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大便表記論『妄想ハナコ』/テレビお久しぶり#82

2024/01/12 21:30

「テレビお久しぶり」
「テレビお久しぶり」(C)犬のかがやき

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『妄想ハナコ』(毎週火夜25:56-、テレビ朝日)をチョイス。

大便表記論『妄想ハナコ』


『うんちVSおなら 完全決着』という文言の踊るサムネイルを見て思わず再生してしまった『妄想ハナコ』は、当連載でも過去に取り上げた『140×875』から改題されたハナコの冠番組。今回のテーマは”究極の2択討論”で、世に跋扈する究極の2択を、徹底討論の末に白黒ハッキリつけていくというものだ。出演者はハナコ(岡部は体調不良で欠席)、ラランド・サーヤ、ネルソンズ・和田まんじゅう、マヂカルラブリー・野田クリスタルの5人が、白熱した議論を繰り広げる。15分ほどの尺なのだが、これはめちゃくちゃ面白い番組だった。

さて、番組内では、議題となる”究極の2択”が3つ用意されているのだが、当記事では”うんちとおなら、面白いのはどっち?”という議題のみを扱わせてもらう。私も是非議論に参加させてもらいたいのだが、私は、うんちとおならどっちが面白いのかについては興味がない。というより、明確に、うんちのほうが面白いと自分の中で答えが出ている。議論の中でサーヤが主張していた「おなら越しにうんちを見ている(からうんちのほうが面白い)」という意見に完全同意というか、まずうんちがあって、次におならがあるのだから、おならのほうが面白いというのは、そもそもどこか破綻しているように感じられる。おならはうんちから出ているとも言えるわけで、おならのみを肯定するのであれば、ゲッツは面白いけどダンディ坂野は面白くない、というような矛盾が発生する。ゲッツはダンディ坂野から発されているのだから、ゲッツが面白い、というのは、ダンディ坂野が面白い、というのと同義なわけで、うんちとおならの関係も同様である。うんちをするときにもブビッブビビビビビブビビとおならが出るわけだ。うんちを肯定するならおならも肯定し、うんちを否定するならおならも否定しなければならない。うんちとおならのどちらがより面白いのか、という議題そのものが破綻していると、私はそう考える。論理性を保つのであれば、うんちとおしっこのどちらが面白いかを争うべきであった(うんちの圧勝でひどくつまらないものになっていたであろうが)。

興味が無いと言いながら長々と語ってしまったが、私が本当に議論したいのは、「うんち」と「うんこ」についてである。さらに言うならば、「うんち」「ウンチ」「うんこ」「ウンコ」、この4つのうち、どれが一番面白い表記なのか、私はずっと考えてきた。悩ましいテーマではあるのだが、ひとつだけ、簡単に除外することができる。それが「うんち」である。私は、うんちVSおならで白熱する議論を見ながらずっと、そんなことより「うんち」という表記について誰か文句を言ってくれ、と悶々としていた。私は「うんち」という表記が嫌いだ。あざとい。平仮名でうんちは、あざとい。かわいくあろうとするべきではない。ウンコ(私はこう表現する)の面白さを拝借しながら、生々しさ、禍々しさからは最大限に距離を取ろうとするその姿勢が不誠実極まりないと言っている。「うんち」と表記したほうが面白い瞬間などありはしない。百歩譲って「ウンチ」とするべき。カタカナウンチもまだ弱いが、かわいげだけではない個性がある。「ウンチ」が正しい瞬間というのはまれにだが確実に存在し、ふいに遭遇したときに手際よく繰り出せるかどうか腕を問われるだろう。初心者が扱うべきではない。「ウンコ」でいいのだ。カタカナウンコが最もスタンダードかつ、嫌味もない。我々の知っているあの大便は、「ウンコ」である。「うんち」など、まるで冷蔵庫にでも入っていそうな響きだ。「うんこ」も悪くないだろう。実物のウンコに対して、適度な距離感を保ちつつ、確実に接近したうえで、その魅力を取り出している。しかし、「うんこ」にも、どこかあざとさが残る。「うんち」がキュートであるならば、「うんこ」はアンニュイだ。あざとさの目立つのは前者だが、真に邪悪なのは後者であるとも言えるかもしれない。つまり、「うんち」に対して冷めた目線を向けている「うんこ」は、「うんち」のあざとさを常々に感じていた層をどっと味方につけ、自身のアンニュイさで魅了するような節がある。「うんこ」は冷笑的なのだ。それらを加味したうえで「ウンコ」は、やはり、その圧倒的な力とオールマイティな活躍から、大便表記界において、頂点に君臨していると言わざるを得ないだろう。

順位をつけるならば、「うんち」<「ウンチ」<「うんこ」<「ウンコ」。「ウンチ」と「うんこ」は、微差で「うんこ」が上をいくものの、同列に近い結果だ。重要なのは、「うんち」が最下位であり、「ウンコ」が頂点である事。これは、もう何年も前から、自分の中で変わらない考えだったのだが、ここ最近になって、初めて揺らぎ始めた。「うんち」という表記が最も適切なのではないか、と思われるものが現れたのだ。それが、M-1グランプリ2023の敗者復活戦、スタミナパンの漫才である。「ほんとにうんちしてまーす」というフレーズ、これは、「うんち」嫌いの私を大笑いさせただけでなく、このフレーズでは「うんち」を用いることが最も適切だったのではないか……?とまで思わせた、革新的な瞬間であった。もちろん、”うんちに絶対はない”のだし、「うんち」を用いることが最も適切であったかどうかは分からない。しかし、私の便秘のように凝り固まった大便表記観に穴をあけてくれたスタミナパンには、感謝の意を表したい。

さて、「おなら」と「屁」のどちらが面白いかについての議論は、また今度。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

城戸(きど)

X(旧Twitter):@sh_s_sh_ma

1996年生まれ。映画を観るのが好きなフリーライター。オモコロなどWEBメディアを中心に活躍。

TVer「妄想ハナコ」

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