昨年11月19日に開催された「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の振り返りイベント「機動戦士ガンダムSEED FESTIVAL ~CONNECT あの時代(とき)を越えて~」で、西川貴教が2024年1月26日(金)から劇場公開される最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の主題歌を担当することが発表された。西川と言えばアニメをはじめとする数々の作品のテーマ曲を歌い、「SEEDシリーズ」でも「INVOKE -インヴォーク-」「ignited -イグナイテッド-」(共にT.M.Revolution名義)などの名曲を残している。また、エンディングテーマには石川智晶と梶浦由記のユニット・See-Sawによる約19年ぶりの新曲「去り際のロマンティクス」が起用される。See-Sawも「SEEDシリーズ」に「あんなに一緒だったのに」「君は僕に似ている」という名曲を刻んでいる。音楽好きの方は、「アニメは知らなくてもこの曲は知っている」という記憶もあるだろう。名作に名曲ありと言われるように、「SEEDシリーズ」はアニメとしてのヒットだけでなく、音楽チャートにもヒット曲を多数送り出した傑作だ。『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEEDDESTINY』のテレビシリーズ、スペシャルエディション、HDリマスターの楽曲は併せて30にも上るという驚異的な数。そのため代表曲のみになるが、ここで名だたるアーティストたちが刻んだ「SEEDシリーズ」の楽曲を振り返ってみたい。
『SEED』OPと言えば「INVOKE -インヴォーク-」。ヒットソングを生むアニメとアーティストのタイアップ
アニメとアーティストのタイアップはヒットソングが生まれる近年の王道パターンになっており、すぐ頭に浮かぶところではYOASOBIの「アイドル」(2023)、LiSAの「紅蓮華」(2019)、Linked Horizonの「紅蓮の弓矢」(2013)などがあるだろう。今ではどの作品も当たり前のようにテーマ曲に有名アーティストを起用しているが、その“はしり”は杏里が歌った「CAT’S EYE」(1983)と言われている。同曲はアニメソングで初めてオリコン週間チャート1位、月間チャート1位を獲得。杏里はこの曲で同年の紅白歌合戦にも出場している。“Get Wild退勤”で最近また流行り出したTM NETWORKの「Get Wild」(1987)も当時はすさまじい人気ぶりで、アーティストのポップミュージックとアニメソングの垣根を取り払うものだった。
こうしたアーティスト起用はガンダムシリーズでも行われ、『機動戦士Zガンダム』(1985)の主題歌「水の星へ愛をこめて」は森口博子の歌手デビュー曲となったことがあまりにも有名だ。他に『機動戦士Vガンダム』では人気ロックバンドLINDBERGのメンバーだった川添智久が主題歌を担当し、『∀ガンダム』では西城秀樹が歌う印象的な主題歌が世間を驚かせた。そして、2002年放送の『機動戦士ガンダムSEED』だ。ここでもっとも大事なオープニング曲を歌ったのが、T.M.Revolutionだった。
ミリオンセラーを持ち、若い世代から大きな支持を受けるトップアーティストを起用したのは単なるセール目的ではなく、『SEED』は音楽でもトップを取るという意気込みのようだった。第1クールの主題歌になった「INVOKE -インヴォーク-」(2002)はオリコン週間2位を記録。惜しくも首位は逃したものの、リベンジは『SEED DESTINY』の第1クール主題歌「ignited -イグナイテッド-」(2004)で果たされる。こちらもT.M.Revolutionによるもので、自身6年ぶりの週間チャート1位。同時に同曲はガンダムシリーズで初の週間チャート1位という記録も達成した。
どちらも西川の歌唱力が爆発するドラマティックな神曲だが、特にこれから始まる激闘の世界観に飛び込んでいくイントロは秀逸。これが流れだすだけで体がリズムを刻み、20年以上経つ今でも聴き飽きないキラーチューンとして記憶に刻まれている。
切なさが込み上げる「あんなに一緒だったのに」「Reason」
オープニングがT.M.Revolutionなら、エンディングはSee-Sawの「あんなに一緒だったのに」(2002)を挙げさせてほしい。この曲も『SEED』の記憶を強烈に呼び起こす。音色は言うに及ばず、冒頭の歌詞からとにかくエモいのだ。
「あんなに一緒だったのに 夕暮れはもう違う色」
アニメを観ていなくても泣ける曲だが、観ればキラとアスランの切ない情景が目に浮かびなおさら泣けてしまう。フェンス越しに再会した2人にこの曲が被るPHASE-28「キラ」は、「SEEDシリーズ」の屈指の名シーンとして知られている。ボーカルの石川智晶、キーボードの梶浦由記による音楽ユニットSee-Sawは今ほど知られる存在ではなかったため、同曲で2人を知ったというファンも多くいるだろう。週間チャートは5位。後にアニメソングのヒットメーカーとなる梶浦の出世作として語られてもいる名曲だ。梶浦は、その後も音楽ヴォーカルユニット「Kalafina」や、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』主題歌、LiSAの「炎」など数々のヒット曲を生んでいる。
また、エモいエンディングでは『SEED DESTINY』第1クールを飾った玉置成実の「Reason」(2004)も忘れられない名曲だ。同曲は週間チャート2位を記録。当時、街に出たら聴かない日はないくらい有線で流れていた記憶がある。
「遠く離れてるほどに 近くに感じてる」
このサビの入り方がとりわけ締め付けるように切なく、全話観たあとに聴き直してみると、キラとアスラン、シンとステラ、ムウとマリューなど、作中戦禍に翻弄される様々な2人の想いが再び重なり見えてくる。逆にたとえアニメを観ていなくても、歌だけで泣いてしまったという人もいるだろう。それほどに感情を揺さぶってくる曲だった。
石井竜也、中島美嘉、CHEMISTRYもテーマ曲を担当
個人的に「SEEDシリーズ」で特に印象的な曲はこの4曲だが、『SEED』のエンディングでは石井竜也、中島美嘉も歌っており、特に中島がアニメソングを提供したのは今曲の「FIND THE WAY」(2003)が初。週間チャート4位を記録し、『SEED』の最終回を飾った曲としてSEEDファンの記憶にも強く残っているだろう。また、『SEED DESTINY』にはHIGH and MIGHTY COLOR、高橋瞳、CHEMISTRY、有坂美香、Rie fuも参加し、それぞれが歌った曲はいずれも週間チャート上位に入る反響を呼んでいる。色とりどりの楽曲群だけに、SEEDファン、アーティストファンによって推しの楽曲はまた異なることだろう。
アニメ番組が楽曲拡散の強いプラットフォームになりつつあった時代とは言え、同一作品の中にこれだけの錚々たるヒット曲、有名アーティストが並ぶのは定番番組でもない限りはやはり異例のことだった。レコード会社が「SEEDシリーズ」に向けていた期待値の高さもこのネームバリューからうかがえるところである。また、「SEEDシリーズ」では主題歌とは別に挿入歌もふんだんに制作され、田中理恵によるラクス・クラインが歌う歌は安らぎを与えてくれるような良曲だった。後に『SEED』『SEED DESTINY』がスペシャルエディション、HDリマスターとして新規映像化された際には、新たにいくつかの主題歌が生まれてもいる。
なお、『SEED FREEDOM』では玉置の新曲「Reborn」もオフィシャルサポーターソングとして起用されている。“再会”をテーマに作詞された同曲、ガンダムチャンネルにてLyricVideoが公開されているのでぜひ視聴してみてほしい。
文:鈴木康道
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