「登場人物の心情を思い浮かべながら楽しんでほしい」(染谷)
──では最後に、映画の見どころをそれぞれお願いします。
稲葉:今回、芝居のやり方を従来の映画とは変えています。例えば、悲しいときでも悲しい表情をしないんですけど、「今、この人はきっと悲しいんだろうな」と見ている方に感じてもらえる作品になっています。そのため、最初は静か過ぎると感じるかもしれませんが、噛みしめて見ていただくと、染谷さんが細かく演技しているところや、美月喜さんのきれいな動き、あと、かしめさんも何か意識してやっていると思うので、そうしたところを見ていただけたらと思います。
かしめ:僕もちゃんと意識して演技しましたよ! 特に寝ているシーンにすごくこだわりました。お尻の搔き方とか(笑)。初めての演技だったんですけど、普段の僕は喋ることが仕事なのに対し、劇中の竜は口数が多くなくて、体が先に動くタイプの人間。そんな竜のキャラクターが見ている方に少しでも伝わればいいなと思います。あと、真英のベッドで竜が寝ていて、真英が竜の背中に手を置くシーンがあるんですけど、僕は本当に爆睡しています。手を置かれてハッと起きるので、そこもお楽しみに(笑)。
吉田:日常の中で非日常的なことが起こるというシリアスな内容なんですけど、映像で見てみると全然重い雰囲気ではないです。それは、ロケ地が稲葉監督が実際に住まう家で、キャストのみなさんと和気あいあいとリラックスして撮影できたからだと思います。そうした柔らかな雰囲気を感じ取っていただけたらと思います。
染谷:なぜ真英が休養しているのか、なぜ竜が事件に巻き込まれたのか、など具体的なことをあえて描いていない作品です。そのため想像の余地がたくさんあるので、監督も言っていましたが、登場人物が何を考えているのかを思い浮かべながら、楽しんでいただきたいです。あとは、作品の中で3人は何もしない時間を過ごすわけですが、そういう時間って実は大切だと僕は思っています。今忙しい方やこれから忙しくなる方など、みなさんの状況もさまざまだと思いますが、こういう時期を過ごすのもいいなと共感していただけたら、うれしいです。
取材・文=河合哲治郎