源頼朝を描けることのうれしさや喜びを感じています
――第25回の中で、三谷さんの想像を超えたシーンがあれば教えてください。
高校生の時、大河ドラマ「草燃える」(1979年)で頼朝が馬から落ちた回を見て、とても感銘を受けました。その中で、頼朝が倒れた時に、他の登場人物たちが何をしていて何を思っていたのか、を描いたシーンを見たかったなという思いがずっとありました。なので今回、そのシーンを脚本に書きました。僕の中では、登場人物それぞれの顔が一瞬で浮かぶイメージでしたが、演出の吉田照幸さんは、僕の思いをより強調してくださって、一人ひとりにじっくり時間をかけて描いてくださりました。僕が高校生の時に見たかったシーンを見ることができて、吉田さんにはとても感謝をしています。
――三谷さんの中の頼朝像をお聞かせください。
ドラマのメインの登場人物として源頼朝を描けることのうれしさや喜びを感じています。本当に脚本家冥利に尽きると言いますか、あれだけドラマチックな人生を送った人は、なかなかいないと思いますし、尚且つ、たくさんマイナス面を抱えた歴史上の人物であり、面白い人だなという印象は昔からありました。
ちゃんと死なせてあげたかった
――死が迫っている頼朝を描く上で意識したことはありますか?
僕自身、これだけ長い時間、頼朝に寄り添ってきて、頼朝の辛さや孤独を十分感じているので、最期はちゃんと死なせてあげたかった。また、暗殺説もあるんですが、そうなるとそこに殺す側のドラマが生まれてしまう。そうではなく、あくまでも頼朝側のドラマとして完結させてあげたいという思いもありました。それで最後は静かに死なせてあげることにしました。「彼の人生は何だったのだろう」「彼ほど寂しい男はいなかったのではないか」。彼の最期の1日を丁寧に描くことで、その答えが浮かび上がってくるように心がけたつもりです。
――頼朝を演じる大泉洋さんが演じる源頼朝はいかがですか?
僕の中でこの第25回は、これまでの24回分に比べて静かな回の印象があります。厳かな一日をイメージして書きました。大泉洋さんもそれをくみ取って、一生懸命演じてくれたと感じています。頼朝と巴御前(秋元才加)がやり取りする場面も、「自然に涙が出てきた」と言っていました。僕も頼朝があんなに泣くとは思わなかったですが、それは大泉洋さんが、これまでずっと演じてきた積み重ねの上での涙だったのではないかなと思います。