第1話は一気飲みを強要する青田(浅香航大)が主人公
何がそこまで怖いのかというと、酒におぼれてしまい人生がどうしようもなくなっている人が題材ではなく、普段はまともな人間が、お酒によってみるみる崩れていくさまにゾっとするのである。
第1話ならば、主人公・青田(浅香航大)がその人。営業部実績ナンバー1のデキる社員である青田は、クライアントとの会食では部下にシャンパンの一気飲みを強要するのが日常茶飯事。自分が出来ることは他人も出来ると思い込んでいるところがあり、若い頃、同じように上司から教わってきた方法で、仕事を勝ち取ってきた。その態度が“パワハラ”だと言われても聞く耳を持たない青田だが、人事部からHate Alcohol Firm・酒野の講義を受けるよう言われ、“酒癖の悪い50人”の1人に選ばれるのである。
第1話以降は、ストレスから酒に逃げる下野(前野朋哉/第2話)、口山(犬飼貴丈/第3話)、色川(しずる・村上純/第4話)ら、酒で人生を壊していく社員らが主人公となっていく。
酒の匂いで酔いそうになるほどズシリ…
接待飲み会のシーンでは、仕事をしっかりこなしたい青田のまっすぐな一面と、飲めない人にも一気飲みを強要し、ボトルごとガブ飲みさせる迷惑な姿が混在しており、人間の弱さが浮き彫りになる。お酒の甘ったるい香りと、飲み屋街の汚れた便所の匂いが混ざったような気持ち悪さが画面からにじみ出てくる錯覚すら起きて、見ているだけで酔っ払いそうだった。
浅香航大演じる青田の狂気に満ちた顔も忘れられない。アルコール度数の強いテキーラを飲んで、飲ませて、自分もへべれけに酔っていながら、一方で内心考えていることがあるという難しい演技だったと思うが、「この人とは一緒に飲みたくない…」と思わせる嫌な役を演じ切っていた。
酒野の謎に包まれたキャラクターも不気味で、「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造のよう。演じる小出は「テーマとしても自分をインスパイアするものもあり、受け入れて向き合うことで、より大きな意味で挑戦・成長したいという覚悟を持って臨みました。人生、生きていて、綺麗ごとだけじゃない。自分の体を通して学んだし、経験したからこそ、本作を通して表現に昇華できる機会をもらえたのは大変有難かったです」と語っている。
Hate Alcohol Firmという妙な組織から呼び出しを食らうような飲み方は、今後、絶対にしないぞと肝に銘じたくなる教訓めいた後味もある。自動車教習所で免許更新の際に視聴する、生々しい交通事故のビデオを見たときのように、ズシリと重たい気分を味わうことになるだろう。
題材も演じる側もチャレンジ精神に満ちている。たまにこうして、目をそらさずに見られるか試されているようなパンチの効いた作品との出会いがあるからこそ、“エンタメは面白い”と再認識するドラマだ。
文=中田蜜柑