これで終わっちゃうなんてことは絶対にないだろうと勝手に思っています(金子D)
――長瀬さんの演技で、感情表現についてはいかがでしたか。
金子:このドラマは、“親の介護”という40代以上の人だと多くが経験することを描くので、リアリティーが肝心。それから寿一が家出して25年間も実家にいっさい連絡しなかったというのは、相当なことですよね。そこのリアリティーも無視できない。クランクイン前、その部分について、寿一はどういう人なのか?どう見せていくのか?長瀬くんと話しました。
僕が「感情表現をオーバーにせず、42歳らしい落ち着きがあったほうがいいね」と話すと、長瀬くんもそう思っていたそうで…。要所で感情を見せる場面がありつつも抑えめにして、最終話で「(父に)褒められちゃった」と言う場面がクライマックスです。
“褒められなかった”ということが、寿一と寿三郎に残された最大のテーマで、寿一は褒められたとき、どういう顔をするのか。そこは「泣かないでやろう」と長瀬くんと話していたけれど、カメラリハーサルで長瀬くんの目に涙がにじんでいるのを見て、こちらも泣けてきて…結局、こちらがぼろ泣きです。最高の演技を幸せな思いで撮影しました。
――クランクアップは、最終話のオープニング、観山家の家族が食卓を囲む場面だったそうですね。
金子:そうです。まず、“寿一が家族の中にいる”カットを撮影し、次に同じアングルで“寿一抜き”のカットを撮る。それを10パターンぐらい繰り返しました。でも、最後は長瀬くんが家族の中にいるところで終わりたくて、そこだけは入れ替えました。
そうして撮り終えた後、長瀬くんは座長として最後のあいさつをちゃんとしてくれましたが、僕は泣きそうになっていたので、内容をよく憶えていない(笑)。もちろん、さびしい気持ちはあるけれど、これだけドラマのことを考え、愛情をもって全力をかけてくれた彼だから、これで終わっちゃうなんてことは絶対にないだろうと勝手に思っています。
(取材・文=小田慶子)
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