まず、金魚は追いかけるだけではなくて待つ。焦って追いかけるとポイが破れてしまうので、金魚がポイに乗ってくるまで静かに動かずにいる感覚だ。
松也は「つまり、すくうとは待つことであり、香芝は金魚すくいを通してそれに気付いたのでしょう。自分の理想や自分の考えにこだわって突き進みがちですが、冷静になって立ち止まり、どうするべきか考えることが必要だったのです。これは恋愛にも友情にも言える普遍的なことだと思います。そう思って演じました」と、金魚すくいから多くを学んだようだ。
また、ポイが破れたら終わりではなく、破れてからどうするかも金魚すくいの面白さの一つ。特に競技では破れても気にせずに、少しでも残っている部分ですくい続ける。それは、出世競争に“敗れた”香芝が、この後どうするか、“破れる”と“敗れる”、金魚を“掬う”ことで、人生を見つめ直し自らを“救う”、そんなダブルミーニングから導かれる展開も興味深い。
あわせて解禁された場面写真では、金魚売り・王寺昇(柿澤勇人)の車に乗りながらも白けた表情の香芝、寂しそうに部屋で“小赤”を見つめる香芝、真剣な表情で破れたポイを持つ香芝など、“金魚すくい”と関わってだんだんと変わっていく彼の姿が切り取られている。
金魚すくいでよくみかける金魚が小赤だ。観賞用からはじかれたものなのだと吉乃から聞いた香芝は、「君たちも脱落者か」と自分自身と重ねてしまう。が、そんな小赤も飼い方次第で大きく育ち、何十年も生きるものもいる。左遷の地で人生と恋の荒波にもまれる香芝は果たしてすくわれるのか?
3月12日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
出演:尾上松也 百田夏菜子 柿澤勇人 石田ニコル ほか
原作:大谷紀子「すくってごらん」(講談社「BE LOVE」所載)
監督:真壁幸紀
脚本:土城温美
音楽:鈴木大輔
主題歌:生駒吉乃(Vo.百田夏菜子)「赤い幻夜」(EVIL LINE RECORDS)
製作幹事・企画:東通企画
制作プロダクション:ROBOT
製作:映画「すくってごらん」製作委員会
配給:ギグリーボックス
公式サイト:https://sukuttegoran.com/
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