コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家の栗原さくらさんが描く『君を紡ぐ』の完結にあたる第4話をピックアップ。
X(旧Twitter)で2023年8月28日に投稿したところ、1万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、栗原さくらさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
人間とゾンビの友情はいつまでも続くのか…
この物語の登場人物であるつむぎと知世(ちせ)は親友同士。裁縫が得意なつむぎは、おてんばな知世の破れた制服を縫ってあげるのが日課だった。そして、今では知世の脆くなった手首を縫い合わせている。
つむぎの親友である知世はゾンビになってしまっていた――。しかし、二人は変わらず仲のよい関係を続けている。人間かゾンビかなんて関係ない、二人にとってお互いはかけがえのない親友なのだ。
ゾンビは人を襲って食べる。だけど、知世は違う。人は襲わずに、お腹が空いたら植物を食べて過ごしていた。だから、人間とゾンビであっても、いつまでもずっと仲良く二人でいられると思っていた。
しかし、状況が一変する。とあることがきっかけで元気をなくしてしまった知世がゾンビの本能を止められなくなり、つむぎに襲い掛かってしまうのだった。かすかに残る理性で、噛み付くのを堪えているのがわかる。
もしかしたら、つむぎはいつかこうなることがわかっていたのかもしれない。いよいよこの時が訪れてしまったことに涙が溢れてくる。しかし、つむぎの行動に迷いはなかった。この期に及んでも、つむぎにとって知世は大好きな大好きな存在だ。
つむぎは自分のバッグから飛び出したハサミを強く握った――。
果たして結末はどのような方向へ向かうのか。つむぎと知世はもう一緒にはいられないのか…。作者である栗原さくらさんのこだわりが詰められたラストとなっているので、ぜひ漫画で二人の結末を見届けてほしい。
作者・栗原さくらさん「大衆の求める結果にならなかった作品の方が強く印象に残っていた」
――『君を紡ぐ』を描き始めようと思ったきっかけや理由などをお教えください。
ゾンビ映画が好きで色々観ていました。
人間がゾンビたちに襲われたり戦ったりする、所謂ゾンビパニックものが王道として沢山の作品がありますが、その中でほぼ必ず人間たちは仲間割れをしたり、裏切ったりします。(ストーリー上、仕方のないことなのですが...)
ところがゾンビたちはその逆で、同種同士危害を加えることはほとんどありません。
仲間を大切にし、そして「人を食う」という同じ目的に向かって切磋琢磨している。
だんだんとそんな風に見え始め、ゾンビたちの「生き方」に興味を持ちました。
――今作を描く上で、特に心がけたところ、大切にしたことなどをお教えください。
「ゾンビ」というキャラクターが持つ暗い部分をしっかりと描くことです。
自分自身、ポップで明るい世界観であったりキャラクターを動かすことが第一に得意だと自負しており、それと「暗さ」は対照的で相性が良いと感じたので、どちらかの要素に偏り単調になってしまわないよう注意しながら描きました。
――今回投稿したお話の中で、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
第4話の中盤、お互いがお互いを護るために決断をする展開です。
大抵このようなストーリーの顛末は、なんだかんだあってゾンビが人間に戻るだとか、良い感じに説得できてみんなハッピーになるだとかそういった流れになりがちな気がしており、「絶対にその展開はなぞりたくないぞ」という頑固な意志の天邪鬼が自分の中に存在していました。
そして今まで見てきた作品の中でも、大衆の求める結果にならなかった作品の方が強く印象に残っていたので、この『君を紡ぐ』に関してはそちらの方向へ進みたいと考えていました。
シリーズを始める前の構想段階から結末は決めていたので、やっと描けたという満足感もあります。
――投稿には、作品を読んだ多くの読者から反響コメントが寄せられていました。今回の反響をどのように受け止めていらっしゃいますか。
初めて描いた創作漫画だったので、読んでもらえるか不安でした。
思っていた以上の反響を頂けたことは、まずは素直にとても嬉しかったです。
ただ、評価ばかりに囚われて自分の描きたい作品が描けなくなることも同時に恐ろしく、頂いた反響をしっかりと受け止めながら、持っていかれないように心を律するということも、実はひっそりと裏で頑張っていました(笑)
――栗原さくらさんの今後の展望・目標をお教えください。
『君を紡ぐ』を描ききるために、様々なものに触れる機会を増やし、その結果、人間的にも成長することができました。
そしてその中で培ってきた種や芽をまた少しずつ大きくしていくことが、一生をかけてやるべきことだと思っています。
焦らずじっくり着実に新しい作品を生み出していくことが、差し当たっては向こう何年かの目標です。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
描きたいものを描き、それだけで生きていけるほど人生は甘くない…と感じることは非常に多いです。
ところが曲がりなりにもそれをさせて頂けているのは、他ならず応援して下さる皆さんのおかげです。
楽しみにして下さる声を糧に、これからも作品を描き続けていきたいと思っています。
いつも栗原さくらを支えて頂いて、本当にありがとうございます。