過酷な奇跡の代償を負わなければならない雨が悲し過ぎる
視覚を失う前に入院中の母に会いに行っていた雨は、帰り道で渋滞にあい、天候により花火が中止になるかもしれないと聞いた。だが、太陽から電話で「絶対に信じて来てほしい」と言われ、待ち合わせ場所まで触覚のない体で急いだ。
千秋によりできた、つかの間の月明かり。太陽と合流し、打ち上げの時を待つ雨。タイムリミットまで10分。その時間を惜しむように太陽の顔を見つめる雨の姿が愛おしい。
安全確認を終え、ようやく1発目の花火が上がった。太陽の花火はその次だ。しかし、プログラムの不具合なのか続かない。視聴者の誰もが固唾をのんで見守ったことだろう。
ようやく、千秋の形見であり、雨と太陽の思い出である“赤い傘”をイメージした太陽作の真っ赤な花火が打ちあがったとき、無情にも雨の視覚はタイムリミットを迎えていた。
花火が上がった場所とは見当違いの方向を向いて「きれい」と言う雨の姿に、すべてを悟った太陽。しかし、雨は「ギリギリセーフだったよ」と笑った。太陽は嗚咽が止まらなかったが、雨に「どうして?」と問い掛けられ、「うれしくて」と本心とは裏腹な返事を。
そんな太陽に、雨は花火を見る事ができなかったけれど、自分に誓っていた「人生一番の笑顔」で、「ありがとう」と伝えた。
第2話で描かれた、五感で最初に味覚を失うことになったときも、パティシエだった雨の「人生最後の最高傑作」として太陽にプレゼントしたマカロンを一緒に味わうことができなかった。それから嗅覚、触覚を失い、そして今回の視覚のタイミングでまた悲劇が。それだけに雨のせいいっぱいの笑顔が悲しみを増した。
次回、3月18日(月)の放送が最終回。予告では案内人・日下(斎藤工)の声で「奇跡はまだ終わっていません」という言葉があるが、その“奇跡”が雨と太陽を幸せに導いてくれるものであってほしいと願わずにはいられない。
◆文=ザテレビジョンドラマ部