「僕の場合は“勘違い”ができない人生だった」
――リスナーからお笑い芸人になるまでは相当の思いがない限り、難しい道のりだと思います。
お笑い芸人を目指す方々って、往々にしてどこかで勘違いする瞬間、たとえばクラスで一番面白かったり、ボソボソと発言して爆笑をかっさらうセンスがあったり、地元のオモシロ集団に属していたり…と、そういうことがあると思うんですよ。でも、僕の場合は一切そういう勘違いをできずに、学生時代を暗く過ごしてきました。
僕は勉強もスポーツもできなくて、得意なものが何一つなかったんです。ラジオと数冊の本(たとえばヘルマン・ヘッセの「車輪の下」など)しか心の拠り所がありませんでした。だから、あまり自己主張をしてこなくて、僕の人生なのに、まるで僕を管理している大人たちに決定権があるみたいに、ずっと親や先生など誰かが良しとする方向にしか歩んでこなかったんですよね。
そういう人生だなと半ば諦めてはいたのですが、高校3年生の夏に進路決定の三者面談があって、将来に対する意思を表明しなければいけないというタイミングが訪れました。そこで、僕は初めて「お笑いをやりたい」と口にしたんです。やっぱり、すごく止められましたね。よく考えたら、めちゃくちゃ口数の少ない暗いやつが、初めて意思表示をしたと思ったら、「芸人になりたい」ってわけわからないことを言い出したんだから、そりゃ止めるだろって感じなんですけど(笑)。
でも、当時の僕にしたら、自分の意思を表明したらみんな止めるんだなって、変に鬱屈した受け取り方をしてしまって。だけど、他の職業に就くというモチベーションも全く持てなかったので、本当に苦しかったです。それで、大学に行けば、モラトリアムじゃないですけど、あと4年、人生の選択をする時間をもらえるんだなと思い、進学しました。
面白いことを考えたり作ったりすることが好きだったので、高校生のとき初めてコントのネタを書いて、誰かと一緒に人前でやることを体験したのですが、やっぱり楽しい世界だなと思って、大学生になってもずっと続けていました。一方で、ラジオに関わる仕事をやりたいとも思っていたので、当時、誰にも聴かせない僕だけのラジオ番組をカセットテープに録っていたんですよ。
――番組タイトルとかあったんですか?
あぁ~何だったかな……? タイトルは思い出せないのですが、曲紹介をしたりして、深夜放送の体でやってた記憶があります(笑)。ラジオ番組もお笑いのネタを書くのと同じで、憧れているものに対してアウトプットしたいという思いだったんですよね。そういうことをしながら大学生活を送り、卒業したら、もう22歳で。成人もしてるし、自分がやりたいことを親に止められようが、自らの意志を貫くことができる状況になっていたので、実家を出て、今の相方である岸(学)とコンビを組み、本格的にお笑い芸人として活動を開始しました。
11月12日(木) 発売
本体価格980円、定価1,078円(税込み)
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