初め、完全な“悪役”として登場した道兼。第1回ラスト、道兼がちやはを鬼の形相で刺し殺すシーンは衝撃で、視聴者からも驚きと恐怖の声が上がった。第5回で道長に「6年前、人を殺めましたか」と問い詰められ「虫けらの一人や二人殺したとて、どうということもない」と吐き捨てたシーンも狂気じみていて、深い闇を感じさせた。
だが、その後は少しずつ、別の顔も見せ始めている。第6回では兄・道隆(井浦新)から「父上に無理をさせられて疲れておらぬか」と思いやりある言葉を掛けられ、感極まって涙を流す場面も。視聴者からも「道兼に同情してしまった」「道兼、本当はすごく真っすぐで純粋な人なのかも」といった声が上がり始めている。一方で、兼家が倒れてから突如為時に近づき始めた道兼の動きに何か意図のようなものを感じる視聴者も。
ちやはを刺すシーンや道長を睨みつけるシーンで見せた狂気の表情。そして、琵琶を弾くまひろに向けた、真っすぐでどこか寂しげなまなざし。そんな道兼の二面性を、玉置が見事に演じている。二つの顔のうち、一体どちらが道兼の本当の姿なのか。人間らしい“業”に満ちた興味深いキャラクターだということは間違いない。
「存分に嫌われようと思って」
道兼役の玉置は、同じく大石静氏が脚本を手掛けた「恋する母たち」(2020年、TBS系)でも妻を裏切る不倫夫という“汚れ役”を演じた過去を持つ。
第8回放送後に「光る君へ」番組公式サイトで公開されたインタビュー動画では「台本読んだ時点で、うわ、これは嫌われる…なんで大石さん、また俺に嫌われる役を振ってるのよって思いました」と語った玉置。
一方で、「嫌われるからこそ、その先の道兼のドラマが面白くなってくる」「存分に嫌われようと思って、ドンと来い!という覚悟で撮影していました」とも発言。主人公に恨まれ呪われるキャラクターを楽しんで演じている様子だ。
3月3日(日)放送の第9回「遠くの国」は、道兼が花山天皇(本郷奏多)の信頼を得始める展開。予告では、道兼が花山天皇に「おまえは分かってくれるのか」と言葉を掛けられる場面も確認できる。藤原道兼は、今後さらにストーリーをかき乱す人物となりそうだ。