閉じる

セクシー女優から俳優の道へ進む川上なな実、大切にするのは「自分が選んで、その先をプラスにする」という信念

2022/01/18 17:50

川上なな実
川上なな実

「“依存”の魔法が解けた瞬間」の気持ちも明かす


――小説を読んでみるとかなりハードな人生を送られてきたんだなと感じましたが、明るいキャラクターの“川上奈々美”として振る舞うのは大変だったのでは。

特に恵比寿マスカッツ加入後に一番ハードな時期があって、総合演出のマッコイ(斉藤)さんからは「モンスター」って呼ばれました。みんなの前でいる時は自分が理想としている自分になるように頑張っていて、見れば分かるくらい目に力が入り過ぎていて…自分で自分が怖かった時もありました。無意識に、ハードな人生の裏側で「意地でも幸せになってやる」って気持ちが表れてたんだと思う。どうしようもない葛藤を自分で作り上げて、周りの目を気にしたり比べたりしてしまったけど、結局一番の敵は自分で。

同じ女優さんたちの中にも自己肯定感の低い子が多くて、今の私なら「もったいない!」と思えるんだけど…高めることって難しいですよね。でも低かったからこそ、この業界で居場所を作ってもらって救われたし、その先を良い形にできるかどうかが大切だと思うんです。

こんな話していいのかな、私自身でいえば、撮影にある種“依存”していて、1カ月に1回の撮影が楽しくて、人肌を味わえて爆発できるし甘えられる時間でした。でも、昨年9月の撮影を1回飛ばしてしまったんです。

浅草ロック座公演の後、休みなく撮影に臨んで疲弊していたこともあって。「引退を決めた女優さんはそういうスランプが起きるものだから大丈夫だよ」って周囲にフォローいただいたんですけど、次の目標が決まっていると、撮影での行為に「今私何やってんだろう」って俯瞰の目で見てしまって。そう考えてしまうくらい、クリエイティブでもあると同時に、私たちの撮影はセンシティブでもあるなと思います。

私は極端な性格で、“依存”の魔法が解けた瞬間「触れてくれるな」って気持ちになってしまったんですよね。その理由は、愛し愛される人ができたからでした。「私に触れてくれるのは現場で接するこの人しかいない」って思わなくてもいいんだって。大切な相手がいることは、私にとって自己肯定感が上がった理由でもありました。


――「依存」と「愛」は紙一重にも思えますが、川上さんはどう考えていますか?

依存と愛の違い…自分勝手かそうでないか、なのかな。

私自身、目の前にいる人のことを良くも悪くも真に受けて、心を動かされてきました。それによって自分が悪人にでも善人にでもなるので、それを意識しながら人と関わることにしています。依存はユーモアの範囲内ならいいけど、エゴが出てくると相手も自分も傷つけてしまう。ずっと相手だけ尊重してもダメだし、自分の考えもエゴじゃなく尊重することが大切なんですよね。共存というのかな。

自然との共存もそうですけど、人と共存する時も、自分の心に耳を傾けて尊重しつつ、相手も尊重しつつ、みんな優しくなっていってほしいし、幸せになってほしいなあというのが願いですね。ハッピーな人が増えたらいいな。


自分の考えを大切にして、自信を持つ


――そんな風に前向きに考えられる秘訣みたいなものがあるのでしょうか。

私はずっと自分に対して投げやりだったんです。だから、とりあえず「何でもできます!」って答えるのがカッコいいと思ってた。でも自分を大切にすることは絶対に必要なんです。

好きでもない人と一夜を過ごす話も書いていますが、死ぬわけじゃないのになんでそこでノーって言えなかったのか…それは、みんなに愛されたいけど、愛され方が分かってなかったんです。相手をすべて受け入れれば愛されると思っていた。でもそれは違って、その人に嫌われて仕事がなくなろうと、他にも見てくれている人はたくさんいるし、自分の考えや意見を言うべきで。でも自分の考えがなくて言葉にできなかった。

「自分は面白いことをやっている」と思いながら、自分が考えることやセンスを大切にして、自信を持つのはすごく大切なこと。

たとえば、ドキュメンタリー映画にもおさめていますが、浅草ロック座で行った記者会見のことでロック座の社長と意見が食い違ったことがあったんです。でも自分が信念を持って、何度も言葉を変えて話したら伝わった。その社長は写真展も見に来てくれて、私の好きな牛タンも食べさせてくれて(笑)。「みぃななイズムを持った踊り子さんがたくさんいる。その子たちをこれからも大切にしていこう」「たくさんロック座のことを考えて盛り上げてくれてありがとう」という言葉までいただいてうれしかったです。

お節介やろうだから、後輩たちのことは心配しちゃいますね。だからこそ今後も、日本のストリップ業界を世界に広めつつ、一緒に背負っていきたいと思っています。もう家族のような存在なので、何かあればこれからも盛り上げにいきますし、それは楽日に分かると思います。悲しみのさよならとかじゃなく、旅立ちの引退…“脱ぎ納め”公演なので!


