4月12日にスタートした新アニメ「【推しの子】」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか/TOKYO MXほか※ABEMAで地上波同時配信、ディズニープラス・DMM TVほかで見放題配信)は、初回オンエア後にTwitterのトレンド世界1位になるなど、大きな話題を集めている。特にファンの声で目を引いたのが、初回の中心人物、天性の輝きを持つトップアイドル・星野アイの声を担当する高橋李依(りえ)の演技だろう。「想像していたアイの声だ!」「さすがりえりーだね!」そんな喜びの雄たけびがあちこちで沸き起こったとか。声優としても歌手としても、多くのファンを持つ“りえりー”こと高橋は、Twitterフォロワー数が間もなく100万人に迫ろうか、という勢いの押しも押されもせぬ人気者。今回は高橋について幅広いエンタメに精通する音楽ジャーナリスト・原田和典氏が紹介する。(以下、一部ネタバレを含みます)
イヤホンズのリーダー
個人的に何事も音楽から入るタイプなので、彼女の存在が心に刻まれたのは3人組ユニット「イヤホンズ」の音源を聴いたことがきっかけ。アルバム『Some Dreams』に入っているラップ/変拍子の「あたしのなかのものがたり」、甘いハーモニーの「Fuwa くちゃ Dreamer」は本当に良かったし、寺山修司関連でも数々の偉業を残しているジュリアス・アーネスト・シーザーの楽曲を取り上げているのもすごかった。イヤホンズのリーダーが歌手のキャラクターを演じるのだから、音楽面での心配はまったくない。それに高橋といえばキャラクターソングの数々を歌いこなしてきたボーカリストではないか。そのあたりも含めてアイ役にキャスティングされたのかもしれない。
2011年に所属事務所「81プロデュース」のオーディションを受け、特別賞を受賞した高橋は、2013年春に声優デビュー。2015年7月放送開始のテレビアニメ「それが声優!」で初主演を飾った。いきなり急激に上昇していくのではなく、時間をかけて、じっくりと実力を蓄えていったことが分かる。この年には前述の「イヤホンズ」を高野麻里佳、長久友紀と結成した。
「第十回声優アワード」で新人女優賞を受賞
2016年3月には、「第十回声優アワード」の新人女優賞に輝いている。以降も素質をたっぷり発揮して、「魔法つかいプリキュア!」(朝日奈みらい/キュアミラクル役)、「Re:ゼロから始める異世界生活」(エミリア役)、「この素晴らしい世界に祝福を!」(めぐみん役)、「からかい上手の高木さん」(高木さん役)、「彼女、お借りします」(桜沢墨役)などで活躍して今に至る。
桜沢墨は「けなげでがんばりや、おっとり系」という設定で、キャラクターソング「桜selfish」も息の音を生かしたウィスパー的な発声が特徴だった。だが「【推しの子】」のアイは実にタフだ。アイドルグループ“B小町”のセンターを張るだけでも大変だろうに、その一方で公には伏せているが「双子の母」でもあり、自身の生い立ちにはダークネスなところがある。
裏も表もいくつか持っているけれど、それをすてきなウソでコーティングしながら、ついにドームコンサートまでのしあがる。そのくらいのガッツと気の強さを持つアイドルの歌声だからか、高橋はウィスパー的なところを排して、鋭めの発声でガンガン歌っていく。「STAR☆T☆RAIN」、アイのボーカルが持つ、この強さはなんなのだ。
何色にも染まる稀有な表現力と、染まらない確固たる個性を併せ持つことは、才能である。声の演技と歌の両方で、今後の高橋がどんな世界に連れだしてくれるのか、楽しみしかない。
◆文=原田和典
▼Disney+で「【推しの子】」を見る
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/oshi-no-ko
▼DMM TVで「【推しの子】」を見る
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=exeegpzuvbsr474crvddwhfvt