コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、アフタヌーン四季賞2022秋(講談社)で大賞を受賞し話題を集めている漫画『どくだみの花咲くころ』をピックアップ。作者である城戸志保さんが10月25日にこの作品をTwitterに投稿したところ、6.6万以上(12月18日現在)の「いいね」が寄せられ大反響を呼んだ。この記事では、城戸さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
周りから“問題児”扱いされる信楽くんの創作物に心惹かれる優等生・清水 感情あふれる表情描写も話題に
裕福な家庭で生まれ育ち、勉強ができてスポーツも万能な優等生・清水(きよみず)。対して、かんしゃく持ちで落ち着きがなく、ちょっとしたことでパニックになったり怒り出したりする同級生の信楽(しがらき)くんは、クラスメイトや先生からも“問題児”として扱われていた。清水は、予測不能な動きをする信楽くんを自覚なく傷つけることは避けたいと、なるべく信楽くんには近づかないように学校生活を過ごしていた。
ある日、紙粘土で創作する図工の授業で時間を持て余した清水は、こっそり信楽くんの作品を盗み見る。そこで目にした独創性の高い作品に感激し、この日をきっかけに遠くから信楽くんの観察をはじめることに。そんな中、清水は偶然にも近所の空き地に一人で入っていく信楽くんの姿を自身の家の窓から見かける。信楽くんが去ったのを確認して空き地を辿ると、そこにはクラスメイトの体型を模した草人形が置かれていた。
毎日空き地に残される草人形をこっそり持ち帰って大切に保管するほど、信楽くんの創作物に魅了された清水。しばらくして授業の合間に信楽くんから“凝視”された清水は、ついに自分自身の草人形を作ってもらえることを確信する。しかしその日の放課後、いつも通り空き地で作業していた信楽くんがしゃがみ込んだまま突然倒れてしまう。自宅の窓からその様子を見ていた清水は、熱中症を心配してバケツに水を入れ信楽くんの元へと駆け寄って…。
優等生であるがゆえクラスメイトたちに馴染めず孤独感を感じていた清水が、“問題児”な信楽くんが生み出す独創的な作品と出会い、その感性に心惹かれていく姿を繊細に描いた本作。Twitter上では「心にジワリと残る作品」「凄いものを見てしまったような読後感」「引き込まれる」「心揺さぶられる」「天才と秀才」「なんとも不思議な空気感」など多くのコメントが寄せられ注目を集めている。
アール・ブリュット作品に惹かれ…作者・城戸志保さんが創作の裏側を語る
――『どくだみの花咲くころ』はどのようにして生まれたのでしょうか?
いわゆるアール・ブリュットの作品が元々好きだったのですが、なぜ惹かれるのか考えているうちにできていきました。あとは子どもを主人公にした理由としては、環境からの影響を受けやすく先入観を持ちやすいけど、それを描写してもそこまで嫌な感じにはならないと思ったからです。
――城戸さんは本作でアフタヌーン四季賞(講談社)の2022年秋大賞を受賞し、Twitterに作品を公開後は6.6万を超える「いいね」が寄せられ話題を集めました。今回の反響について率直な感想をお聞かせください。
今年の5月にTwitterの鍵を開けたばかりでフォロワー100人くらいだったので、100いいねつけばいいね!と思っていたので、伸びたのが意外でした。やっぱり四季賞の知名度がすごいんだと思います。読んで気に入ってくれた人たちが感想メールやはがきや手紙を送ってくださって、すごく嬉しかったです!
――本作でみんなから一目置かれる“問題児”として描かれる信楽くんと、そんな信楽くんが作るアート作品に魅了される清水、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
キャラクターを作ろう!と考えたことはあまりなくて、まず描きたいと思うような興味のある状況に人を放り込んでどう動くか頭の中で実験して、そこにさらに人を投入し、同じことを繰り返していくうちに人格ができていってる気がします。キャラを立てたいと欲を出すと空回りするので、そこまでガチガチに「この人はこういうことする、しない」と思い込みすぎずに、ゆるく考えています。
――本作では、信楽くんを観察する清水の感情溢れる表情が大胆に描き分けられ、ラストシーンで喜びが爆発した表情描写は特に印象的でした。城戸さんにとって作画する際のこだわりや、物語を創作する際に意識している点はありますか?
作画、ガタガタの線がかっこいいと思ってフリーハンドでガリガリ描いてたんですが、出来上がると思っているより数倍汚くなってしまった気がします。あとほんの少し安定感のあるラフさが欲しいので、早くたくさん描いて描き慣れたいです…
表情を強調して描くような演出は照れるから本当はあまりやりたくないんですが、なぜか表情が肝の話を描いてしまっていてわりと苦しんでいます。
映画を観るのが趣味で役者さんの演技を見るのが大好きなので、好きな映画、好きな演技を何度も見て、自分の作品にも照らし合わせて必要な顔を模索しています。デヴィッド・フィンチャーはものすごくテイクの撮り直しをするらしく、その甲斐あって毎シーンベストテイクの連続なので勉強になります。あとベネット・ミラー、小津安二郎とか参考になります。
――本作の中で城戸さんが特に気に入っているシーンやセリフがあれば教えてください。
信楽くんがひとりで歩いてるときに思い出し怒り?嘆き?で「うーっ あーっ くそっ」とか言ってるところが気に入ってます。小学生のころ、下校中1人のときはその日の総括を頭の中でやりながら帰っていたので、みんな声に出してないだけでよくあることだと思います。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
「どくだみの花咲くころ」が月刊アフタヌーンで連載が決まりました〜!やった〜!応援していただいた方々のおかげです…本当にありがとうございます。これからモリモリ描いていきますので、よければ読んでみてください!!(※連載についての詳細は月刊アフタヌーンにて後日発表される)