俳優・若月佑美が、初のフォトエッセー「履きなれない靴を履き潰すまで」(扶桑社)を、自身の誕生日でもある6月27日(火)に発売する。2019年8月より「週刊SPA!」で約3年半連載してきたエッセーを書籍化した本作。若月は、エッセーを書き始めるまで、実は文を書くことにコンプレックスがあったという。自分に厳しい性格であった彼女が苦しさから解き放たれていく過程で生まれたさまざまな言葉を、自らコンセプトを考えた撮り下ろしカットと共に収録。同書に込めた思いや、俳優として他ジャンルにわたって活躍する彼女の近況を語ってもらった。
連載オファーに「こういう文を書いてもいいんだ」
――2019年に始まった連載の書籍化ということですが、連載が始まった経緯や当時の心境をお聞かせください。
私の書いた文章を見てくださった担当の方から、「言葉の選び方とか使い方がすごく好きです」と声を掛けていただいたんです。「テーマも書く内容も自由なのでやってもらえませんか?」ということで、連載を始めさせていただくことになりました。連載を持てることもそうなんですが、私の言葉にフォーカスをしてくださったことがそれまでにはない経験だったので、本当にうれしかったです。
――もともと文章を書くことにこだわりを持って取り組んではいたのでしょうか?
むしろ、若干のコンプレックスがありました。私の書く文は独特なところがあるみたいで、「すてきな文章ですね」と言ってくださる方もいるんですけど、「遠回しすぎて何を言いたいのか分からない」と言われることもあったんです。
私は、「直接的に書くと悲しむ人がいるかもしれない」と感じた時に、あえて分かる人にだけ伝わるようにしたり、丸く、遠回しなニュアンスで自分の感情を書くようにしていたんです。真っすぐ書きすぎると賛否両論が出てしまうし、遠回しすぎると笑われることもあって、「難しいな」とすごく葛藤していました。
そんな時に「その文が良いです。お仕事にしてみませんか?」と言われたことによって昇華されたというか、「こういう文を書いていてもいいんだ」と思えたので、すごくありがたかったです。
俳優をやるようになって価値観に変化
――連載は3年半ほどされていたそうですが、この期間で書く内容に変化はありましたか?
最初は、自分の中で心の中に溜めてある感情や思っていることがたくさんあったので、それを今までの履歴から書き出すような形でした。途中からはリアルタイムにその時思ったことを文にしていましたね。ポジティブな言葉も書いていますが、反対にネガティブな言葉や悲しい感情、行き場のない感情も書くようになっていきました。それは俳優をやるようになって、役を通して価値観が変わっていったところもあるんじゃないかなと思っています。
――特に前半部分は、生きる上で気持ちを軽くするための助言のような言葉が多い印象でした。
自分が言われてすごくうれしかった言葉や楽になれた言葉を「自分のものだけにしておくにはもったいないな」とずっと思っていたんです。それで、当時の私みたいな人たちの助けになるような言葉を、全部出し切るつもりで書いていました。