磯村勇斗、初参加の唐十郎作品で宮沢りえらと共演「唐さんの世界とお客さまの世界をつなぐのが僕たちの役目」
金守珍(演出)
まずはBunkamuraシアターコクーンでの唐作「泥人魚」は、公演成功間違いなしと確信しています! なぜながらば、台本の素晴らしさはもちろんのこと、キャスティングが完璧なので、悩むところなく演出をすることができました。
特に宮沢りえさんや六平直政氏からの豊富なアイデアにも助けられ、とても楽しい、笑いの絶えない稽古場でした。
見どころは、風間杜夫氏演じる劇詩人の作るユーモアな世界と宮沢・磯村両コンビの演じるピュアな世界が相待って表現される、唐ワールドのたとえようのない美しさです。
また、蜷川幸雄師匠からの「幕開き3分勝負!」も実行しています。コロナ禍で鬱屈(うっくつ)した毎日が続いていますが、それらを洗い流してくれる聖水をぜひ浴びに来てください!
宮沢りえ(やすみ役)
金さんをはじめ、キャスト、スタッフのみんなが、唐さんの戯曲を、言葉を握りしめ突き進んできた稽古を経て、ついに皆さんの前でお披露目する時が来たことに緊張と興奮が溢れています。
劇場という空間に見に来てくださった皆さんの心の中を泳げるよう、千秋楽まで心震わせ惜しみなく頑張ります!
磯村勇斗(浦上蛍一役)
本番が始まってようやくこの作品が見えてくる気がします。もちろん稽古場でお客さまに楽しんでいただけるところまでは作り上げていますが、幕が上がった後は皆さんと共に日々変化を遂げる作品だと感じています。
唐さんの世界とお客さまの世界をつなぐのが僕たちの役目なので、見てくださる方の空気を感じながら出演者一同楽しんでお届けしたいと思います。
夢の中のようなファンタジーの世界へと導かれたと思ったら、突然現実を突きつけられる。それはまるで長崎の「ギロチン堤防」のように。物語が急変する。その波が行ったり来たりと舞台上を駆け回る中、でもそこには唐さんの描く「美しさ」「純粋さ」が波飛沫となってお客さまの心に届くのではないかと思います。
愛希れいか(月影小夜子役)
約1カ月のお稽古でたくさんたくさん悩みました。正直、まだまだお稽古が足りない…と思ってしまいますが、皆さんと切磋琢磨した時間を信じて、舞台に立ちたいと思います。
この作品は、言葉ではうまく表現できないので…ぜひ劇場に体感しに来ていただきたいです!! そして、舞台を見て少しでも皆さまに元気になっていただきたいです。
心に響く舞台になるよう、全身全霊を捧げます! どうぞよろしくお願い致します。
風間杜夫(伊藤静雄役)
稽古は、怒涛のような日々だった。唐十郎の世界を誰よりも美しく感動的に伝道したいと、全身全霊で舵を取る金守珍の姿が、役者たちを引きつけてひとときも離さなかった。
その金さんの目指す高みにみんなが食らいついて、瞬く間に表現が豊かになっていく様は、役者として肝になるところの自由と開放を得たのではないかと思える。
作品の全編が見どころと言うしかないだろう。幕が上がってから降りるまでのあらゆる瞬間が、刺激に満ち満ちている。お客さまには、アングラと呼ばれる部隊の真髄を見ていただきたい。その演劇的興奮が、生命力になることを信じて疑わない。
◆取材・文=田中隆信
宝塚クリエイティブアーツ