2022年にブレイクした芸人は数多いるが、ランジャタイは間違いなくその1組に入るだろう。「M−1グランプリ2021」(朝日放送・テレビ朝日系)に出場し、一気に知名度を上げた。同大会で優勝した錦鯉は「M−1グランプリ2020」で決勝に進出して人気が広がっていったため、昨年の決勝の時点ではすでに売れっ子となっていた。そう考えると、昨年の「M−1」決勝出場者で最も人気がアップしたコンビはランジャタイだとも言える。
そんな彼らの冠番組「ランジャタイのがんばれ地上波！」(毎週火曜深夜2:36-、テレビ朝日)が、この秋から始まった。この番組が放送されている「バラバラ大作戦」は半年に1回のペースで番組の入れ替えがあり、生存競争の激しい枠だ。SNSを意識して、放送時間が正味15分と短いのも特徴である。
「何だコレは」で埋め尽くされた15分
「ランジャタイのがんばれ地上波！」の15分は、とにかく濃厚だ。番組の趣旨は「食レポや物件探し、リアクション芸といったバラエティの定番企画に放り込まれたら、彼らはどう“逸脱”するのか。自由で新しい地上波テレビの表現を模索する番組」だという。実際、逸脱ぶりはすさまじい。「海老名SAでロケをしよう！」という回では、新宿の回転わんこそば店や理容院を訪れて、ゲストの高野正成(きしたかの)を翻弄した。「中継リポートの可能性を探ろう！」では、つけ麺フェスのリポートをするかと思いきや、いきなり国崎和也が入口でうどんを食べる自由ぶり。
何しろ第1回の「ランジャタイのアシスタント選手権」から、視聴者の度肝を抜いている。ゲストがアイドルグループの“＝LOVE”から野口衣織と諸橋沙夏、素人の大島さん、そして大御所俳優の高橋英樹。この顔ぶれの時点で、胸がざわざわする。そこに降りかかる、ランジャタイからの無茶ぶりに次ぐ無茶ぶり。モニターの中で繰り広げられる「何だコレは」感。基本的にこの番組は、「何だコレは」が貫かれている。最初に撮ったオープニングは国崎がロケの許可が下りていない対岸まで行ってしまったりと、あまりに好き勝手やりすぎて全カットになったという伝説を残したほどだ。
とにかくお笑いが好きな2人
ランジャタイは本当にお笑いが好きなのだろうと、見ていて感じる。彼らは番組でよくとんねるずのモノマネを挟み込んでくるが、番組の視聴者世代にはどれくらい通じるのだろうか。しかし彼らは臆せず入れ込み、ゲストの芸人にツッコまれる(この番組は、ゲスト芸人がツッコミのポジションに回ることが多い)。それはお笑い好きの少年がテレビで見た芸人のネタを真似するピュアさと、芸人としての大先輩に対するリスペクトを感じさせる。
また「ランジャタイのアシスタント選手権」で行われた、高橋英樹と大島さんによる「カラスを超能力で倒せ！対決」では、2人が演技をしているときに国崎が「ちょっと見たい」とわざわざ近寄っているのだ。演者としてじゃなく、「面白いことが起こるから近くで見たい」という素直な欲求。自身も隙あらばボケながら、他人がボケると心から楽しそうに笑う。国崎の爆笑は、この番組のカラーのひとつにもなっている。彼は自分から発する笑いにも、他人から受け取る笑いにも貪欲だ。
一方、伊藤幸司はバランサーを担う。状況によってツッコミに回ったり、国崎とともにふざけ倒したりする。ボソボソとした口調から飛び出す小気味のいいボケ。ツッコミも柔らかくたしなめるテイストで、視聴者に不快感を与えない。さらに現状把握力がバツグンだ。どう立ち回ればいいのかを、常に冷静に見極めている。
お笑い養成所の同期だった2人だが、退学になった伊藤とコンビを組むため、追いかけるように自主退学したという国崎。その強い絆は、コンビ結成から15年経っても薄れることはない。ランジャタイはここ最近ブレイクした芸人の中でもトップクラスの人気を誇る。とくに高いのが女性からの支持だ。彼らがどの番組に出ても伸び伸びと楽しそうにしていること、見ているだけで仲の良さが伝わってくることに起因しているのではないだろうか。
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