ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第94回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 受賞インタビュー

撮影=ToshiSENDA

コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON

視聴者の方々に受け入れてもらえるか常に不安でした(増本淳プロデューサー)

まずは、3rdシーズンを終えたときのお気持ちをお聞かせください
感謝と安堵…ですかね。
安堵…というと、スタート前は不安があったのでしょうか
もちろんです。元々、1stシーズンから、この番組は視聴率をとる企画ではないと思ってやってたんですよね。後味が悪い、見た人にストレスをかける番組じゃないですか。いわゆる王道の医療ドラマ―例えば天才外科医の主人公がいて、そこに難病奇病の患者がやってきて、みんなは反対するけど主人公だけは強気でリスクをとって、必ず成功させて感動…という構図が、基本的には世の中にウケますよね。でも、この番組はそういうものに対するカウンターでありたいと思って作り始めているので。
毎回人は死ぬし、医者も自分のためにしか手術しないとか、腕を磨きたいとか、認められたいとか、そういう理屈でしか頑張らない人ばかり。ですからもう、視聴者の方々に受け入れてもらえるか常に不安でした。「自分が好きなことをやっているんだから視聴率が悪かったとしても落ち込まないぞ」と、結果が悪かったときに落ち込まないように心の準備をしながら初回放送を待った覚えがあります(笑)。そして毎日たいへんな撮影の連続ですから、せめて関わった人々の世の中での価値を上げるという形で恩を返したい、いつもそう思って番組を作っています。なので、キャストやスタッフのみんなが賞賛されると、自分なりにはそこそこ役割が果たせたかな、と。そういう意味での安堵です。
3rdシーズンは、1st、2ndとは全く異なる構図となりましたが、どういったことを伝えたかったのでしょうか?
人として成熟した彼らが、他者とどう関わっていくか、ということですかね。1stシーズンでは、彼らはひたすら自分のために医者をやっています。むしろ周りの同期たちを出し抜きたいとすら思っています。2ndシーズンでは、ある程度、自信が出てきた彼らの姿を描きました。それらを経て、3rdシーズンでは、誰かのために医者でありたいとか、そもそも自分の人生を誰かのために使いたいとか、人との関わりの中で自分はどうあるべきかということを模索する彼らにしたいなと思いました。そうなると、当然恋愛も生まれてきますし、それぞれがお互いの問題に干渉し合うとか、悩みを2~3人で話し合うとか、そういう構図を今回は見せたかったんです。
印象深いシーンはどこでしたか?
毎回それなりの数のメッセージを盛り込んでいるつもりなんですけど、今回自分の中で一番重かったところは、井上先生(滝藤賢一)に言わせた移植医療の考え方のシーンでしょうか。「誰かが死に、誰かが生きる。それが移植医療だ」というところなんですけど、リサーチしていて本当にそう思ったんですよね。臓器提供というのは尊い行為ですが、将来、臓器提供者になりたいと思って生きている人は一人もいません。臓器提供する人とその家族はすべからく厳しく、切ない決断をしています。心臓の移植など、誰かを助けるための医療であるのに、その一方で必ず誰かが死んでいるというのは、どう受けとめていいのか分かりませんでした。橘(椎名桔平)の気持ちはまさにその代弁です。「うちの子助かってヤッター!」とは素直に思えませんよね。これは、今までの「コード・ブルー」になかった要素です。それをどう表現したらいいのかすごく悩んだあげく、「誰かが死に、誰かが生きる。それが移植医療だ」というせりふになりました。そのせりふの前にシニカルに、今となっては、これは皮肉が過ぎたかなと思っているんですけど、「臓器提供した彼は、誰かの一部になって生き続ける。そんなのきれいごとだよな」と言わせているんですね。子供を亡くした親で、割り切って考えられる人は一人もいなくて。最後、そう気持ちの整理をつける可能性はもちろんありますけど、普通に生きていてくれている方がよっぽどいいし、誰も臓器提供者になるために人生があったなんて思えない。やっぱり誰かが死んだことで誰かが生きているというのが移植医療の真理というか、動かしようのない事実だと思ったんです。
移植医療のシーンも丁寧に描かれていましたね
