「朝ドラ史上最低の父」トータス松本“テルヲ”に視線集中!ヒロイン輝かせる“ダメ父”の歴史を振り返る
朝ドラは“ダメ父”がいるからこそヒロインが奮起できる
朝ドラのお父さんはたいていダメ人間。悪というよりはダメなひとが少なくない。
たとえば、「スカーレット」(2019年度後期)でのお父さん(北村一輝)は働いても働いても暮らしが上向かない。お金がないのに他人にはいい顔をしてしまうお人好しで、家族に迷惑をかける。娘(戸田恵梨香)が学校に行きたいと思っても勉強なんて必要ないと奉公に出す。
「まれ」(2015年度前期)のお父さん(大泉洋)は、夢ばかり見て地に足がついていないタイプで、何度も仕事に失敗し借金をつくってしまう。
「純と愛」(2012年度後期)のお父さん(武田鉄矢)は頑固で非情。「カーネーション」(2011年度後期)のお父さん(小林薫)は男尊女卑で、仕事ができないにもかかわらず威張っている。そんなだから彼らの娘であるヒロインは苦労する。
言い替えれば、お父さんがダメなことでヒロインが奮起することができるのだ。
朝ドラはもともと“女性が活躍するドラマ”なので、お父さんという男性を乗り越えることで女性が自由に羽ばたくという物語としてわかりやすい構造をつくることができる。そのため、お父さんがいつもかわいそうなくらい尊敬できない人物になってしまう。
もしくは尊敬できるお父さんの場合、「とと姉ちゃん」(2016年度前期)の勤勉なお父さん(西島秀俊)や「なつぞら」(2019年度前期)の家族想いのお父さん(内村光良)のように早くに亡くなってしまう。
いい人でもだめな人でも朝ドラのお父さんはたいてい、成功からかけ離れたちょっとかわいそうな存在だ。
現在、再放送中の「花子とアン」(2014年度前期)のお父さん(伊原剛志)は、出稼ぎでほとんど家にいない。家族は貧しいまままではあるが、教育の大切さを知っている。でも先進的過ぎて社会運動に巻き込まれてしまう。
「なつぞら」の義父(藤木直人)は勉強好きで性格は温厚だが婿養子のため妻に頭があがらない。
朝ドラ絶対王者「おしん」(1983年度)のお父さん(伊藤四朗)も妻子を働かせて当然というふうだが、家を守るためという必死さと苦悩があった。
どんなに困ったお父さんでも、それには彼らなりの事情があって、社会のなかでそうならざるを得ないのである。