性格は正反対でライバルだけど名コンビの倒理と氷雨
天川の言葉が、まさに本作の見どころだ。倒理は頭を働かせて鋭くさまざまな物事を見ていく。一方、氷雨は、決が「固い記事から下世話なものまでよく集めたな」と言うほど、さまざまな事件をスクラップするのが毎日の日課。倒理は「真面目か」とツッコむが、それが事件に潜む謎をあぶりだす。
どちらが主に事件の担当か主張し合うが、やはり二人は“かけ算”。今回の美影が考え出した超難易度トリックに頭を悩ませていた倒理は、「不可能、不可解、どちらか解ければ、一気にひも解ける」と言う。それに対して氷雨が返した「待ってる、僕のターンまで」が、ヒントに。会話の掛け合い、頭脳とタフまたは丁寧な行動の掛け合いが、トリック解明へとつながった。
トリックは、倒れるときにシャンパングラスを落とすのを計算に入れ、スピーチ台に前もって塗られていた毒がシャンパンから検出される状況を作り出していた。あたかも偶然手に取ったシャンパンに毒が含まれていたように見せて、事前に毒を飲ませて、壇上で倒れる計算もされていたのだ。
そして、動機は南雲が絡んでいた建設現場で起きたクレーン転倒による死亡事故。犯人は南雲の運転手・堀田(長田成哉)で、彼は当時、クレーンを運転する一人だったが悪天候で怖くなり、別の者に任せてしまった。自分が起こすかもしれなかった事故だったのだ。
そして、堀田がそのときの関係者だと知りながら雇った秘書の浦和は、実は南雲に納期に間に合わせるように進言していたのが自分だったため、堀田をかばっていた。氷雨は「しょく罪の連鎖」だと指摘した。
倒理と氷雨は不可能、不可解をそれぞれ得意とするが、今回のように事件解決にはどちらも欠かせない。ライバルにして名コンビであるがうまく掛け合い、片方が前に出て、もう片方は後方支援して、そんな関係で事件に挑む姿は、新しい探偵ドラマを成り立たせる。それを見せる松村と西畑の演技の掛け合いもピタッとはまっている。
美影との対峙も気になるところだが、次回8月26日(土)放送の第4話で、倒理と氷雨は消えた女子高校生の謎に挑む。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
ソニー・ミュージックレーベルズ
発売日: 2023/08/30