TBS系ドラマ「俺の家の話」が、第107回ドラマアカデミー賞で監督賞に選ばれた。金子文紀監督は本作で受賞11回目、山室大輔監督は6回目、福田亮介監督は初受賞となる。
西田敏行さんの歌を聞いたときには、みんなで泣きました(福田D)
――「俺の家の話」で、監督賞を受賞した感想を教えていただけますか。
金子:ありがとうございます。僕は宮藤官九郎さんの作品を中心に何度かいただいてきたけれど(※今回で11回目)、今回が一番うれしいです。主演の長瀬智也くんとも「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)以来、20年間で5作品で組んできて、ここがひとつの区切りであり集大成という思いもありました。
山室:能やプロレスの知識がないところからそれをどうドラマに落とし込むか…というのは大変でしたが、現場にはこれまで皆さんが積み重ねてきたものがあって、僕はただ芝居を丁寧に撮っていけばよいという感じでしたね。楽しい仕事だったので、評価されてうれしいです。
福田:僕は初受賞ですが、演出回(第5話、第6話、第9話)はプロレスも能楽のシーンもあまりなく、金子さん、山室さんの苦労とは真逆。第6話の“潤 沢”のステージなど、ひたすら楽しく撮っていたら賞をもらったという感じで、本当にいいのかなと思います(笑)。
金子:ラブコメ作品では、自分とは無縁の胸キュンを一生懸命考えながら演出しますが、親の介護という題材は僕の年代にとって切実なものでした。これまでのようにトリッキーな演出や目を引く表現ではなく、オーソドックスな見せ方をした中で、芝居やテーマという本質的なところを評価してもらえたのは大きな励み、自信になりました。
――親の介護をテーマとしたホームドラマであり、プロレスや能のパフォーマンスもあり、たくさんの要素がありましたが、特に苦労されたシーンはどこでしょうか。
山室:クランクイン前に金子さんが用意してくれた大量の能とプロレスの資料を読むことから始まって、「こんなにカロリーの高いドラマってあるのか」と思いましたね。特に第3話、「新作能 私の家の話」という劇中劇は、「台本に書いてある“新作能”ってなんだ?」という状態から、どうにか能の様式でシーンを作り上げるところまで、とにかく大変なことに(笑)。役者さんたちはかなりの稽古をしていました。
福田:第6話で長瀬さん、桐谷健太さん、永山絢斗さんと阿部サダヲさんが“潤 沢”というグループに扮(ふん)してスパリゾートハワイアンズで歌う場面は、実際のポリネシアンショーの合間に撮らなければならなかったので時間がなく、本番で長瀬さんたちはミスできないので大変だったと思います。でも、絢斗くん以外は全員、紅白歌合戦出場歌手ですし、皆さんさすがでした。カメラリハーサルで西田敏行さんの歌を聞いたときには、みんなで泣きました。
金子:僕はやっぱり、第1話のファーストシーンからの一連ですね。長瀬くん演じる寿一がプロレスの試合に出ながら、父親との関係を振り返る。最初の10分は勝負ですし、台本30ページぐらいあるお芝居がほとんど無い長い紹介のシークエンスをどう見せるかが難しかったです。
結局、プロレスと能をちゃんと見せるしかなく、そこは長瀬くんが作り上げた体が真実味を出してくれたことで、助けられました。長瀬くんを始め、俳優さんは皆さん上手いから、NGも出ないし「もっとこうして」とお願いしたらぴたっと合わせてくれる。演出としては、“何をリクエストするか”しっかり考えておかなければなりませんでした。
TCエンタテインメント
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