心を打つ、演技を超えた涙の訴え
こみあげてくる嗚咽を必死でこらえ、時に言葉に詰まりながら訴える姿は、とても演技には思えず、“吉木修二”というパラアスリートが実在している錯覚に陥り、彼のつらい現状に胸が痛んだ。Twitterにも「この人、本当の選手?」「吉木役の人、誰?上手すぎる」と彼の正体が気になるコメントが次々にポストされる。
演技だけでなく、プレイするシーンでの車いすの扱いも見事だった。吉木の練習シーンに登場した、東京2020パラリンピックの金メダリスト・国枝慎吾選手も、福山の短期間での習得ぶりを称賛していたほど。視聴者からも「すごい迫力。ここまで車いすを扱えるようになるには、どれだけ努力をしたんだろう…」「演技のうまい選手?」と、福山の役者魂に感心する声があがった。
今回の吉木役で、初めて福山を知った視聴者も多いようだが、芸歴は10年以上で多くのTVドラマ、映画、舞台で活躍する俳優だ。綾野剛とは、2020年に「MIU404」(TBS系)、2021年には「恋はDeepに」(日本テレビ系)で共演している。「吉木(を演じてる俳優)、『MIU』で伊吹(綾野)にタコ殴りされてた“澤部”だよね!?」「“恋ぷに”のMr.エニシ?」と、気づいた視聴者も少なからずいたようだ。
福山は今回の台本を読んだ瞬間、「この役は誰にも渡したくない、演じ抜きたい」と心から思ったのだそう。その熱い思いがあれほどまでにリアルな人物を生み出し、視聴者にドラマを超えた感動を与えたのだと思う。「オールドルーキー」放送終了後には、番組名がTwitterトレンド入りをしたほか、福山のTwitterやインスタグラムに、新たにファンになった人々からのコメントがたくさん書きこまれていた。“吉木役”が、彼の代表作の1つになったことは間違いない。これをきっかけに更なる飛躍が期待できそうだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
TCエンタテインメント
発売日: 2020/12/25