――意味深な表現ですね…楽日の2月28日を楽しみにしています。改めてご自身の人生、ドラマチックだと思いますか?

思います(笑)。我ながらとても面白い人生だと自信を持って言えます。主演かプロデューサーで映画化したいな!

――これからハリウッドデビューやさまざまな映画公開なども控えていますね。今後、“有言実行”しようとしていることを教えてください。

ハリウッドの現場の方と関われたこと、現場にいれたこと、すごく満足しています。でもハリウッドって広いし、私の全力はまだ出せてないと思います。今年は留学して、英語を習得できたら、ハリウッドのエージェント契約をして…というのを考えています。もちろん国内でも活動しますし、商業映画でオファーをもらえるような俳優になりたいです。

まずは、今作っているドキュメンタリー映画をベルリン映画祭に持っていきたいです、それでレッドカーペットを歩きたいですね。今のところ五分五分だと思っています…!

実際に私の役者業が実るのはもう少し先だと思っていて、100歳まで生きるので…40歳くらいで忙しくなっていたらいいな。仕事だけじゃなく、プライベートも大切にして、出産や子育ても経験したい。だから日本の映画業界で、子育てしながら撮影できる環境作りもしていきたいですね。人権を守って、面白い作品を作って、お金を回していけたら一番いいと思う。

同じ人間だし、誰かがやっていることなら自分もできると思っちゃう。ビックマウスなので無理だと思うことってなくて。だったら、一番夢があることを言葉にしていきたいですよね。


――小説を読み、思いを聞き、写真展や写真集でさらけ出している彼女の表情を改めて見ると、女性の葛藤が凝縮された人生の背景に、新たな“光”が見えてくるようだった。そんな彼女の生きざまも透けて見えてくるであろう“脱ぎ納め”引退公演が、2月1日(火)-28日(月)に浅草ロック座で行われる。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

前へ
  • 1
  • 2
次へ
■写真集「すべて光」
1月12日(水)発売⇒詳しくはこちらから(Amazon)
■小説「決めたのは全部、私だった」
1月12日(水)発売⇒詳しくはこちらから(Amazon)
※写真展会場でも先行販売中

■浅草ロック座引退公演「ファイナルストリップツアー」
公演日:2月1日(火)~28日(月)
場所:東京都台東区浅草2丁目10-12

■ドキュメンタリー映画「裸を脱いだ私」
2023年公開予定
すべて光
すべて光
川上なな実 (著), 熊谷直子 (写真)
工パブリック
発売日: 2022/01/12
決めたのは全部、私だった
決めたのは全部、私だった
川上なな実 (著)
工パブリック
発売日: 2022/01/12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

画像一覧
43

  • セクシー女優を引退し、3月1日から俳優業に専念する“川上なな実”
  • 川上なな実
  • 川上なな実
  • 川上なな実
  • 「決めたのは全部、私だった」_タイトル
  • 「決めたのは全部、私だった」_目次
  • 「決めたのは全部、私だった」_第一章『終わった……』
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_006
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_007
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_008
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_009
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_010
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_011
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_012
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_013
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_014
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_015
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_016
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_017
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_018
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_019
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_020
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_021
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_022
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_023
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_024
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_025
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_026
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_027
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_028
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_029
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_030
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_031
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_032
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_033
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_034
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_035
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_036
  • 「決めたのは全部、私だった」_ページ_037
  • 自伝的小説「決めたのは全部、私だった」表紙
  • 自伝的小説「決めたのは全部、私だった」表紙帯あり
  • 写真集「すべて光」
  • 写真集「すべて光」カバー

関連人物

  • No Image

    川上奈々美

  • 「ザテレビジョン」からのプレゼント!

    「ザテレビジョン」からのプレゼント!

  • ザテレビジョン マンガ部まとめ

    SNSでバズった話題のマンガが読み放題!ザテレビジョン マンガ部まとめ

  • 【春アニメまとめ】2024年4月期の新アニメ一覧

    随時更新中!【春アニメまとめ】2024年4月期の新アニメ一覧

  • 推したい!フレッシュFACE

    推したい!フレッシュFACE

  • 【冬アニメまとめ】2024年1月期の新アニメ一覧

    随時更新中!【冬アニメまとめ】2024年1月期の新アニメ一覧

  • 【春ドラマ】2024年4月期の新ドラマまとめ一覧

    随時更新中!【春ドラマ】2024年4月期の新ドラマまとめ一覧

もっと見る