ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞 受賞インタビュー

(C)カンテレ

小芝風花

10年後、「このドラマが青春だった」と思うはず

「彼女はキレイだった」で初めて主演女優賞を受賞した感想を教えてください。

賞をいただけて、すごくうれしいです。共演者やスタッフの皆さんのおかげで、このドラマは放送中、Twitterの世界トレンド1位になるなど、視聴者の方も喜んで見てくださったんだなという実感があり、それがこうして賞という形で残ったのがうれしいです。
読者や記者からの評価では、小芝さんが演じた佐藤愛は「共感できるヒロインだった」「残念女子から成長していく姿をつい応援したくなった」という意見が多かったです。

ありがとうございます。一番うれしい感想ですね。愛は幼少期からビジュアルの変化が激しいけれど、中身が真っすぐな頑張り屋さんというところは変わっていなくて、再会した宗介(中島健人)にまた好きになってもらえる心のきれいさは大事にしたいなと思っていました。でも、演じ方をちょっと間違えると、共感しづらくなってしまう。それは嫌だったので、喜怒哀楽がはっきりしているし、ミスもするけれど、「愛は仕方ないよね」と思ってもらえるように親しみやすい女性として演じられたらと思いました。


原作は同名の韓国ドラマ。日本版でアレンジしたところはありましたか。

プロデューサーさんや監督さん、私たちキャストで「日本版ではラブコメというよりラブストーリーにしよう」と話し合いました。原作の持つコミカルさや人物の表情が豊かなところは大事にしつつ、見る人が物語に入り込めるようにバランスを取りながら撮影を進めていきました。現場でも監督さんに「やりすぎてないですか?」と何回も確認を取りました。原作よりテンションを落とすところは落とし、でも、クスっと笑えるように、いいあんばいのところを探り探りやっていましたね。


愛を演じるにあたり難しかったのはどんなところですか?

台本を読んだ時点からやりにくいところはなかったです。誰しも愛のようなコンプレックスは抱えているし、失敗して悔しくて泣くこともある。好きな人に気づいてもらえない寂しさや、嫌な態度を取られたときの悲しさ、腹立たしさなど、すごく共感しやすかったですね。むしろ他の登場人物との距離感の方が難しかったです。特に樋口さん(赤楚衛二)との距離感は、愛を好きでいてくれる彼に対し、「どこまで鈍感でいていいんだろう」ということは悩みました。


視聴者は「宗介派」と「樋口派」に分かれて盛り上がっていましたが、小芝さん自身はどちら派ですか?

答えるのがめちゃくちゃ難しい…。というのも、愛を演じていると宗介のいいところがよく見えるんですね。宗介が私を初恋の相手だと気づかないまま、「愛に似合うような人になりたかった」と言ったときの表情を見ると、「そう思ってくれていたんだ」とキュンと来る。

でも、放送を見ると、樋口さんが愛のいないところで、愛のことをとても思って動いているので…。だから、一部始終を見ている視聴者の方には樋口さん人気が高いというのは分かります。私も、雨に濡れている彼を見て「樋口~!」と叫びましたもん(笑)。樋口さんの敗北の理由は陰で動き過ぎたことだと思います。だから、愛は彼の真意に気づかず…。第6話で愛が髪をストレートにして職場復帰したときも、実は樋口さんが「頑張れ」と小さく言ってくれている。放送で見て「こんなこと、言ってくれていたんだ」とキュンと来ました。


中島さんとの初共演はいかがでしたか?

私はこれまで正統派のラブストーリーを演じたことがなかったので不安で、「どうしたらいいんだろう。キュンとは?」と思いましたが、お相手が女性の心をつかんで離さない中島さんなので、最初からお任せしようと言っていました。実際、すごくすてきに演じてくださったので、私は余計なことを考えず、ただその場に佐藤愛としているだけでよくて、それが皆さんのときめきにつながっていたらいいなと思いました。


中島さんとはどんなやり取りをしましたか?

私は現場で確認用のモニターをあまり見ないタイプですが、今回は中島さんのアップは見に行き、「今の顔の角度、最高です」と言うようにチェックしていました。勝手に「前髪の分け目はこれがいいです」とか(笑)。前髪のラインが眉毛の半分より内側に入っていると、ちょっと重く見えちゃうんです。自然に両サイド分かれているときの方が最高だなと思って、女子の意見としてそう言うと、中島さんは「マジで? どうすればいい?」と応じてくれました。中島さんの方が年上ですけど、まったく気にせず受け入れてくれました。そんなふうにラブストーリーを演じる間柄として一番いい関係を築けたのではないかと思います。


今回の共演を通じて中島さんはどんな人だと思いましたか?

求められていることを瞬間的に察知して出せる頭の良さと、すごく子供っぽいところを両方持っていますよね。大人と子供を兼ね備えているというか、いたずらで「わっ」とか脅かしてきたり、赤楚くんと遊戯王のカードゲームで盛り上がっていたりするのに、いざ、番宣番組に出たら、瞬間的にPRコメントがすらすら出てくる。実はいろんなことに気を配っていて、芝居でもいろんなパターンを試したり、監督のこだわりでテイクが重なったりしても、真面目に対応していました。私にとってもこれまで共演者の方とこんなに相談したことがないというぐらい話せました。宗介のInstagramアカウントも中島さんが提案して、どうやったらたくさんの人に見てもらえるか、私たちと話し合いながら頻繁に更新していました。


最終回、小芝さんと中島さんには生放送のシーンがありましたね。

はい。元々は予定していなかったけれど、急きょ決まったんです。スタッフの皆さんも最終回まで盛り上げたいと思ってくださっているんだなとうれしかったですね。これまでのドラマの最終回が放送されたときは既にクランクアップしていて、その瞬間をみんなで迎えられたという経験がなかったので、忘れられない思い出になりました。


樋口役の赤楚さん、梨沙役の佐久間由衣さんとの共演はいかがでしたか?

