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「週刊さんまとマツコ」高円寺って、座れる?/テレビお久しぶり#9

2022/07/29 21:30

「テレビお久しぶり」
「テレビお久しぶり」(C)犬のかがやき

7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は「週刊さんまとマツコ」(毎週日曜昼1:30-1:57、TBS系)をチョイス。

「週刊さんまとマツコ」高円寺って、座れる?


地元・福岡でくすぶっていた10代の頃、テレビをつければ東京、雑誌を見れば東京、イベントが行われるのも東京、すべては東京にあるのだ、という思い込みに支配され、無思考上京ロボットと化した私はアホみたいに仕事を辞め、アホみたいに新幹線のチケットを取り、キャリーケース1つだけを抱えてアホみたいな顔で上京したのであった。

最初に住んだのは埼玉県で、地元の友人に住んでいる場所を聞かれるたびに後ろめたい気持ちで「赤羽らへん」と答える生活を3年半、ついに念願の杉並区民となり、およそ4年間、杉並区で暮らしている。それと同時に高円寺でバーテンとして働く生活もスタートし、フリーランスとして阿佐ヶ谷で暮らしながら、たまに高円寺でバーテンをやったりする、まさに地元で思い描いていた理想の生活を手にしたのであった。

さて、すでに人生の頂点を迎えたといえる私は、まだまだ東京という場所に新鮮な喜びを覚えている。一歩外に出れば感動、都心に行けば感動、といった具合に、「東京」が自身の居住地であるという認識をなかなか得ることができない。そんな根っからの田舎者である私は、「芸人居住地最新事情2022」と謳う本番組を視聴せざるを得ないのであった。サムネイルに鬼越トマホークが映っているということは、きっと高円寺や阿佐ヶ谷の話をしてくれるに違いないと思ったのだ。

冒頭、若手芸人の聖地が、中野から別の場所に代わっていると主張する鬼越トマホーク。そこから、主に都心周りの街が次々と紹介されていき、その場所についての印象を出演者たちが偏見交えて好き勝手しゃべっていくという構成。東京の路線図や、いくつか街がピックアップされたパネルが用意されているのだが、私の興味は高円寺エリア一択である。さんま、マツコ、ノブコブ吉村、鬼越トマホークという面々が、私もよく知るあの一帯をどのように語ってくれるのか。今回はそこに注目したいと思う。

中野近辺の芸人居住事情が語られたあと、早速話題は高円寺エリアへ。「クズ芸人の聖地」として紹介されるのは鈴木もぐらを筆頭に予想の範囲内であるが、他にも家賃が安いことや、物件の審査が通りやすいこと、深夜営業の飲食店が多いことなど、総じて夢追い人に優しい街であることが語られる。夢追い人の街、たしかに高円寺という場所にはそんなイメージがある。他にも、ロックの街、ファッションの街、人情の街…。なんとなく「高円寺」という街には、人それぞれイメージを持っていることだろう。

いささか話が逸れてしまうが、私は高円寺の地面に座れない。高円寺がことさら不衛生であると言いたいわけではなく、基本的に外の地面というものに座ったり触れたりすることに強い抵抗があるのだ。だから、それが高円寺の地面であろうが、参宮橋の地面であろうが、座れないものは座れない。東京の地面なんか、どこだってバカ汚いに決まっているのだ。

それじゃあなぜ、高円寺という街を思い出そうとすると、すかさず「地面」が呼び起されるのか。それは、みんな、さも当たり前かのように、高円寺の地面に座っているからだ。ケツをつけて。番組内でも触れられていた、北口の広場。あそこは夜になると、大勢の人間が地面にケツをつけて酒を飲んでいる。私にとって、その光景は恐ろしいものだ。私の高円寺の友人だって、躊躇なく地面にケツをつける。どうして、地面にケツをつけられるのだろう。地面にケツをつけたあと、どこへ行き、何をするのだろう。私にとって高円寺とは、「みんなが地面に座る街」であると言えるが、しかし、地面に座ることこそ、高円寺を愛しているということなのではないか。

私は高円寺に座れない人間だ。高円寺で出会った仲間や、お世話になった人、よく行く古着屋、よく行く喫茶店…。挙げていけばキリがないほどの思い出が詰まった街ではあるが、しかし地面だけは受け入れることができない。私は、自分に都合のいいときだけ高円寺を利用し、適当に愛想を振りまいておきながら、彼の地面を愛そうとしない、最低のクズ野郎なのだ。連載第2回でも語ったように、街を愛するということは、地面を愛することに他ならない。私は高円寺を愛していないどころか、愛そうとすらしていない。「地面は汚いから」そんな愚にもつかない常識を振りかざし、本質である地面から目を背け、表層だけを見続けている。私は高円寺の何なのか。そんな自己嫌悪に陥っていたら、いつの間にか番組は終わっていた。

城戸(きど)

Twitter:@sh_s_sh_ma

1996年生まれ。映画を観るのが好きなフリーライター。オモコロなどWEBメディアを中心に活躍。

TVer「週刊さんまとマツコ」

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