ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第113回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞 受賞インタビュー

(C)TBS

塚原あゆ子、山本剛義

ガードしていない、隙のある表情が私は好きなので、そういう顔を引き出したかった(塚原あゆ子D)

監督賞、おめでとうございます。投票理由として「小気味よい会話劇」を推す声も多かったのですが、硝子と羽根岡の掛け合いなど、会話シーンはどんなことを意識されましたか?

(硝子役の)有村架純さんと(羽根岡役の)中村倫也さんのテンポを崩さないということですね。お二人が演じられているものを、こちらはジャマしないように撮らせていただいていただけで…。細かな指示を出すということもなかったと思います。(塚原D)
塚原監督とは何作もご一緒していますが、塚原監督が作られるキャラクターは薄っぺらくなく、立体的に見えるように演出されるので、演じる方もやりやすかったのではないかと思いますね。台本に書かれていること以外の…例えば、目線の動かし方や歩き方など、ちょっとした仕草も作ってくれるので。(山本D)

じゃあ、指示してるのかな? していないと思っていたんだけど。(塚原D)

してる、してる!(笑)。(山本D)

細かく指示しているみたいです(笑)。(塚原D)


硝子と羽根岡のゴールデンコンビに対して、何か求めた部分はありますか?

テンポ感は元々お二人が作ってくれていたので、それを切り取るだけだったのですが、感情が透けて見えるような部分は意識しましたね。作り過ぎていない顔を1話につき1回ぐらいずつ、うまく切り取れたらいいなと思って。ガードしていない、隙のある表情が私は好きなので、そういう顔を引き出したかったんですよね。“何もしていない”ということが大事な瞬間もある。“こういうふうに芝居してます”じゃない顔の方が、説得力が出ることもあるので、そこは意識しました。(塚原D)


度々飛び出す中村倫也さんの物まねなど、アドリブっぽいやりとりも視聴者に好評でした。

よく、「あのシーンはアドリブですか?」と聞かれるんですが、意外と西田(征史)さんの台本通りなんですよね。(山本D)

特に第8話のグルメサイトの回はアドリブに見えるけど、半分ぐらいは西田さんの脚本通りで。(塚原D)

(中村さんの)物まねはアドリブですけど(笑)。(山本D)

第1話の金八先生物まねは、金八先生をまねしている芸人さんをまねている感じでしたが、面白いからそのまま使わせていただこうかなと思って(笑)。それ以降、ご本人が物まねを入れてくるので、使う方向で行きました。(塚原D)


リーガル作品というと法律的な専門用語も多く、小難しい印象を持たれがちですが、本作は分かりやすい演出が随所に施されていたと思います。そのあたり、こだわられた部分を教えてください。

毎話、冒頭で流れていた事件の寸劇や、CGを使って見せるような演出は塚原監督のアイデアで。誰もが分かるような見やすさで、エンターテインメントに仕上がっていたと思います。(山本D)

第5話の寸劇、おじいちゃんとおばあちゃんのやりとりは、セリフがほぼ聞き取れなかったけどね。中村くんが何を言ってるのか分からなくて(笑)。(塚原D)

第5話は僕が担当していたのですが、演出も何もなく、「ちょっとやってみて」って感じで(笑)。メークさんや衣装さんもノリノリでやってくれて。(山本D)

寸劇シーンの撮影は実はけっこう時間がかかっていて。でも、オンエアでは数秒で終わるっていう(笑)。(塚原D)

毎回、照明も凝っていたり、全力で取り組んでくれて。スタッフに感謝ですよね。(山本D)


主人公二人が白い衣装で白い傘を差して登場するドラマのタイトルの見せ方も印象的でした。

傘というのが作品の重要なアイテムになっていたので、傘は差したいなと思って。でも、ただ差すのでは面白くないので、傘の中に照明を仕込む演出を提案しました。白い衣装に関しては、照明を仕込むなら白の衣装が映えるということで、スタイリストさんが持ってきてくれたのだと思います。タイトル文字の入れ方も編集マンが考えてくれて。スタッフが本当に優秀なんです。こういう賞をいただく度に、「私の力ではない」と恐縮します。(塚原D)

でも、傘にライトを仕込むというアイデアがなければ、衣装も白にならないし…。塚原監督のOKがなければ、みんな動き出せないので(笑)。(山本D)

種だけ植えて、あとはみんなが育ててくれています。(塚原D)


「石子と羽男―」は各キャラクターが際立ち、ゲスト出演者も含め、心をつかまれる演技の連続でした。思い描いていた“画”の予想を上回ったシーンはありましたか?

僕の演出回ではないのですが、第4話の非常階段でのシーン。朝方、羽男(羽根岡)と石子(硝子)が階段でビールを飲んでいて、その姿を見たときに「素敵な二人なんだな」と強く感じました。台本以上に素敵なシーンだなと思ったんですよね。毎回、塚原監督がどう面白くしてくれるのかを期待しながら見ているのですが、第4話のシーンや第1話の冒頭の二人の出会いのシーンなど、各話、台本を超えてきてるなと思いました。(山本D)

第3話の「ファスト映画」回のラスト。でんでんさんが演じた山田の“許さない”という終わり方はニガいなと思いながらも、スッキリしたというか。私はそちら側(作り手側)の人間なので、知的財産というものへの思いもあるので、いいラストだったなと思いました。“許さない”という方向に持っていったのは山本監督の提案ですよね。(塚原D)

そうですね。ラストの方向性は変更したのですが、西田さんの脚本も素晴らしくて。山田が「あなたのことを許せません」と言う場面で、その前に「未熟で申し訳ない」と自分を卑下して謝るんですよ。そこに奥深さを感じたというか。ただ許さないのではなく、「自分が未熟だから許せないんだ」と。それがより心に響く。もちろん、でんでんさんの演技も素晴らしかったのですが、西田さんのすごさを感じました。(山本D)

西田さんはそういう発想が素晴らしいですよね。(塚原D)

大げさではなく、ホントに日常にあるちょっとしたことをドラマにした途端、「わっ!」と迫ってくる。訴えかけてくるものがあるなと思いましたね。(山本D)

(取材・文=関川直子)
石子と羽男―そんなコトで訴えます?―

石子と羽男―そんなコトで訴えます?―

有村架純、中村倫也のW主演で、正反対のようでどこか似た者同士の二人が成長する姿を描くリーガル・エンターテインメント。有村は、司法試験に4回落ちた崖っぷち東大卒のパラリーガル・石田硝子、中村は司法試験予備試験と司法試験に1回で合格した高卒の弁護士・羽根岡佳男を演じる。脚本は西田征史が手掛ける。

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