第7話で初めて登場した後藤藍は、恵介と洋介の実の母親であり、京介の育ての親でもある。恵介と洋介を産んだ後、銀から“2人は自分が育てる”と言われ、用済みの烙印を押されてしまう。奉納祭の儀式の途中、喰われている赤ん坊(のちの京介)を奪い、逃走を試みた藍。銀に猟銃を向けられ、死を覚悟した時に藍の命を救ったのは恵介だった。恵介は持っていた猟銃の銃口を自分に向け、「母親を逃さないと自分が死ぬ」と銀を脅し、「もし母親がこのことを誰かに話した時も自分が死ぬ」と銀に約束をした。藍は赤ん坊(京介)を守るために決死の行動を取り、自分の子ども(恵介)に救われた。だから、京介の気持ちも分かるが、恵介との約束を守るために警察に協力することはできなかった。
ちなみに藍を演じる河井は、かつて高杉が連続ドラマ初主演を務めたドラマ「明日もきっと、おいしいご飯〜銀のスプーン〜」(2015年、フジテレビ系)で高杉と親子役を務めたことがある。その時は血のつながりのある親子ではあるものの育ての親ではない、という今回と逆のパターン。何とも不思議な縁だ。
もう一人、次期神主の宗近(田中俊介)も動いた。供花村で権力を持っていた銀が亡くなり、同じように権力を持った神主である宗近の祖父も死期が近づいている。そこで、恵介に訴え掛けた。「協力すれば子どもらを解放できると思う」と。伝統を“呪い”と考え、それを断ち切るためにも、子どもたちを守るためにも自分たちの世代で変える必要があるという思いを伝えた。
大悟は、犠牲になる子どもたちを救うために動いたが、これらを解決できたら自分自身も変われると思っていたのではないだろうか。また人を殺してしまうんじゃないかと不安がよぎった時に、電話で有希が言った「今回、あんたは絶対思いを成し遂げてくる。私を信じろ」という気持ちがどれほど心強く感じられたことだろう。自分が変わることで、失語症になっている娘・ましろも変わってくれるのではないかという期待もあったはず。
最終話は大悟をはじめ、“子どものために”という思いで供花村にまつわるいろんな人が動いた回でもあった。もしも続編があるのなら、今度こそ子どもたちのために事態が好転することに一縷の望みを託したい。
ドラマ「ガンニバル」は、ディズニープラスの「スター」で全話配信中。
◆文=田中隆信
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