若林、遂にネタを褒められて、涙
オードリーは「新人コント大会」のオーディションに出る。主催の渡辺正行は、厳しい批評もするが親身のアドバイスもしてくれるので、渡辺にネタを見てもらいたくてやって来る芸人も多くいた。“ズレ漫才”を見た渡辺は、「いいね」と言った。ボロクソに言われるだろう、と覚悟していた若林は、一瞬耳を疑った。渡辺は続けて「面白いよ。『M-1』を狙える」と告げた。初めて褒められた。若林は、春日と別れた帰り道、1人で泣いた。初めて嬉しくて泣いた。若林の笑いのセンスは、間違っていなかった。
このシーンで渡辺本人が登場し、前回の藤井青銅氏に続き、オードリーのキーパーソンの“ご本人登場”にTwitterは盛り上がった。
オードリー、遂に敗者復活戦へ
“ズレ漫才”を続けたオードリーは、「M-1グランプリ2008」で自己最高の準決勝まで行ったが、そこで敗退。敗者復活戦で決勝進出を狙う事になった。この敗者復活戦の漫才シーンはノーカットで放送され、高橋と戸塚は、漫才のテンポ、スピード、ツッコミのタイミング、声の抑揚まで、クセの強いオードリーの漫才を完全再現し、視聴者の度肝を抜いた。
森本慎太郎、富田望生の南海キャンディーズの漫才の再現もそうだったが、ただのモノマネではなく、その時の若林と春日の想いや情熱も伝わってきた。それは演技で表せるものではなく、高橋と戸塚は“オードリー”として戦っていた。だから、こちらも本気で見入ってしまう。結果がわかってるのにドキドキして、普通に漫才を見るように大笑いして、彼らを応援して…と、2008年12月21日にタイムスリップしてしまった。
当時と違うのは、私たちは、「みんな死んじゃえ」って目をして、TVに出たすぎて車に轢かれようとして、スベリ続けて、もがき苦しんできたこれまでの若林を見てきた事。敗者復活コンビとして彼らの名前が呼ばれた時、努力が報われた瞬間、つい最近までどん底だった人生が逆転する瞬間に立ち会った気がした。Twitterには、高橋・戸塚の再現度のすごさに感嘆するコメントと共に、「号泣した」「胸がいっぱいでどうしよう」など、彼らの熱さが伝染したコメントが溢れていた。
“春日”を通した春日俊彰
決勝を生放送しているテレビ局に向かうタクシーに乗りこむ時に、「若林さん、アタシ、“春日”してましたか?」と尋ねた春日に、「春日より“春日”だったよ」と答えた若林。今日1日、始まる前には「“春日”だから緊張してない」、終わった後は「大丈夫ですよ。“春日”が一緒でしたから」、敗者復活のコメントで「今から春日を届けにまいりますよ」と、“春日俊彰”は“オードリー春日”を通していた。
オードリーは、決勝の第1ラウンドを1位で通過し、準優勝に輝いた。この日を境に、オードリーはとんでもない大ブレイクをすることになる。そして、若林が自分と同じく「じゃない方」の山里(森本慎太郎)と出会うまで、あと少し…。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」
ソニー・ミュージックレーベルズ
発売日: 2023/06/14
Universal Music
発売日: 2023/06/21