変更したところは「“父”という言葉を入れない」
――2カ所変えられた部分はどこですか?
ヒグチ:一つは、“父”という言葉を入れないというところですね。私は限定させた方がいいんじゃないかと思って入れていたんですけど、そうではなくて家族の話だったり、恋人の話だったり、夫婦の話だったり、いろいろな大切な人を思い浮かべられる曲の方がいいと提案されました。私も言われると思わなかったのでびっくりしました。
祖父江P:それもさじ加減なんですが、あまり寄せすぎない方がいいなと思っていました。アニメだったら、キャラクターの名前とか技の名前を入れてがっつり世界観に寄せた方がいいと思うんです。
でも、ドラマは視聴者が部分的に自分に置き換えて見ることが多いと思います。この作品では父と娘の話でしたが、お父さんをお母さんに置き換える人もいれば、娘を息子に置き換える人もいると思います。なので、置き換えた時に父と娘の物語を強く押し出すよりは、ゆるく何かに置き換える世界観や、歌詞にしておいた方がいいなと思って、その修正をお願いしました。
ヒグチ:結局、それがよかった気がしています。もう一つは、最後の「事実だから」の「事実」も、初めはもう少しやわらかい表現がいいと言われたんです。
祖父江P:事実って漢字で書くと固い印象になりますからね。
ヒグチ:事実って言葉もそんなに歌の歌詞で使う言葉ではないので、少し悩みもあったんですけど、「ヒグチさんの中で特別な理由があるんだったら」と言われて、変えないことにしました。
別に家族のことを好きでも嫌いでもいいけど、親がいて自分がいる、自分がいて親がいるという事実があると伝えたかったので変更していません。
――曲調がポップで軽快、カントリー調なものになった理由についてお聞かせください。
ヒグチ:どうしてなんでしょうね…。自分でもわからなくて(笑)。
祖父江P:もともとカントリーっぽいものはお好きだった、とどこかで聞きしました。
ヒグチ:そうですね。もともと好きではあったんですけど、明るい曲と少しシリアスな曲と、どっちも出してみようというのはありました。どっちのパターンなのかを反応で決めるようにいつも考えていて。ドラマのタイアップでなくてCMだったとしても、いくつか出しておいた方が正解を導きやすいじゃないですか。1曲だけで勝負すると「その曲じゃないんですよね」って言われた時に、答えは無限じゃないですか。だけど、2曲だと「こっちの方が方向にあっているかも」と言われるのもあって、自分の中で方向性が絞りやすいです。
なので、軽いのと少しシリアスなものとで出したという感じです。どこから出てきたのかと言われると、もちろん私からなんですけど、ちょっと制作面の効率も考えました。
――番組側は、シリアスな曲にする予定とかはなかったんですか?
祖父江P:どんなものかは上がってきてから決めようと思っていたんですけど、さっきも言った通り「東京」「東京にて」のイメージでいました。もちろん、そういう曲も来たんですけど、1曲異色のものが混ざっていて、山戸監督が「これがいいです」と言ったのでスッと決まりました。
ヒグチ:私も前もって(そのイメージを)聞いていたので、「東京」「東京にて」に近い曲ももちろん出していました。でも、こうなることってよくありますよね。
祖父江P:実際上がってみたら、想定していた方向と違うっていうのはありますね。結果が良ければいいので(笑)。ドラマの絵面と雰囲気はしっとりとしたもので終わって、エンディングではポンと切り替わって明るい曲で明るい絵がくるのは、ドラマの後味という意味で本当に良くなっています。
ヒグチ:山戸監督は全体を見て、「こういう気持ちで土曜日を迎えてほしい」と考えて選んでくれたと思うと技量がすごいと思いました。
毎週金曜深夜0:12-0:52ほか
テレビ東京系で放送
【公式HP】https://www.tv-tokyo.co.jp/ikirutoka/
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