「好きになっちゃったら仕方ないじゃん」
晃が一人暮らしをすることを切り出したのは、晃がそうしたい理由があるから。晃の好きなようにさせてあげよう。そんなふうに桂一は、その時の状況を“まずは受け入れよう”とする。厳しく指導されながらも洗濯物を干したり、晃に教わったレシピで肉じゃがを作ってみたり。ドジで不器用なところがあるが、素直な気持ちで受け入れるところが桂一の魅力だったりする。
途中、回想シーンで親友・剛と親しくなるきっかけになった場面が放送された。剛が同級生から変な言いがかりをつけられ、「さっさと彼女作ればいいのに」と言われると、「それ無理だからさ。俺、女興味ないから。俺、男が好きだから」と返す剛。同級生たちは「なんだそりゃ?」と鼻で笑っていたが、少し離れたところでそのやりとりを聞いていた桂一は笑っていなかった。
それどころか、体育館で剛と二人でいる時に「男が好きって、いつ分かったの?」とストレートに聞いてみたりして、剛が「ちゃんと信じるヤツもいるんだ」と驚くぐらいに桂一は素直だ。「好きになっちゃったら仕方ないじゃん。相手が男でも女でも…他の誰であっても」という言葉に、桂一の本心が表れている。
嘘だと分かっていても、妹のことを思って…
就活をしている現在でも剛は桂一のその時の言葉をしっかりと覚えていた。「他の誰であっても」という言葉を。男が好きだと言った剛の言葉を素直に受け入れたからこそ、剛も桂一に心を開き、桂一のことを、妹のことが好きだという思いも含めて、受け入れたのだろう。
しっかり者の妹と頼りなさげな兄。近所の人たちからもそう見られているが、実はそうではないのかもしれない。晃が家を出る時に、「私がいなきゃダメなんだと思ってた。そう思いたかっただけなんだよね。ケイちゃんがいないとダメなのは私の方なんだよ」と離れることになって気づいたことを桂一に伝えた。「一生ケイちゃんのそばにいられるワケじゃないんだから」という切ない思いも…。
「嘘つくとき君は笑うんだ」。第3話のタイトルは桂一の言葉だった。最後の晃の言葉も受け入れただけでなく、それまでの晃の強がりにも桂一は気づいていた、小さい頃からずっと。一人暮らしを始めたらもう帰ってこないと分かっていても、桂一はつらい思いを飲み込んで晃を送り出す。桂一、晃、それぞれが表に出さない“思い”を考えると切なさがより増してくる。
離れての生活が始まり、2人にどのような変化が起こるのか? 第4話の展開も気になるところ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部