あのシーンは、日本のドラマでは一度もやってないと思います。お医者さんが20人も30人もいて、一人の脳死の少年から臓器を取り出す手術をする場面は、僕は写真で見せていただいたに過ぎませんが、それでも衝撃でした。臓器の行き先が書かれた6行の書類も、実物を見せていただいたんですが、そのときの感情は私の人生で一度も味わったことのないものでした。一つの命が失われたことと、それによって6人の人が生きるという事実が極めて簡潔に書かれた書類でした。しかし、そのわずか6行の文章に途方もない想いが込められているなと思ったとき、思わず胸がつまり、適切な言葉が見つかりませんでした。その時の気持ちを視聴者の皆さんに少しでも伝えることができていればいいな、と思って脚本作りをしました。
主要キャストの山下智久さん、新垣結衣さん、戸田恵梨香さん、比嘉愛未さん、浅利陽介さんの5人も、7年ぶりの集結ということで大きな話題になりました。みなさんの成長や変化は感じられましたか?
5人とは年に1回くらい会っているのですが、普段の彼らはそんなに変わった気はしません。1stシーズンの頃からみんな大人でしたから。今も変わらず、礼儀正しくて気のいいキャストたちです。今回7年ぶりに現場に集まっても、元々みんなマイペースなので、久しぶりだからどうだというのはありませんでした。初めて会ったときからあの感じでしたし、多分、1stの初日の雰囲気とそんな変わらない(笑)。監督とも「バランスのいい5人だよね」って、いつも話してます。
お芝居に関してはいかがでしょう
これは変わりましたね! 全員、元々あの当時でも同世代では抜きん出た人たちではありましたけど、もうある熟練の域に達する芝居をするようになったなと。ちょっと怖いくらい(笑)。5話で藍沢(山下)が藤川(浅利)を慰めるシーンも、8話で感染症を疑われた緋山(戸田)を白石(新垣)が励ますシーンも、きっとこういうシーンになるだろうな…と思いながら台本を作ってはいるんですけど、画がそれを越えてくるんです。「本が負けてるな」と思う程の芝居をしてくる。みんなうまくなったなと思います。
比嘉さん演じる冴島は、前シーズンに続いて悲劇に見舞われてしまうことに反響がありました
彼女にいろんな過酷なことが起こるのは、人生プラマイゼロじゃないですけど、できる人ほどいろいろと大変なことが起きるんだろうなと思うからです。彼女は美人で実直で仕事もできるうえに、上司からも評価されている。でも、神様は簡単には幸せにさせてくれないというか、成功させてくれないと思うんですよ。試練というのは乗り越えられる人に与えられるというきれいごとではなく、全然乗り越えられない試練もあるよね、そっちが現実だよねということを念頭に物語を作っています。
有岡大貴さん、成田凌さん、新木優子さん、馬場ふみかさんら、今回から加入した4人はいかがでしたか?
この番組中にもどんどんお芝居が上達していくので驚きました。もちろん、最初からある水準​は越えている人たちではありましたけど、あっという間に上手になっていきました。それだけこの現場が過酷なのかもしれません。1話、5話、10話とそれぞれ見ていただくと、彼らが急成長を遂げていることをご覧いただけると思います。
新加入の4人を見て、昔の5人を思い出すことはありますか?
あえて比較すれば、あの4人はのびのびやっているなと思います。5人は当時、番組を背負って演じていたので、計り知れない重さの責任を感じていた思います。今回の4人は、先輩たちの胸を借りるつもりで入ってきているので、すごくのびのび自分を試している気がして、それはそれでほほえましいなと。先輩5人も頼られることへの喜びを感じているようで、そういう構図は素敵だなと思いました。
最後に、’18年公開の映画化に向けたお気持ちをお聞かせください
一言で「ここを見てください」とは言いづらいところだらけです(笑)。もちろん、これまでのシーズンを見てこなかった方が見ても、十分ドキドキして感動してってできるようなものになっています。1st、2nd、3rdでも相当大きなことやってきていますけど、それを上回る映像的ダイナミズムをお届けできる自信があります。それと、これまで見てきてくださった方には、随所にクスリと笑えたり、ほろりと泣ける要素を散りばめていますので、本当に2回、3回と見てもらいたいです。それぐらい御覧いただいても耐えうるものにするという自負と覚悟で撮影に臨みますので、ご期待ください。
コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜 3rd season

コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜 3rd season

「ドクターヘリ」をテーマにした人気シリーズの第3弾。フライトドクター候補生だった耕作(山下智久)らが一人前の医師・看護師として救急救命の最前線で活躍する姿を描く。10年以上のキャリアを積んだ耕作らは、自分の人生と向き合い始める。また、多くの人命を救うために後進の育成が不可欠だという課題に直面する。

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