「ごめん、愛してる」坂口健太郎を翻弄する女性を演じる大西礼芳の素顔とは
放送中のドラマ「ごめん、愛してる」(TBS系)で、天才サックス奏者・塔子を演じている大西礼芳。坂口健太郎演じるサトルを翻弄する自由奔放なイメージをまとう大西の素顔を探る。
サックスという共通点があって助かりました(笑)
――ドラマ『ごめん、愛してる』は現在4話まで放送されましたが、塔子役を演じられていていかがですか?
大西「塔子に関しては、見てる方も、特に前半は謎の部分が多くて、この人何なんだろう?と思ったり、理解できない部分がたくさんあったと思います。でも、話が進むにつれて、彼女の人間らしいところとか、ああいう人間性がどう作られていったかとか、それが分かる話も出てきます。
――最初に塔子役の出演オファーがあったときは、どんな印象でしたか?
大西「一番最初は台本も読んでなくて、破天荒で自由奔放な女性、それからサックス奏者ということだけ聞きました。でも私、あんまりサバサバしている人間ではないので…。自分の性格とのギャップを、どう埋めていこうかなっていうのが最初の課題でした。そこで唯一、子供のころからやっていたサックスという共通点があるのはすごく助かりましたね(笑)。まずはサックスの練習から始めて、そこから、塔子は何でサックスやってるんだろう?とか、イメージを膨らませていったんです」
――ドラマで使っているサックスはご自分のなんですか?
大西「自分のを使おうと思ってたんですけど、CM撮影だったり、路上で吹いてる人のものを奪って吹いたり、その場その場でシチュエーションが違うので、用意していただいたものを使っています」
――塔子を演じるにあたって、監督から何かアドバイスがあったりするものですか?
大西「“負けないで”って言われます(笑)。サトル(坂口健太郎)のお母さん(麗子/大竹しのぶ)が厳しいことを言っても、塔子は全然怖がってないので。麗子さんに何か言われても、別に動じないというか、むしろ麗子さんを食っちゃうくらいで行かなきゃいけなくて」
――でも、目の前には大竹しのぶさんがいるという。
大西「そうなんです。自分では強気でいったつもりでも、やっぱりどこか、大竹さんだっていう潜在意識が働くし、塔子にも優しいところや申し訳ない気持ちもあるんじゃないかなって考えちゃって…。そういうところが少しでも見えると、それが監督からしたら隙に見えるんだと思います」
――演じるのは大変ですか?
大西「あ、でも、楽しんでやっています。私、いただいた役に対して自信が持てないときは、台本を何回も何回も繰り返して読むんです。そうすると、役のキャラクターが自分に馴染んでくるというか。今回もその作業を行ったので、撮影に入るときには、だいぶイメージできてました。あと、衣装合わせも2回ぐらいしたんですけど、派手なメークや服装をしたり、髪型もちょっと変わったものだったり。そこで、何でこの人はこんな奇抜なメークをしてるんだろうって考えていくと、彼女の表面的な部分だけじゃなくて、内面も見えてきました」
――メークや服装のテイストは監督と話し合って決めたんですか?
大西「はい。あとは自分でもいろいろ検索して。例えば、ピアニストのアリス=紗良・オットさんとか、モデルのカーラ・デルヴィーニュとか、自分を貫いている人を参考にして。(役柄が)自分から遠いなと思うと、こういうことがいっぱいできるからすごく楽しいです」
撮影現場の雰囲気とは?
――現場の雰囲気はいかがですか? ドラマでは恋のライバル役の凛華を演じる吉岡里帆さんとは、今作で3回目の共演だそうですが。
大西「里帆ちゃんは京都出身なんですけど、私も京都の大学に通ってて、たぶん京都にいる時代がかぶってるんです。そういう共通点もあって、現場で一緒だとほっこりします(笑)。それに、里帆ちゃんは昔から全然変わらないので。礼儀正しくて、頭の回転が早い子だなって、いつも思います」
――共演者の皆さんとはどんな話をしてるんですか?
