コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのはイラストレーターとして活動しているくゑさんの『妻の姓にします』という1作だ。
イラストレーターでありながらも、6月19日に『小鳥遊夫婦は今日もしあわせ』(イースト・プレス)という「イチヤ」と「ミヤコ」の夫婦の生活を描いた漫画をリリースするくゑさん。『妻の姓にします』は結婚前の2人を描いた漫画で、5月に投稿されると5000件以上の「いいね!」を獲得している。夫婦の漫画を描いているくゑさんに、創作の経緯やこだわりなどを伺った。
妻の姓にしたい理由は「名前が好きだから」
結婚するために必要な書類をひと通り集めた会社員・小鳥遊都 (たかなし みやこ)とフリーライター・菅野一哉(かんの いちや)。後は婚姻届けの未記入の部分を書けば準備が完了するところで、都は「結婚後の姓(氏)ってどうする?」と一哉に問いかける。
というのも都は自身の「小鳥遊都」という名前を気に入っており、“姓を変えたくない”と思っている様子。ところが一哉も「小鳥遊」という姓を気に入っていることを打ち明け、話し合いの結果、姓を妻の「小鳥遊」にすることに。
しかし独断だけでは決められないため、一哉は自身の父親に電話で相談。やはり父は「一家の代表の名字にした方がいい」と答えるも、一哉は「おれはミヤコさんがいいと思う方にしたい」と本心を露わに。最終的に父は「好きにしなさい」と一哉の判断に委ねた。
そして2人は無事に入籍し、改姓手続きを担った一哉だったが、想像を超える「名義変更手続き」の大変さを思い知るのだった…。
姓を巡るに2人のやり取りに心を打たれた人が多く、ネット上には「登場するすべての人が気持ちの良い人ばかりで良かった!」「素敵な話」といった好評の声が相次いでいた。
「妻の性にする」という決断が大変な理由
――「妻の姓にします」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
そういう内容のマンガを見たことがなかったので、描いてみようと思いました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
ラストの1コマ、改姓に関する手続きの大変さです。それほど大変じゃなかったというコメントもたまにいただきますが、自分基準で鬱になるレベルで辛かったので「姓を変える作業は大変(な人もいる)」ということを1コマで描いてみました。あと、夫のお父さんの発言も穏やかではあるけれど微妙に引っかかる感じにしています。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
7ページ2コマ目の「正直腑に落ちないとこもある でもそれはミヤコさんに対して思ってるんじゃない」というセリフです。夫の改姓に対する複雑な心境と妻への思いやりを表せたのではないかと思っています。
――昨今は多様性を受け入れる風潮が強いですが、「妻の姓にする」という行為についてくゑさんのご意見をぜひ教えてください。
今は夫の姓にするカップルが96%と圧倒的に多く、そうするものだという固定観念が根強くあると感じます。現行の婚姻制度ではどちらかが改姓の負担を受け止める必要があります。2人で決めたのならどちらの姓でもいいと思いますが、変えない側・変える側という差が出るので、お互い相手の立場に立って考えられるかどうかは大事だと思います。
――投稿には「セリフ少し修正しました」とありますが、どのような経緯で修正に至ったのでしょうか?
過去に一度投稿した内容なのですが、意味が取りにくいセリフが一部あったので修正して再投稿しました。
――同作ラストの“各種変更手続きが大変だった”というコメントから相当手間がかかると推測しましたが、特にどのような手続きが大変だったのでしょうか?
印鑑登録や年金・保険・パスポート・銀行口座・運転免許証・クレジットカード・電話の名義変更などに加え、フリーランスの自分は仕事の取引企業が数十社あったので、銀行口座などの変更を申し出たりととにかくやることが多く大変でした。全てオンラインで済むなら多少は楽かもしれませんが、時間を取ってあちこち申請に行かねばならず非常に辛かったです。
――今後の展望や目標をお教えください。
これまで同様、仕事の合間にマイペースにマンガを描いていきたいなと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
作品を見てくださりありがとうございます。6月19日刊行の書籍『小鳥遊夫婦は今日もしあわせ』もぜひ読んでいただけると嬉しいです。(今回のエピソードは収録されておりません)