息子を心配する母・律子の思い
一方、想の方も8年でさまざまな変化があった。自分の耳が少しずつ聞こえなくなっていく不安から、高校時代の友人とは距離をとり、耳が聞こえる人々との関係を断った。実家に帰る頻度も減らし、好きだったCDを手にとることもしなくなっていた。そんな中で出会ったのが、生まれつき耳の聞こえないろう者の奈々(夏帆)。奈々は想に手話を教え、ろう者として生きることは決して希望のない世界で生きるわけではないということを伝えてくれた人。想が奈々と出会えたことで、自分の病気を受け入れる一歩を踏み出せたのだろう。想を心配する母・律子(篠原涼子)は想が手話を上手に使って会話する姿に、少し安心したような表情を浮かべていた。
しかし、奈々との関係も想が紬と再会したことで動きだした。元恋人の紬とは言えずに別れてしまった思いがたくさんある想は、紬がまっすぐに自分を向いて会話しようとしてくれていることで心を開いていき、紬のことを好きな自分と向き合うように。想と歩んでいく未来を信じていた奈々は、涙を流すことになってしまったが、想と紬はようやく両思いになり頻繁にデートを重ねるようになっている。
“silent”ファンが気になる紬と想の恋の行方
ところが、さまざまな気持ちを整理しながら向き合っている紬と想は、まだ恋人同士になっていない。周囲から見れば、お似合いの二人。お互いを好きな気持ちも十分満ちているはずなのだが、一歩踏み出せずにいる理由というのが、15日放送の第10話で描かれそうだ。
想がサッカーのスポーツ推薦で受かった大学に通う際、一人暮らしをする息子を見送る車内で母・律子は想から「ごめんね」という言葉をかけられた。しかし、紬や湊斗と再会して、人々の温かさを知った想は、自分の境遇を受け入れられるようになったのだろう。久々の帰省から帰る車内では、律子に「ありがとう」と声を発することができた。
心の変化を繰り返してきた想が、紬のことをどう思っているのか。好きなはずの相手に、どのような形で何を伝えるのか、二人の恋が気になって仕方ないのは筆者だけではないはずだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部