俳優の松岡茉優が10月11日、都内で行われた映画「愛にイナズマ」(10月27日公開)の完成披露上映会イベントに、ダブル主演の窪田正孝、共演の池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市、メガホンをとった石井裕也監督とともに出席した。
「これくらい気持ちよくアンサンブルが決まることは稀有」
本作の舞台は“アフターコロナ”の現代。社会の理不尽さに打ちのめされた恋人たちが、反撃の狼煙を上げるべく、音信不通だったどうしようもない家族を頼ったことで、1度は歪み切ってしまったイビツな家族がやがて“絆”を取り戻していく、という愛と希望とユーモアに満ち溢れた痛快なストーリー。
卑怯な大人に騙され大切な夢も何もかも全て奪われた末っ子の花子を演じる松岡は、どうしようもない花子の父を演じる佐藤が「(松岡は)ほとんど花子だもんね、普段も。そう思って見ていただけると」と観客に声をかけると、「でも(劇中では)『くそっ!』とか言ってるんですよ」と苦笑し、MCからプライベートでも「くそっ!」ということはあるか追求されると「基本的には申し上げないつもりでいます。例外的にはあるかと存じます」と告白した。
また、石井監督が「特別な才能を持った方々が集まると、うまくいかないことが多いんですよ。でも今回はそういうのがまったくなくて、最初は心配しましたけど、特別なアンサンブルになっているんですよね。不思議だったし幸せな時間でした」と撮影を振り返り、佐藤も「本の優秀さももちろんあるんだけど、これくらい気持ちよくアンサンブルが決まることは稀有で、楽しくてしょうがなかったです」と声を弾ませると、松岡は「光栄!我が身に余る喜び!」とにっこり。
加えて、松岡は「緊張して(撮影に) 臨みましたし、役柄的に花子が1番キレ散らかすので、この先輩方にキレ散らかさないといけないんです。私のお芝居どうだったかな、やりにくかったかなと思いながら浩市さんをチラッと見たら、ニコニコしながら『楽しいね』って。それが嬉しくて嬉しくて、私は日記を付けました」と打ち明け、「その日記をパンフレットに載せていただけることになったんです。21日間の撮影を日記に残しておりまして、秘話とたっぷり載せております」とちゃっかりアピールした。
「ここで逃げたらこういうことは一生ないなと思って…」
さらに松岡は、脚本を受け取った際「私に務まらない」と思ったそうで、「すでに家族が決まっていたので、その想定で読んだんですけど、そこで自分が花子さんの思いをすべて紡ぐことはできないと思い、逃げようとしたんですけど、ここで逃げたらこういうことは一生ないなと思って、翌日に承諾しました。18時頃に連絡があり、翌日7時に」と半日考えてオファーを受けたことを明かし、「作品が描きたいことですとか、シーンの難易度はもちろんなんですけど、石井裕也さんという方が映画監督を目指す人のことを書いたという重さですね。それは迷いました」と当時の心境を吐露した。
そんな松岡が演じる花子について、佐藤は「うちの花子が前半に映画作りに奔走しているときと、後半に家族の前で奔放な花子。この違い。こんなにうちの子は苦労していたんだと思ったところにイナズマが走りました」と映画のタイトルにかけて松岡を賞賛し、「前半と後半の花子さんを楽しんでください」とオススメした。
◆取材・文=風間直人