大西「台本のことも結構話しますね。何か、みんな自分の役だけじゃなくて、他の役の台詞のことまで話したりしてて。全体のキャラクターを見ながら演じている感じです。でも、それぞれの役に対しては、そこまで深い話はしないかな。私も、そこまで自分の役について詳しくは話したくないっていう気持ちが、なぜかあるんですよね。何か、逃げていきそうで」
――それはどういう感覚ですか?
大西「薄まっていきそうっていうか。例えば、何か悩み事があると、人に話したりするじゃないですか。話すだけで解消されたり、解放されたりしていく、それに似た感じなんですけど…。伝わりますか?(笑)」
――(笑)。それは例えば、話すことでせっかくつかんだキャラクターが逃げていきそうとか、それを口に出した瞬間、自分の中で終わっちゃう気がするとかっていう感覚ですか?
大西「あ、そんな感じです。でも、今回ご一緒してる方たちは、そういう感覚が一緒なんですよ。だから、役について話すには話すんですけど、考えるきっかけを作るような話題を投げ掛けたり、考えを狭めるんじゃなくて、広げていくようなことを話してることが多い気がします」
撮影現場の雰囲気とは?きっかけは反骨精神!? 大西礼芳が役者を志した理由
――大西さんは大学時代、俳優コースに通われてたそうですが、当時から演じることに興味があったんですか?
大西「そうですね。ただ、俳優に絞ってたわけではなくて。昔から絵を描くことが好きだったので、映画も好きだし、美術とかにも興味があって。ものを創ることがしたいっていうのが、一番の気持ちでした」
――むしろ演じる方に進むとは思っていなかった?
大西「はい。興味はあったけど、選択肢の1つってだけでした。でも、高橋伴明さんの映画でデビューする機会があって。そのときは演じるだけじゃなく、配給宣伝や映画祭で上映するとか、作品にまつわる全てをやったんです。それもプロジェクトの1つではあったんですけど、みんな創るときは意気込んで集まるのだけれど、配給宣伝の時になると、多くの人がその映画に対して無関心になってしまう事がありまして…。そのとき、それって何か違うんじゃないかなって。私はこの映画に出て、この映画を背負ってるけど、みんな創りたいだけなのかと思ったら、何かもう、役者やるしかないなって。自分はこのままこの映画を背負って役者をやっていく。そのときに、そう決めた気がします」
――そういう反骨気質みたいなものって今でもありますか?
大西「どこかにあると思います。表にはあまり出しませんけど(笑)」
――役者というものにすごく真摯に取り組んでいる印象の大西さんですが、オフの日や気分転換したいときはどんなことをするんですか?
大西「気分転換は大体寝るか、泳ぐか。あと、お酒を飲むのも好きなので、そのどれかですね」
――お酒は何が好きなんですか?
大西「ビール、焼酎、ワイン、日本酒、ウイスキーまで何でも飲めます。特に好きなのは焼酎かワインですけど、それも料理によって違いますね。自分で料理するときも、お酒に合うものを作ることが多いです(笑)」
――そんな風に適度に気分転換しながら、撮影に臨んでいるんですね。今後、ドラマは後半に差し掛かりますが、演じている立場から、塔子には最終的にどうなってほしいと思いますか?
大西「どうなっていくんだろう…全く分かりません(笑)。私の想像の範囲をはるかに超えてきそうです(笑)。でも、何か男女のことで幸せになっていなくてもいいなと思ってて。それよりも、アーティストとして、自立した輝ける女性であってくれたらって思います」
――輝ける女性の1人として、大西さん自身が今後女優として目標としていることは?
大西「いろんなお仕事がある中で、私はやっぱり映像にこだわってるところがあって。なので、日本に限らず、いろんな国の人と、いろんな映像作品を作りたいっていうのが夢です」
取材・文=片貝久美子
毎週日曜夜9:00-9:54 TBS系
おおにし・あやか=90年6月29日生まれ、三重県出身。映画公開待機作に「ナラタージュ」(10/7土公開)、「菊とギロチン ‐女相撲とアナキスト」がある