私にとっては皆さん年上なんですけど、一緒にいると学校の休み時間みたいで、本当に小学生状態でした。撮影の合間も「宗介」のInstagramに載せる写真をみんなで撮影しながら、おしゃべりが止まらなくて楽しかったな~。赤楚くんはちょっと天然なのか、話したことを半分ぐらいしか覚えていないことがあって、それは忘れっぽい私と似ています。お笑いに対する熱量がすごくあるので、グループラインでも急にBGMまでつけたボイスメッセージを送ってくるんです。

由衣ちゃんはしっかりしていそうで、実は一番ほわっとしている。その緩さがいいんです。何を言っても「分かった。オッケー」という感じで、受け入れ体勢が半端ない(笑)。最初から無理に気を遣わなくていいんだなと思わせてくれて、お互いにスマートフォンをいじっていて無言でも気にならない関係になれました。4人とも性格や個性はバラバラなのに、みんなでいると不思議にフィットする感じで、出会えて良かったなと思いました。


このドラマはラブストーリーであると同時に、女同士の友情物語でもありましたね。

そうなんです。愛と梨沙の関係は本当にすてき。見る人にも「こんな友達がいたらいいな」と思ってもらいたかったので、二人の信頼関係をしっかり演じたいと思いました。最初に同居人として楽しくワチャワチャしているところから、宗介の存在を巡りだんだん関係が悪くなっていくのが悲しかったですね。そこで梨沙は愛が大事にしていたパズルのピースを盗んじゃったりするけれど、いい子なんです。絶対悪者にはしたくなくて、第8話でお互いの感情をぶつけるシーンでは「これから梨沙とけんかしなきゃいけないんだ」と思うと辛かった。由衣ちゃんと本当に仲良くなっていたからこそ、そう感じました。


最終話、愛と宗介が迎えた結末はどう思いましたか?

愛の「人ってやりたいことしているとき、すっごくきれいに見える」というせりふが印象的で、ラスト近くの再会シーンで宗介がそばかすを化粧で隠していない愛を見て、「きれいになったね」と言ってくれたのがうれしかったですね。本質を見て言ってくれたせりふなので。二人は幸せになったんだろうなと思えました。樋口さんは楽しそうに本を書いていて、梨沙も新しくすてきな人ができて、全員が自分のやりたい方向に向かっている結末だったところも良かったです。みんないい人だから幸せになってほしいですもんね。


宗介とのキスシーンもたくさんありましたね。

原作もけっこうラブシーンが多いんですよね。こういうご時世なので、カメラテストはせず、本番一発勝負。同じようなシーンにならないように顔の角度や距離感など、中島さんと「次どんな感じにしようか」と話し合いながら演じました。宗介さんには付き合い始めたら、デレデレしてほしかったんです。特に病院でのキスシーンは大事だと思っていました。本当に楽しそうなキスだったりちょっと大人なキスだったり、いろんなパターンに挑戦できたのは良かったです。


ラブシーンは、ご家族とか友人から反応がありましたか?

私はいつもオンエアを母と一緒に見ているのですが、最終話でお泊りするときのキスシーンはさすがに気まずかったですね。親に見られるって「照れるなぁ」って(笑)。でも、私も恋愛ドラマでキスシーンがあると「うわあっ」とテンション上がる方なので、このご時世だからといってそういう場面をなくさなかったのは良かったなと思います。


小芝さんにとってこのドラマはどんな作品になりましたか。

「青春のど真ん中」です。こんなドラマはないなっていうぐらい、キャストとスタッフの熱量が大きかったし現場にいるのも楽しかった。学校の文化祭みたいな感じで、準備をしっかりし、本番はみんなで盛り上がりました。10年後に振り返ったら間違いなく「このドラマが青春だった」と思うはず。元々私は友達が少ないので、みんなと一緒にいる時間が終わってほしくなくて、こんなに好きだと思える作品と役、共演者に出会えたのは幸せです。キャストのみんなとは「落ち着いたら打ち上げしたいね」と言っています。


今後もラブストーリーに挑戦してみたいですか?

まだ今は余韻に浸っていたいですね。「彼女はキレイだった」はこうして賞もいただけたぐらいなので、なかなかこれを超えられない気がして…。しばらくは「かのきれ」を引きずってしまうかもしれません。

(取材・文=小田慶子)
彼女はキレイだった

彼女はキレイだった

韓国で放送されたドラマを原作に、中島健人と小芝風花がW主演を務めるラブストーリー。さえない太っちょの少年からイケメンエリートになった宗介(中島)と、優等生の美少女から無職の残念女子になった愛(小芝)の擦れ違う初恋の行方を描く。二人は同じ編集部で働くことになるが、宗介は愛に気付かず、愛も正体を明かせずにいた。

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