という葛藤は常にありました。しかし、その一方で楽しみにしてくださっている方がいる。作品を見て、元気になってくださる方々がいるということはとても意義深いものだと思いますので、最後まで制作することができて本当に良かったなと思っています。


壮大なスケール感は日曜劇場の一つの目玉にもなっており、今作も圧倒的なスケールで物語が描かれました。

そこは、美術スタッフが最初から最後まで本当に頑張ってくれました。がれきがよく出てきましたが、10トントラック4台分も用意してくれて、それを全国各地のロケ現場に運んで使用していたんです。ですから、最初はトゲトゲしていたのが、最後の方は丸くなったりしていました(笑)。


美術といえば、走る緊急救命室であるERカーもすごかったですね。

まず車探しから始まって、デザインも何パターンもある中から選びました。この番組を象徴する存在でしたので、ERカーもスケール感を大切にしました。


ERカーについても、医療監修の先生たちから意見をもらったのですか?

動く手術室は今の日本にはないので、本当にあったら多くの方の命を救うことができる。そのためにはどうすればいいのかという視点で、医療指導の方々の意見も取り入れながら制作し、最終的には先生たちから「このERカーが本当にあったらいいですね」というお言葉をいただくことができました。


医療リハーサルはクランクインの1カ月前から行われたそうですね。

「トリアージとは何か?」というところから始めました。一からやっていただけたとあって、鈴木亮平さんは、最後の方は「本当にオペができるのではないか?」と思わせられるぐらい成長されていて、すごいなと思いました。彼は、撮影現場で先生にする質問もすごいんですよ。医療用語が出てくると、「それはどういうことなのか?」「何なのか?」ということも聞くんです。そして、それがどういうものなのかを理解してから言うので、せりふに説得力が生まれるんですね。その役になるために、勉強も肉体作りも貪欲なまでに極限まで努力する。それは役と作品への愛情で、そこが彼の魅力なのだろうなと思います。


劇中で体を鍛えるシーンがありましたが、どんな筋トレをするかはリクエストされたのですか?

リクエストもありつつ、亮平さんからもたくさんアイデアをいただきました。「今回のシーンはちょっとコミカルなので、例えばこんな筋トレはどうだろう?」と提案してきてくれるんです。台本に懸垂とあれば、もちろんやってくれますし、プラスアルファでアイデアも出してくれる。何から何まで信頼の置ける役者さんです。


では、音羽役の賀来賢人さんはいかがでしたか?

とても真面目な方です。コミカルな役のイメージが強い方ですが、演じた音羽は官僚でスパイ的要素もある真逆の役。しかし、本当にお見事でしたね。音羽の心の内を繊細なお芝居で表現してくださいました。


菜々緒さんはいつもの艶やかさは封印されていました。

お芝居はもちろん、人間力が素晴らしかったです。本当に周囲をよく見ている方で、みんなのことをしっかり見ているからこそ、あのお芝居ができるんですよね。


手術シーンで相手の手の中にパシっと器具を渡せるのも、相手のことを良く見ているからなんですね。

あれもすごかったですね! 亮平さんも「“ここしかない!”というところに来るので、とてもやりやすかった」とおっしゃってました。それから、すごく頭のいい人だなとも思いました。現場でキャストやスタッフが何かに悩んでいると、誰よりも先に解決策を提示してくれて、しかもそれが的確なんです。その信頼感たるや、絶大なものがありました。


そんなチームをまとめていたのは?

亮平さんです。座長として、どんなに大変な瞬間でも必ずまとめてくださった。撮影は非常に厳しいスケジュールの中で行われていましたが、最後の最後まで亮平さんがチームを引っ張っていってくださいました。


中条あやみさんはいかがでしたか?

撮影当初は不安そうにしている場面も見受けられたので、なるべく声を掛けるようにしていました。しかし、そんなのは本当に最初の頃だけで、中条さんはものすごい勢いで成長を見せてくれたんです。今思えば、演じる弦巻比奈は研修医で、MERの中でどんどん育って一人前の医者になっていくので、そことリンクして中条さんとしても成長していったのだと思います。とても頼もしい方だなと思いました。


では、連ドラ初レギュラー出演の佐藤栞里さんはいかがでしたか?

第5話でエレベーターに閉じ込められてしっかりお芝居をすることは、最初から決まっていました。ご本人もおそらく不安だったのではないかと思いますが、その第5話で急激に良くなったんですよ、全てが。しっかり役を生きておられたので、相当努力されたのではないかと思います。それから、一緒にエレベーターに閉じ込められた賀来さんが現場でいろいろアドバイスされたりもしていて、みんなで助け合い、支え合っていた。作品の内容ともリンクして、現場でも自然と助け合っていたことが印象的でした。


そういったお話を聞いていると、自然と続編が見たくなります。

望んでいただける声があれば、頑張りたいです。

(取材・文=及川静)
TOKYO MER〜走る緊急救命室〜

TOKYO MER〜走る緊急救命室〜

救命救急チーム“TOKYO MER”を舞台に繰り広げられる医療ドラマ。チームのリーダーでスーパー救命救急医・喜多見(鈴木亮平)らが、事故、災害、事件現場に駆け付け奮闘する姿を描く。また、チームメンバーの救命救急医・音羽を賀来賢人が演じる。脚本はドラマ「グランメゾン東京」(2019年、TBS系)などを手掛けた黒岩勉が担当する。

第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞受賞インタビュー一覧

【PR】お知らせ