コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、なっちゃん(コニシナツコ)さんの描いた『しのぶのコップ』を紹介。同作は友達に自分の気持ちをはっきり言えない女子大学生が主人公の創作漫画で、Twitterで作品を投稿した際には、8万以上の「いいね」と、多くの感想コメントが寄せられた。同作は毎週水曜日夜にTwitterで更新され、2022年3月10日現在で25話まで公開されている。この記事ではなっちゃん(コニシナツコ)さんにインタビューし、作品へのこだわりなどを伺った。
ほんとは嫌なのに…自分の気持ちをはっきり言えない女の子に共感の声続々
嫌われないように。みんなからはみでないように。自分に自信のないしのぶは、友人の心無い言葉に少しずつ傷つきながらも、 本音をはっきり言えずにもやもや。いつしか友人のユウちゃんたちと一緒にいることが辛くなり、避けるようになってしまっていた。
大学でもなんとなく友人を避けてしまうしのぶ。そんなとき、ロリータファッションをした大学生の純直(あやな)とであう。あやなはいつも周囲の目線が気になってしまうしのぶとは正反対に、周りからじろじろ見られても「私はかわいいから」と気にしない明るい性格。自分とは全く違うタイプでありながらも、自分らしく生きるあやなをうらやましく思うと同時に好感を抱くように。
しかしあやなと大学で一緒にいるところを見たユウちゃんから、あやなの悪口を言われてしまう。ユウちゃんを避けていたことを責められ委縮したしのぶは、罪悪感を感じながらもあやなをかばうことができなかった。
ある日クリスマスで友人たちとコスプレをしてケーキの販売バイトをすることになったしのぶ。偶然通りかかったあやなと出会う。いつものロリータファッションでなく、カジュアルな格好であることを指摘すると、「今から実家に帰るから」となんだかいつもと様子が違う。そんなあやなのことが気になったしのぶは…。
Twitterでは「めちゃくちゃ共感しました」「しのぶちゃんの行動すごくわかる…」「私も同じことありました」など主人公に共感するコメントを中心に多くの感想が寄せられている。
「勧善懲悪の物語にはしたくない。」リアルな感情を描く作者のこだわり
ーー素直に感情を表に出せない主人公・しのぶに共感する読者も多いと思いますが、どのような思いでこのテーマで漫画を描こうと考えましたか？
このマンガは最初、1本の4コママンガで完結させるつもりで描きました。実は元になったのは私の実体験で、私もある友人から繰り返し不快な言葉をかけられたことがありました。いつも笑って流していたのですがある時「あ、限界だ」といつものように笑ってごまかすことができなかったんです。よく花粉症の発症までの過程をコップに水がたまっていく様子に例えられますが、まさに感情のコップがあふれたな、とその時感じて。そのイメージを4コママンガにしてTwitterに出してみました。すると思った以上に反響があり、同じような経験のある人がこんなにもいるのだということを知り、この主人公が成長していく物語を描くことは意味があるんじゃないかと思って連載にしていきました。
ーー本作を描くにあたって、こだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
勧善懲悪の物語にはしたくないなと考えています。私は人が抱えている問題にはいつも表と裏があると考えるようにしていて、先ほどの話に出した私の友人も別に悪気があったわけではないと思っています。早いうちに私が不快であると示せていれば繰り返すこともなかっただろうし。物語の中でしのぶにひどいことを言ったユウちゃんという友達にもそうなってしまった理由があるし、明るくて自信満々に見えるあやなというキャラクターにも必ずしもポジティブなだけではない面がある、ということを描いていきたいと思っています。
ーー逆に、執筆にあたって難しかった点や、苦労したポイントがあればお教えください。
物語が進むにつれて読者の皆さんの感想が真っ二つに分かれてきたなと感じていて、ひとつは「主人公に共感する」というもので、もう一つは「主人公にイライラする」というものです(笑)。
たしかに主人公のしのぶはかなりウジウジしていて、自分の意見がないように見えるので、こういうタイプに腹が立つという方が一定数いるのは理解できます。主人公なので皆さんに愛されるキャラクターになって欲しいなと思うのですが、しのぶがすぐに成長できるかというと、やっぱり少しずつしか変われないよなあと思ってしまって、少しずつの成長の中でしのぶの魅力を描けるように頑張っているところです。
ーー本作の中で特に好きなシーン、思い入れのあるエピソードがあればお教えください。
しのぶとあやなが一緒にラーメン屋に行ったシーンの最後、あやなの憧れの先輩からはじめて「あやなちゃん」と下の名前で呼ばれたシーンですかね。これまではあやなの名字である「信夫(しのぶ)」ちゃんと呼ばれていたのが、主人公の「しのぶ」と一緒にいたので区別するために先輩がそう呼んでくれたのですが、この2人の普通の女の子のキャッキャした感じは描いていて楽しかったです。2人の友人としての最初のシーンという感じがします。
ーー漫画家として、目標や課題、今後の展望などがあればお教えください。
人のリアルな感情を描いていきたいです。ただ、この頃は心が締め付けられるようなニュースも多いので、必ずしもポジティブなだけではないリアルな感情を描きながらも、最終的には希望を持てるような物語を作りたいと思っています。
ーー最後に、ファンや読者にメッセージがあればお願いします。
いつもお読みいただきありがとうございます！しのぶはさまざまな人との出会いや関係の中で少しずつ変わっていっています。しのぶの成長をぜひ最後まで見届けてもらえると嬉しいです。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
