火・水・土・風のエレメントたちが暮らす世界を描く、ディズニー＆ピクサー最新作「マイ・エレメント」が11月1日に配信された。同作は世界興収732億円を突破するヒットを記録し、日本でも興行収入26.7億円を突破(1ドル148.72円換算／Box Office Mojo調べ)。日本版声優を務めた川口春奈、玉森裕太らの演技も注目を集めた。今回は初めての声優挑戦ながら“火のエレメント”エンバーという難しいキャラクターを演じた川口の魅力について、音楽をはじめ幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
手掛けたのはピクサー作品でもおなじみのピーター・ソーン監督
数多くのピクサー作品に携わってきたピーター・ソーン監督が、「もしも火・水・土・風のエレメントの世界があったら、どんな性格で、どんな暮らしをしているのか、どうやって触れ合う事ができるのか？」というコンセプトの世界を描いた「マイ・エレメント」。“みんな違って、みんないい。互いを認め合って、もっともっと楽しい世の中にしよう”。私はこの作品から、そんな声が聞こえてくる錯覚を、かなりリアルに感じた。
舞台となるエレメント・シティでは、それぞれがそれぞれのコミュニティに暮らしていて、一つの暗黙のルールの下に生活している。それは、「違うエレメントと関わらないこと」。確かにそれは納得がいく。物理的にも火と水が関われば互いが消えてしまうだろうし、水と風が関われば津波となり、火と風が関われば辺り一面が焼け野原になる可能性もある。が、他者に関わらないということは、拒絶とも無関係ではなく、すでに認知済みの限られた狭い世界の中に自分を閉じ込めているのとも同然だ。
それではいかにも面白くないじゃないか、一度挑戦してみなければどうなるか分からないよ、と考えるエレメントだってそれなりにいるはずなのだ。主人公の女の子・エンバーは“火のエレメント”として生まれ育ち、将来的には父親の営む雑貨店を継ぐという青写真をなんとなく描いている。そのエンバーが、あろうことか“水のエレメント”である青年・ウェイドと出会い、互いに消し合うと思ったら、逆に互いに世界が広がって、人生すなわち冒険なりと、大胆かつ爽快に動き出して、自分自身の心の奥底にあったものに気付いていくのが痛快だ。
「マイ・エレメント」の日本語吹替版において、エンバーの快活なところ、大胆なところ、繊細なところ、おちゃめなところなどを勢いよく演じたのが川口である。意外にもこれが声優デビュー作であったが、モデル・役者・司会者・バラエティーなどで着実にキャリアを重ねてきた彼女だけに、声の仕事でも確かな安定感を発揮していることは言うまでもない。今後、「マイ・エレメント」の続編が作られるごとに起用されて、“エンバーといえば川口春奈”という評価が定まっていく、そんな未来も見えてきそうではないか。
“スターの登竜門”を突破
既に“この時代のチャンピオン”的な若手女優の一人というイメージも強いことと思うが、活動キャリアは2007年までさかのぼる。同年、雑誌「ニコラ」のオーディションでグランプリを獲得したことが、本格的な芸能界入りのきっかけとなった。2009年春にはスターの登竜門「三井のリハウス」の第13代リハウスガールに選ばれ、テレビドラマに初出演。2012年の「桜蘭高校ホスト部」で映画初主演を務め、2014年には初舞台「生きてるものはいないのか」で主役に抜てきされた。大ブレイク前のこの時期に、ドラマ、映画、舞台という、発声から動きから何かと異なる3つのメディアで経験を積んだのは、しっかり彼女の糧になっているはずだ。
2021年の大みそかに放送された「第72回NHK紅白歌合戦」(NHK総合ほか)では司会者の一人として活躍し、2022年に入っても「エランドール賞」新人賞の受賞に加え、連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK総合ほか)への出演、続く連続テレビ小説「舞いあがれ！」にもサプライズ出演を果たした。同年10月クールには「silent」(フジテレビ系)の主役を務め話題をさらい、同作での演技が評価され「東京ドラマアウォード2023」で主演女優賞を獲得するなど、その勢いはとどまることを知らない。いい意味で“烈火のごとく”パワフルに国民的女優への道を邁進しているといっても過言ではない。
2024年には芸達者であり、演技に真面目かつ全力でふざけることもできる鬼才・ムロツヨシ主演の映画「身代わり忠臣蔵」に出演することが決まっている。
川口のすごいところは、演技やモデル業だけでなく「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」(TBS系)などのバラエティー番組や、公式YouTubeチャンネルの「川口春奈オフィシャル はーちゃんねる」でも、フットワークの軽いところを見せていて、“ボケ”をやるにしても全力でノビノビと取り組む姿勢は、ただただ、すがすがしい。
そして「silent」で演じた紬じゃないが、川口自身音楽も大好きで、家にいるときや移動中もずっと聴いているとのことなので、個人的には音楽方面でも何かアクションを起こしてくれることを心から楽しみにしたい。
映画「マイ・エレメント」は、ディズニープラスで見放題独占配信中。
◆文＝原田和典
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
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