「おんな城主 直虎」(NHK総合ほか)の主人公・直虎(柴咲コウ)を支えつつも、今川寄りの家老として仕える小野政次役を演じる高橋一生。今川側をだますため、あえて井伊では、嫌われ役を買って出ていた政次。だが、その狙いを直虎に見抜かれた政次は、今では裏で直虎と共に井伊家が治める小さな土地を守るための重要な人物だ。歴史上では裏切り者として知られている政次だが、演じる高橋はあくまで“「直虎」における政次”を重視して向き合っていると語る。
「大河ドラマは史実を基にしてはいますが、お芝居をさせていただいている者としては、現場で作っているものが全て。歴史は変えられるものではありませんが、あまり史実を意識してしまうと結末から逆算した精神状態になってしまう。僕はそれは正しいとは思っていなくて、(脚本家の)森下佳子さんが書かれているものや、スタッフが作ろうとしているものが答え。史実を踏まえながらも、その行間を描く森下さんの脚本に寄り添い、作品の一部になっていくことで、見る方の想像力を刺激できたらと思いながら演じています」
また、高橋は実際の政次は歴史書の中で書かれるほど、嫌われ者ではなかったのではないかと想像する。
「小野家代々の墓は、直虎と同じ龍潭寺にあるんです。それだけで小野家が、そこまで嫌われていなかったということが一目瞭然。では、なぜ歴史上で嫌われている人物となったのか? それは僕たちが歴史や人物の一部しか見てないからだと思うんです。でも、井伊谷に墓があり、塚がいくつか点在していたり、寺社に祭られていたり、但馬守としての足跡が残っているということは、政をしっかりやって認められていた人間だったのだと思います。森下さんも、政次だけではなく登場人物ひとりひとりの人生をないがしろにせずに、そこをきちんと脚本に書いてくださっている。僕はその脚本に盲目的に従ってお芝居してきただけで、そう思える力のある脚本だったのだと思います」