7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は「バナナマン日村が歩く!ウォーキングのひむ太郎」(毎週火曜夜10:30~11:00、BS朝日)をチョイス。
日村大好きな筆者が見た「ウォーキングのひむ太郎」
この「テレビお久しぶり」の連載をスタートしてから思うのは、本題に入る前の導入部分が長くなってしまいがちなこと。自分語りの大好きな私が筆を握れば仕方のないことではあるのだが、今回はスパッと前置きを済ませ、さっさと本題に入ろうと思う。やはり、何事もシンプルなほうが良い。それでは、導入部分をお楽しみください。
【筆者が「ウォーキングのひむ太郎」を鑑賞する理由】
日村大好きだから。
冒頭、ひむ太郎こと日村勇紀によってロケーションが紹介され、さらに画面上のテロップで彼の履くスケッチャーズのスニーカーが紹介される。番組の趣旨はいたってシンプル、日村が歩くというそれだけ。今日は護国寺から池袋にかけてウォーキングをするそうで、私にはほとんど馴染みのない土地なので、未知の道を日村が散歩して紹介してくれるというだけでテンションが上がる。
鑑賞を始めてまず驚いたのは、画面の躍動感というのか、ただならぬ”ウォーキング感”である。おそらくGoProでの撮影だと思うのだが、歩く日村のうしろ姿をローアングルから捉えた映像が、こう、歩いている!という感じなのである。道を画面の中心に置き、歩者である日村を横にずらした構図が、なおさらそう感じさせるのか……自分が歩いている道に、日村もいる、そんな臨場感がある。日村の歩き方も素晴らしい。趣旨としては”散歩”というよりあくまで”ウォーキング”であるから、整ったフォームでズンズンズンズン歩いていく。その姿がアニメ的というか、作画的というか、日村のマスコット性もあいまって、カワイイ…。GoProってこんなに良いのか…。GoProなのか分かんないけど…。
さて、GoProへの感動はこれくらいにしておいて、画面には、日村が護国寺を紹介する様子が映しだされている。護国寺ってこんな立派なところだったのか、と、長年東京に住みながら知らなかった自分を悔いるように話し、敷地の松の立派さを語った直後、ちょうど4秒間鳩が映り、「鳩も幸せだろうね~。鳩に生まれ変わったら俺護国寺こよ」という台詞、そして護国寺の境内を上る日村の後ろ姿へと画面が切り替わる。素晴らしい…。鳩も日村もカワイイ…。この4秒間の鳩のカットが、全編にどれだけの影響を及ぼしてくれるか…。ロケ番組のディレクターには、鳩がいたら4秒映すよう、肝に命じていただきたい。
池袋東口周辺を歩く日村が、急に立ち止まって、「ちょっと待て何の匂いだこれ」と言い始めるシーン。見ている側はもちろん分からないが、なにやら美味しそうな生姜焼きの匂いが強烈にただよっていたらしく、匂いのもとを確かめようとあたりを見回していると、唐揚げ屋から発されていたものだったと発覚する。え、めっちゃいい匂いする → 唐揚げ屋だった、というくだり。別にその店に入ったりするわけじゃなく、あ、ココだったね、じゃ行きましょうか、っていう……ちょっと、エモいという言葉しか出てこない…。エモい…。
終盤、池袋の線路を真上から見下ろせる橋から、線路の数をかぞえて興奮する日村。奥から埼京線がやってきて、スタッフが「埼京線ですね」と言うのと同時に、日村が「ちょっと後ろ見てもらっていいですか」と背後にカメラを向けさせると、ダイオーズの車が走り去っていく様子が映る。冒頭に「最近ダイオーズの車をよく見る」と日村が語っていたという文脈があってのくだりなのだが、街を見るってこういうことだよなと思う。街にいる以上、前にも後ろにも街があるわけで、前でも後ろでも何かが運動しているのだ。日村とカメラマン、見ているものと撮るものが違っているという、この均整の取れなさこそ散歩ってものである。ちなみに、このダイオーズの走り去り方、そしてカメラの間に合い方、どれもがファンタジックで本当に素晴らしい。あの一瞬のピントの合い方、そしてピントの合った直後には、もう画面から消えようとしているダイオーズ…。左下に表示される「見たい物が沢山あって大変です…」というテロップまで含めて、とめどなくエモーショナルが連続している。そしてカメラが線路に戻ると、そこにはもう埼京線はいない…。本当に凄い。自分で偶然これが撮れたら、マジで100回は見返すと思う。私は全力で、「ウォーキングのひむ太郎」を推していきたい。
目的地であった池袋西口公園にて「今どき東京で噴水って珍しいよね」って話をしてるときに女子中高生ふたりが噴水に手をやって「キャッ」とはしゃいでいたり、遠くからちらっとしか見れなかったイケバスが最後に至近距離に現れたり、一体どれだけ出来事に愛されているのかと本当に驚く。他にも素晴らしポイントは多数あるが、羅列していくと本当にキリがなくなってしまうので、これくらいにしておきたいと思う。ウォーキングのひむ太郎…。今、一番楽しみな番組になりました。過去回全部追っかけます。日村大好き。