岐阜弁、赤信号、踏切…切な過ぎる演出の妙
悲し過ぎる再会だった。
ラストで優に動画とともに送られたメールで呼び出された梨央は、9年ぶりに最愛の弟に会うことができた。だが、「一生会わんつもりやった」「やったのは俺なんや」という優の言葉が悲しく響いた。
また、捜査中に情報屋と遭遇し、追い掛けるも踏切で逃げられた大輝。その直後に非通知でかかってきた携帯電話に出ると、“情報屋”の男から部屋のパソコンに保存されている動画を教えられるのだが、その電話の最後で男は大輝のことを「大ちゃん」と呼んだ。自分のことをそう呼び、動画に映った手の傷から大輝は悟る。
梨央と大輝がそれぞれ優と再会するシーンには、それまでの演出の妙があった。優が梨央と話したときの岐阜弁は、会社でつらい立場にある梨央が大輝を呼び出したときにも交わされた。そのとき、梨央も大輝を「大ちゃん」と呼んだ。それは赤信号を待つときのことで、その一瞬だけ大輝の胸に飛び込んで涙した梨央だが大輝は抱き締め返すことができず、青信号に変わると二人はまた刑事と重要参考人として歩きだした。信号によって止められた梨央と大輝の時間と距離、大輝と優の踏切で遮断された距離と見つめ合う時間。それらが積み重ねられてきたことで、物語がより深く心に残った。
さて、優が明らかにした昭に関する動画だが、首を絞めて池に落ちるところはあってもそれが致命傷になったかははっきりしない。15年前の康介に関する動画と同じように。まだ隠された真実がありそうだ。
フリーライターのしおり(田中みな実)が大学時代に休学していることも明かされ、それが“15年前”ということも気になる。物語はまだ中盤に差し掛かるところで、衝撃の事実が明かされても、さらに謎が浮かび、考察して突き止めたくなる面白さで視聴者を魅了し続けている。
第5話は11月12日(金)に放送される。大輝は15年前に大麻事件を起こした元陸上部員の長嶋(金井成大)のもとを訪ね、事件当夜に関して重要な証言を得る。真田グループの情報をかぎ回るしおりについて調査する加瀬は、後藤との接点を突き止める。そして、9年ぶりに優と語り合った梨央は、大胆な行動に出るのだった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部