コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、自らの死と余生を売りに活動する“余命アイドル”をテーマにした作品『東京エンゼルコール』をピックアップ。作者のさりい・Bさんが2022年9月1日にこの作品をTwitterに投稿したところ、7.5万以上(9月29日現在)の「いいね」が寄せられ、反響を呼んだ。この記事では、さりい・Bさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
葛藤しながら生きる“余命アイドル”と彼女の唯一の理解者となる“天使”の関係に涙
先天性の短命症を患う少女・今際四季(いまわしき)は、医師から余命3年と告げられたことをきっかけに、自らの“余命”と“死”を売りにアイドルとして活動することを決意する。“余命アイドル”としての活動に世間からは賛否両論があるものの、他では類を見ない大ブームを巻き起こし、国内外に人気を広げる四季。しかしその一方で、四季はいつの間にか全世界から“死ぬこと”を期待されるようになっていた。
四季はアイドル活動の中で、自らの死期について明るく笑顔で受け応えをするも、裏では安定剤を大量に服用しながら精神を保つ状態が続いていた。ある日、マネージャーから“AC(エンゼルコール)”と呼ばれる薬を渡され、一錠を服用した四季はその日から天使の幻覚を見るようになる。最初は天使の存在について半信半疑だった四季だが、天使に話し相手になってもらったり、休日に一緒に外出を楽しんだり、余命アイドルとしての葛藤を吐き出したりして過ごすうちに、天使は四季にとって唯一の心の拠り所となっていた。
余命半年となりいよいよ自らの死期が迫る頃、熱を出し体調が優れない中で“ファイナルライブ”のステージに立つ四季。その客席には、誰にも見えるはずのない天使の姿があった。「私は困ってる人のもとに行かないといけない…私は天使だから」と言い、四季に一方的な別れを告げながら空高く昇っていく天使。その言葉に驚き、置き去りにしないでと涙を流す四季を天使は優しく抱きしめ「あなたは生きて」と呟いた。その瞬間、大きな地鳴りとともに大規模な停電が発生して…。
Twitter上では「めちゃくちゃ感動しました」「鳥肌立ちました」「切なくて泣ける」「感動と尊いとかわいいが押し寄せてくる」「Twitterで見た漫画で1番いい漫画」など、読者からのコメントが多く寄せられ、注目を集めている。
「SNS上で承認欲求を募らせる人たちを見たことが創作のきっかけ」作者さりい・Bさんが創作の裏側を語る
――『東京エンゼルコール』はどのようにして生まれた作品ですか?
作中でキーとなる“余命アイドル”のアイデアを思いついたのは2021年の2月頃でした。当時の僕は、現代においてSNSが発達した影響か、承認欲求を募らせる人たちが多くなったと感じていました。自分の情報を切り売りしてでも人気者になりたい、特別な存在になりたいという欲望。そんな承認欲のままに、自分の死まで売り物にしてしまった少女がいたら世間は彼女をどう見るのだろう、そしてその少女は本当に満たされるのだろうか?と考え始めたのがきっかけでした。
――『東京エンゼルコール』では、主人公・今際四季(いまわしき)の“アイドルのときの顔”と“天使にだけ見せる素の顔”の、余命アイドルであるが故の二面性が作中でとてもリアルに描かれているのが印象的でした。余命アイドルとしての人物像を作り出すときに意識したことはありますか?
四季の人物像については割と初期段階から決まってました。もともと余命アイドルという自分を追い詰め続けるようなことをやり遂げるような人なので、四季はとても「強い人」だろうというイメージが最初にありました。そしてそんな強い人でも自分の死に直面して耐えきれなくなっている状況の切なさが頭に浮かんで、これはなんとしても描きたい…!!と思い、全体のストーリーを構成していきました。
――『東京エンゼルコール』で、さりい・Bさんにとって特に気に入っているシーンを教えてください。
四季が余命アイドルを始めた理由を天使に語る場面が気に入っています。あの時の四季の「どうすればよかったの?」というセリフは、どうしようもない状況と分かっていながら何かに縋りたい彼女の気持ちを込めて書きました。
――Twitterでのアップ後、とても大きな反響があったかと思います。特に印象に残っている読者からの反響はありますか?
四季と天使のキャラクター性を気に入ってくれてる人が多くてとても嬉しかったです。どちらも思い入れがあるキャラだったので。
――今後の展望や目標などがあれば教えてください。
今回は色んな人に作品を読んでもらえたことが嬉しかったので、より多くの人が目にする場所で作品を発表したいです。できれば連載として!
――作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
今後も情緒を乱すような漫画を発表していきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。