「無」になりどんな状況にも対応できる
本番中、常に状況が変化し、指示が飛んでくるバラエティ番組でデビュー以来鍛えられた香取ならではだろう。視聴者からの質問に「うーん…」と考え、生放送で長い沈黙ができてしまっても「こういう間とかも平気でいることが、すごい楽しくなっちゃって」(同)と笑ってしまえるのが香取慎吾なのだ。
「香取さんは僕がこういうことをやってほしいとお願いした時に、『それはどういうことですか』とか『なぜそれをやらなきゃいけないんですか』みたいなプロセスが一切ない。今回も僕が現場でセリフを足したり、削ったりすることもあるんですけど、瞬時に理解してくれる」(「AERA」2020年4月13日号)と三谷は語る。
おそらく香取慎吾は、いい意味で「無」になっているのだろう。だからこそ、どんな状況にも対応できてしまう。
イノセントな存在を独特のリアリティで演じきる
俳優として彼が最初に注目されたのは1995年だろう。「沙粧妙子-最後の事件-」(フジテレビ系)では、小指の爪を剥ぐ猟奇殺人犯を演じ、「未成年」(TBS系)では、知的障害者のデクを演じた。まったく方向性は違うものの、いずれもある種、イノセントな存在を独特のリアリティで演じきったのだ。
翌年の「ドク」(フジテレビ系)でその路線を極めると、三谷と組んだ「合い言葉は勇気」(2000年、フジテレビ系)や前述の「HR」、「人にやさしく」(2002年、フジテレビ系)などで等身大の役柄を好演。さらに三谷による大河ドラマ「新選組!」(2004年、NHK総合ほか)で主人公・近藤勇を演じ、俳優・香取慎吾の凄みを知らしめた。