「おちょやん」千代&寛治“母子の絆”が感動を呼ぶ 「なつぞら」「エール」でも描かれた“血縁超えた家族”を振り返る
戦前や高度経済成長期にも養子が
戦争とは関係なく養子をとる場合もある。「マッサン」(2014年度後期)のヒロイン・エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)は流産し、そのあとエマ(木南晴夏)を引き取る。
「ひよっこ」(2017年度前期)は高度経済成長期の物語だが、ヒロインみね子(有村架純)が働く洋食店・すずふり亭の近所の中華店を営む夫婦(光石研と生田智子)が養子をもらう。
また、「エール」の主人公・裕一(窪田正孝)が親戚の家に養子に出されそうになるエピソードもあった。大事なのは“家”であり、家を継ぐために子どもを生み育てる。だから、子どものない家は、親戚の子や血の繋がらない子を引き取って家を継がせることもあるのが当たり前だったことも朝ドラは時々描いているし、家に関係なく、親のない子に手を差し伸べる人たちの姿も描いている。
“朝ドラ=ホームドラマ”としての楽しくあたたかい家庭が描かれる印象も強いけれど、家族の形はひとつではない。別視点で映し出すことが朝ドラにはあって興味深い。
親も子もそろって孤独な「おちょやん」
「おちょやん」では千代も一平も親の愛情に恵まれていない。そのふたりが結婚し、「家庭劇」という劇団を作り、お芝居のうえで「家庭」の形を模索していく。彼らが上演するお芝居では、泣ける家族愛が展開し、舞台を下りた現実は、どこか乾いた風が吹いているのだ。
今回、天涯孤独の寛治が加わって、三人そろって“孤独”というなかなかハードボイルドな家族となった。戦後、親が戦争で亡くなって孤児になったケースに限ったことでなく、現代はあらゆることに多様性が認められる時代。
家族だって、血の繋がっている者同士ではない結びつきの可能性がある。たくさんの人が見る朝ドラはさまざまな家族の形を描くトップランナーであってほしい。