宮藤官九郎脚本作品「ゆとりですがなにか インターナショナル」(10月13日[金]公開)の公開も控える俳優の仲野太賀が、仮設住宅の街で個性豊かな住民たちが繰り広げる青春群像劇「季節のない街」(ディズニープラス「スター」で全話独占配信中)に出演。同作は、1970年に黒澤明監督が「どですかでん」のタイトルで映画化したことでも知られる山本周五郎の同名小説をベースに連続ドラマ化。「季節のない街」では、宮藤が企画・監督・脚本を務めている。12年前に起きた“ナニ”を機に建てられた仮設住宅のある街を舞台に、池松壮亮演じる“半助”こと田中新助の目線を通して、その街で暮らす人々の生活をコミカルに描く。このほど、主人公の半助を街の青年部に引き入れるタツヤを演じている仲野にインタビューを実施。役への思いや撮影秘話、自身の俳優人生における“運命的な出会い”などについて語ってもらった。
タツヤは「ちょっと複雑な気持ちをはらんだ人」
――タツヤはどんな人物ですか?
タツヤは“ナニ”の被害に遭って、仮設住宅がある街で暮らすことになりました。その街で育ち、その街を愛し、誰よりも街が良くなっていくことを考えていてカフェを作りたいという夢を持っていて。でも、家族との確執と言いますか、お兄さん(シンゴ:YOUNG DAIS)に対するコンプレックスがあって、母親(しのぶ:坂井真紀)のことは好きなんだけど兄に対する母親の態度は好きになれない。そういうちょっと複雑な気持ちをはらんだ人です。
その根底にはどうしても“ナニ”があるし、タツヤの家庭の事情とかを考えると悲しい側面ばかりが見えてしまうんですけど、それでも生きていこうとする彼の強さとかポジティブさ、明るさみたいなものが絶対必要だなと。街を象徴する1人の青年ということに加え、タツヤ自身が持つ明るさや前向きさを大事に演じました。
――タツヤが母と対峙(たいじ)するシーンは、とても印象的でした。
あのシーンのセリフはタツヤからしたらすごくつらくて。でも、お母さんもお母さんなりの思いがあって、何かすれ違っているんですよね。どっちが悪いとかではなくて、どっちも自分の中に信じる正しさがある上ですれ違ってしまっているので、それを分かった上での切なさもある。坂井さんが素晴らしいお芝居をしてくださったので、それを真に受けてしまうと早々にこっちの胸が張り裂けてしまいそうで。その感情のコントロールが難しかったです。
――坂井さんも全身でぶつかってきた感じでしたよね。
いやぁ~、ちょっとびっくりしましたね。伝わって来る波動がすごかったです。自分も精いっぱいタツヤとして、その思いを受けて演じなきゃいけないなって思いました。
――家族に対して複雑な思いを抱くタツヤにとって、半助(池松)とオカベ(渡辺大知)はどんな存在ですか?
数少ない同世代の人間で、もしかしたらこういう“ナニ”がなかったら出会ってもいないし、仲良くさえなっていないんじゃないかなと。それぐらい、それぞれ違う個性を持っているんです。環境が人の関係を作るというか、偶然出会っちゃった3人なのかなと思いました。
オカベっちに関しては、街の人ではないけど非常に心地の良い関係。半助に対しては物語が進むにつれて歪みというか疑念みたいなものが段々浮かんでくるんです。でも、タツヤの不思議なところでもあるんですけど、そういうものが根底にありながらも普通に友達でいられる。
タツヤの中には感情の振り幅が結構あったりしてシーンごとに閉まっていた扉が開いたり、腹の底にあるものを1回置いといてその場を楽しんだり。過去を引きずらないというか、そういう図太さみたいなものがタツヤという人間を形作っているような気がします。
青年部3人のシーンでは池松からの“リクエスト”も
――3人のシーンでは、みんなでアイデアを出し合っていたとか?
全部が全部じゃないですけど、ここはちょっと遊びを入れたいなっていうシーンはなるべく能動的にやらせていただいて。それが要らなかったらカットしてもらえばいいかっていう感じでいろんなことを試すことができました。
――現場で一緒に作り上げていく感覚が強かったんですね?
そうなんです。特に壮亮くんからはいろんなリクエストが。一度「踊れ」って言われたから踊ってみたら宮藤さんから「違う」って却下されて(笑)。これは僕のアイデアじゃなくて壮亮くんがやれって言ったんだけど…(笑)。なんて思いながらもそうやってインスピレーションをもらうことがありましたし、とても楽しい現場でしたね。
――宮藤監督の演出で印象に残っていることはありますか?
ご自身が脚本を書かれているっていうこともあるんでしょうけど、膨らませるところと抑えるところのバランスの取り方がすごい。あれだけの数のキャストがいて、それぞれの個性も強い。なおかつ、根底に悲しい出来事がある上でたくさんのユーモアを込めて作られているので、このシーンはここにスポットが当たったほうがいいというそのさじ加減が本当に的確。もう、安心感しかなかったです。
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/a-town-without-seasons/
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