脚本・吉田恵里香コメント
私は生理が近づくと、とにかく眠くて食欲が増します。気が沈み、仕事の効率も悪くなります。でも、症状は比較的軽い方だと思います。思いますと言ったのは、生理について周りと深く話したことがないからです。最近は随分変わりましたが「生理について大っぴらに話してはいけない」というルールが、世の中にはまだあります。語られないことで奪われる健康・知識・配慮や優しさが絶対あるのに…。
本作の主人公・光橋幸男は「生理のおじさん」として活動することで、そのルールをぶち破ろうとする男です。幸男は生理の当事者ではありません。幸男を含めて、この世界には生理が来ない人たちがたくさんいます。でも、生理に関係のない人は誰一人いません。生理が来ても来なくても、全ての人がきちんと知識を得て、自分事にすることで変わる世界がたしかにある。そんな思いを込めたドラマです。
演出・橋本万葉コメント
「生理」をテーマにドラマを作っていく過程の中で、自分の人生で起きた生理にまつわる出来事を書き出してみたことがあります。初潮を迎えた日、夕食に赤飯が出てきて恥ずかしかったこと。中学生の頃、生理用品の処理がうまくできず、母を通して父から注意されたこと。これは最近ですが、旅行中に白いズボンを汚してしまい、「この歳になって…」とがっかりしたこともありました。
でも、同時に、高校時代、生理用品が飛び交う教室の風景を「女子校だなぁ(笑)」としみじみ眺めたことや、歩いている時に突然生理が来たかどうかを確かめようとした友人の動作が面白くて笑い合ったことなど、楽しい思い出の中にも生理があるということに気が付きました。
私たちは、生理と共に生きています。現代の人が生涯で経験する生理の数は約450回。その450回がいつも恥ずかしくて、痛くて、憂鬱な時間になってしまうなんて、いくらなんでもつらすぎる。生理でつらいと思う時や困っている時、それを話したければ話せるし、話した相手がちゃんとそれを理解してくれる。そんな日常が、近い将来当たり前になることを願って、このドラマを作ります。楽しんでご覧いただけたらうれしいです。