「美しい彼」シーズン2(毎週火曜深夜1:28-1:58ほか/MBSドラマイズム枠、TBSほか)が2月7日より放送中だ。「美しい彼」シーズン1は、萩原利久とFANTASTICS from EXILE TRIBEの八木勇征がW主演を務めて2021年11月〜12月に放送され、主演の2人がともにブレイクする大ヒットとなった。4月7日(金)には「劇場版 美しい彼〜eternal〜」の公開が控え、本シリーズはさらなる盛り上がりを見せるだろう。シーズン1からの物語を振り返りながら、シリーズの魅力を紹介しよう。(以下、ネタバレを含みます)
W主演の2人がブレイク、ドラマ「美しい彼」のすごさ
「美しい彼」が実写ドラマ化されると知った当初はいささか驚いた。すでに原作に熱い固定ファンがいたし、そのファンを納得させられるようなクオリティは難しいのじゃないかと思ったからだ。しかし、蓋を開けてみると想像を凌駕する出来であり、次回が待ち遠しくて何度も同じ話をリピートして見ることになったし、原作ファンが歓喜しただけでなく新たなファンも激増し大成功を収めた。
原作は凪良ゆうが手がけ、葛西リカコがイラストを担当したBL小説。凪良は「流浪の月」が第17回本屋大賞を受賞し、広瀬すず&松坂桃李のW主演で映画化されたことでも知られている。彼女は世間と相容れず疎外感を覚える、いわゆる“生きづらい”者たちが人生を模索する姿を描き、共感を呼ぶことに定評がある。
「美しい彼」の主人公も幼い頃から周囲になじめない、吃音症を持つ平良一成(ひらかずなり)だ。彼は高校で学校カーストの頂点に君臨する清居奏(きよいそう)に出会い、ひとめで恋に落ちる。この圧倒的なキングという存在の清居に扮するのが八木。本作でブレイクしたことからもわかるように八木の存在感は大きく、彼無くしてはこの作品は成功しなかっただろう。第一印象はやはり端正な顔立ちのイケメンであることだが、それだけではない。“美しい彼”というインパクトあるタイトルロールを演じきり、清居のカリスマ性と内に秘めた繊細さを見事に体現して見せた。
そして、主人公の平良を演じた萩原もまた、スクールカースト底辺の“ぼっち”男をただ暗いキャラクターに終わらせず、多面的な人間性を魅力的に好演。何を考えているかわからない不気味な大男という原作のイメージそのままではないが、愛嬌ある萩原らしい平良像を表現して見るものの心を惹きつけた。
これぞ青春ラブストーリー!な名シーンがたくさん
登場人物だけでなく展開も、ドラマ版は原作に完全に忠実というわけではない。しかも約30分×6話というコンパクトさであるにもかかわらず、原作ファンも称賛するほど、骨子を捉えて表現している。平良は辛い背景がある孤独な存在だけれど、その彼をかわいそうがって不憫萌えを煽るような演出では違う作品になってしまうと放送前に危惧していたが、それは杞憂に終わった。平良は孤独ではあるが、決して悲壮ぶらず、それどころか諦観さえ持ち合わせ、独自の理論でたくましくマイペースに生きる姿をきちんと描いている。そんな平良が美しいカリスマ・清居に、一瞬にして心を射抜かれ恋に落ちるシーンは秀逸。桜の花びらが舞い散るなか現れた清居に平良の目が釘付けになる場面は、見ているほうも心奪われて、このドラマに恋してしまう。
他にもこのドラマには名シーンがたくさん詰まっている。川沿いの自転車の二人乗りや、罰でやらされる掃除からの水のかけ合いは、これぞ青春!といった雰囲気。清居がキングらしく平良に許可を出して、手の甲にキスさせてやるシーンにはドキドキさせられる。清居は平良のことを「キモ」と言いつつ無視できずに気になっていき、2人の心の距離は近づいていく。この清居がいじめっ子には見えず、誰に対しても憮然とした孤高の存在であるところにむしろ好感が持て、平良も「キモ」と言われてまんざらでもないようすが見て取れる。さらに卒業式には、平良にしびれを切らした清居のほうからキス!青春ラブストーリーの胸キュンが満載だ。