北野篤、菊池桃子と小田さくらのやり取りに感動
――北野さんとつんく♂さんの間であった印象的なやり取りを教えてください。
北野:実は今が初対面です(笑)。企画書は事前にお渡ししていて…。ここで僕からの質問で恐縮なんですが、企画書を見たとき、率直にどう感じましたか?
つんく♂:曲をいじってもらえるとか、エンディングテーマの「I WISH」(2000年)をもう一度焼き直して、今のメッセージとして社会に訴えかけられるのはありがたいです。
北野さんとは「モーニングみそ汁」(2017年)の頃からだから…5、6年前から関わっていて。何だろう。初めて会ったけど、初めて会った気がしないです。
曲を理解してやってくれているということは、おそらく僕の人間の部分も理解して仕事してくれていると思うので、ドラマの話が来たときも「悪いようにはされんやろう」と。そんな安心感の中でお任せしたという感じです。
北野:うれしいですね…。ちなみに、菊池桃子さんが主演というのはどのように感じましたか?
つんく♂:すごくこそばゆいです(笑)。菊池さんが主演をやって、ドラマの中で曲をいじっていること自体、めっちゃ不思議な出来事です。
実は僕と菊池さんは同学年なんですよ。芸能界では大先輩です。中学生の頃から芸能界で戦ってきた菊池さんは、現場の若い女優さんやモーニング娘。たちからしたら、いろんな先輩芸能人の一人かもしれません。でも、時代を見てきた僕からしたら、仕事の手を抜かずにしっかりと若い子と向き合って、一から十まで背中で物語っている感覚そのものが、彼女の生きざまに見えます。10代の頃から今も現役である彼女こそが、このドラマの一番のメッセージなんじゃないかと思います。
これは僕ら同世代のアイドルファンしか感じないことかもしれないけど、あの世代のアイドル歌手の98%くらいは現役を引退していると思う。その中で、「若い子を取り扱うドラマなんてやらない」と言ってもいいのに、彼女はそれを受けて、歌って踊ったりしている。それがすごいメッセージやと思っているし、ありがたいしうれしいです。
北野:菊池さんがドラマのインタビューで「好きになってくれた人は裏切れない。後の活動でも裏切らない姿勢を見せていきたいんだ」とおっしゃっていて、その姿勢って素晴らしいなと思いました。
撮影の最後に小田さくらさんが駆け寄って、菊池さんと握手をしていました。その時に、「応援しているから、頑張って!」って言われているシーンが印象深くて、つんく♂さんが初めて好きになったアイドルの方とつんく♂さんが手掛けたアイドルとがつながった瞬間が見られたなと思いました。あのシーンは心が熱くなって、「このドラマをやってよかった。このキャスティングにしてよかった」と感じた瞬間でした。
――菊池さんのキャスティングは、つんく♂さんが好きなアイドルという面が大きかったんですか?
北野:大きかったです。候補として挙がってきた段階で「めっちゃいい」と思いましたし、実際につんく♂さんが楽曲提供をされているというのも相まって、単なるキャスティングだけでない大きなストーリーになるんじゃないかと確信していました。