コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、ひろぽん酢さんの「自分を好きになるために、歯並びを治してみた～5年5か月100万円！大人の歯列矯正物語～」。
この作品は、2024年1月18日にX(旧Twitter)にて投稿されると、瞬く間に5000件以上のいいねを集めて話題になった。このポストには「勇気をもらった」「めっちゃ共感した！」「歯並びって誰のせいでもないから辛い…」といったコメントが殺到。この記事では作者のひろぽん酢さんに、作品のこだわりなどについてインタビューを行った。
自分を好きになるための大きな決断
私にはコンプレックスがある。それは、歯並びが悪いこと。
この歯並びを他人に見られてはならないと、とにかく隠して生きてきた。
私も友達みたいに楽しく笑いたい。
自分から写真撮ろって言えるようになりたい。
可愛いという褒め言葉を素直に受け取れるようになりたい。
そんなとき、たまたま見かけた矯正100万円の広告。一日中頭から離れなくなった。
130万円もの貯金に病院選び、歯を8本抜くという決断にも迫られ…
5年5ヶ月、自分を好きになるための、覚悟と勇気の歯列矯正が始まる。
作者・ひろぽん酢さん「みんなが自分のことを好きになれたら」
ーー『自分を好きになるために、歯並びを治してみた～5年5か月100万円！大人の歯列矯正物語～』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
自分の歯列矯正が終わったタイミングでこの本の元となったエッセイ「歯の矯正で人生が変わるエッセイ」をx(旧Twitter)に投稿しました。その時はみんなに知ってもらおうという感じではなく、友人達に「歯列矯正でこんなことしたよ〜」と伝えるために描いたのですが、想定以上に拡散されて、たくさんの人から共感の声をいただきました。そこからしばらく経ってから書籍化の声をかけていただいたのですが、それまでは短いコミックエッセイのようなイラストはありましたが、長い漫画を描いたことが一度もなかったので迷っていました。そんな時にXで知らない人からDMが届いたんです。「歯の矯正で人生が変わったエッセイを読んで矯正を始めて、もうすぐ終わります。あの時エッセイを読んでいなかったら矯正をやっていなかったと思います。背中を押してくれて、漫画を描いてくれて本当にありがとうございます」という内容でした。
そのDMがめちゃくちゃうれしかったんです。人の背中を押せるってこんなにうれしいことなんだと、初めて実感しました。同時に、書籍化したら、今矯正をするかどうか悩んでいる人や矯正のことを知りたい人、歯にコンプレックスがある人の助けになれるんじゃないか、とも感じました。コンプレックスと向き合うすべての人にエールを送れる作品にしたいと思い、今回の『自分を好きになるために、歯並びを治してみた～5年5か月100万円！大人の歯列矯正物語～』を描きました。
ーー今作を描くうえで「こだわった点」や、「ここに注目してほしい！」というポイントがあればお教えください。
こだわった点は、私の歯並びのありのままを描くというところです。基本的に、誇張したりデフォルメしたりはしていません。(幼少期のあたりは多少デフォルメしていますが…)
当時の彼氏に「エイリアンみたい」と酷評された私の矯正前の歯並びの四面図(上下左右の四方向から撮影した写真をもとに描いた図)が描いてあるページがあるんですけど、実物に忠実に描いています。私は特に叢生(そうせい・歯が前後に重なっていてガタガタ)と出っ歯がひどく、犬歯も上の方から生えていて八重歯がありました。
自分の歯並びって、正面以外の角度から見ることってほぼありませんよね。私自身、歯医者さんで自分の歯を撮影した写真を見るまで「人よりも少し出っ歯だもんな〜」ぐらいにしか思っていなかったので、驚愕しました。「私の歯って、横から見たらこんなに前歯飛び出してんの！！？」と。叢生も八重歯も、現物はなかなかエグくて「私、よくこんな歯並びで今まで生きてたな……」と本気で思いました。もともと、どんな歯並びだったか。このページはぜひ注目してほしいです。
ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
どのシーンも思い入れがありますが、高級歯医者Y病院に説明を聞きに行っているところが特に好きです。高級だけあって、Y病院では超美人の受付の女性がひざまずいて応対してくれたり、ロッカーのキーホルダーがやたらハイブランドだったりと、いわゆる保険診療で行く一般的な歯医者とは雰囲気が全然違うんです。こだわりを通り越した、院長の情熱を感じてしまいました。待ち時間にアロマ香る足湯に浸かり、超美人の受付の女性が私の足を拭いてくれる歯医者に行ったのは、あの日が最初で最後です。
あとは、矯正が始まって最初のワイヤーをつけてすぐに食事をしようとするシーンですね。超超超・激痛があるんですけど、その痛みを「口内ビッグバン」と表現したのもお気に入りです。このシーンが描けたとき「自分、天才！」と思いました。まさに自画自賛(笑)。この表現は、矯正経験者に強く共感された部分でした。本当に口の中で宇宙が誕生したかのような壮絶な痛みでした。
ーー歯を8本も抜くのは相当な覚悟が必要だったと思います。背中を押してくれたきっかけなどがあったのでしょうか。
親知らずの4本と、前歯から数えて4番目の歯を4本、合計8本抜きました。親知らずはさておき、虫歯でもない健康な歯を抜くことに対して否定的な考えを持つ人もいると思います。知り合いにも「健康な歯を抜いてまで、歯列矯正するの？」と聞かれたこともあります。
それでも抜歯を決心したのはS病院の先生の「8本抜けば、きれいになりますよ」という言葉です。「こんな歯並びの私でもきれいになれるんだ…」とうれしかったので、先生の言葉を信じて勇気を出しました。始まる前は怖かったですが、実際抜歯してみると麻酔のおかげで、施術の最中はまったく痛くなかったです。終わったあとは痛み止めを飲んで、やり過ごしました。８本も繰り返すと歯を抜くことに慣れて、驚くとか怖いとかの感情がなくなっていきました。虚無の境地でした(笑)。
ーーひろぽん酢さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。
今後も私が体験したことを漫画にして伝えていきたいと思っています。特に美容系に力を入れたいです。2024年3月10日に開催された九州コミティアでは個性的美容系サロンで不思議体験をした話の本を出しました！通販もやっているのでぜひ読んで欲しいです！『自分を好きになるために、歯並びを治してみた～5年5か月100万円！大人の歯列矯正物語～』とはちょっと毛色が違うギャグ要素強めの作品になってます！
ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
人には、それぞれの悩みがあると思います。私の場合は、自分の歯並びに対するコンプレックスでした。この本を読んで「同じように悩んでいる人はいるんだ、自分だけじゃないんだ」というメッセージが伝われば嬉しいです。そこからどういう行動をするか、現状維持でいくのかはその人によります。やる方がすごいとか、やらない方がいいとか、そういうことではありません。自分が納得いく道を選ぶのが大事。そうして、みんなが自分のことを好きになれたらいいなと思います！！そんな気持ちで描きました。ぜひ読んでください！
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
